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(Revenge of the)United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

君には宇宙船がある

Japanese Music

ムーンライダーズのかしぶち哲郎が逝去(ナタリー)

 

 このブログでは、まだ訃報でしか日本の音楽の記事を書いていないのが残念だし、自らの浅はかさを物語っているようでもありますが、どうしてもこのニュースは無視出来ないので書きます。

 ムーンライダーズのドラマー、かしぶち哲郎氏が亡くなりました。

 ライダーズ活動中から入院される事が何度かあり、活動休止にかしぶち氏の体調も一因なのではないかと一部で囁かれていましたが、私には詳しい事はわかりません。

 

 幾多のサントラ(『釣りバカ日誌』や『ガンダム0083』など)やプロデュースワークも含め、ヨーロッパ的ロマンティシズムの塊のような人。ライダーズ随一のハンサムな見た目通りの(NHKの番組で、桃井かおりにも「昔からモテるでしょ?」と言われてたなぁ…)ダンディな世界観は、唯一無二のものでした。ドラマー募集のオーディションにギターを抱えてやって来て弾き語りを披露した、というエピソードが氏の風変わりでありながらも洒落たセンスを物語っているようでもあります。

 氏のそういった感性や、博文氏のハードボイルド&クールな詞世界が、ライダーズの洗練や洒脱、少し悪い言い方をすればスノビッシュさをも象徴していると個人的に思っています。後の渋谷系アーティストからライダーズが目の敵にされたのは、慶一氏の毒をはらんだ言動よりもこういった点ではないでしょうか。

 

 ライダーズ30周年のレココレ増刊で「(音楽で)映画みたいな事ばかりやってる」「一番影響を受けてるのはビートルズ。でもあまりにも濃い体験だから、簡単に自分の音楽には反映出来ない」(どちらも大意)といった趣旨の発言をされていた事が強く印象に残っています。

 

 自分はライダーズのライブを最後まで生で観る事は出来ませんでした。実は一度だけチャンスがあったのですが、ライダーズはいつまでも続くものだと思って他のバンドを優先してしまったのです。

 ライダーズは人の生死に関する詞が多く、当人達が歌うからこそ強烈な自虐になってこちらも楽しめる楽曲が多いのですが、それを私が軽々しく引用するのは憚られます。

 自分よりも年齢が上のミュージシャンを愛してしまった以上、こうやって別れがあるのは避けられない事なのでしょう。自分自身がどんどん年を取っているように、彼らもまた年齢を重ねているのですから。

 ですが、やはり思い入れのある人物がいなくなるのはショックです。今年の誕生日に馬論からライダーズのDVDをもらったばかりで、個人的にはまたライダーズ関連の収集を再開しようと思っていたところだったので、余計に衝撃が大きかった。

 昔書いたライダーズの記事を読んだら、かしぶち氏の紹介の所に「こんな大人になりたい」と書いてありました。その気持ちは変わっていません。

 

 今回は、私が特に好きなかしぶち氏の作品を10曲挙げ、追悼と代えさせて頂きます。

 以下、続きから。

 

 

ムーンライダーズ(紙ジャケット仕様)

ムーンライダーズ(紙ジャケット仕様)

 

砂丘

from the Album 『Moonriders

 アルバムラストを飾る曲。女性コーラス隊との掛け合いで自ら歌い上げます。ドラムレスでシンプルなバック、岡田氏のピアノとくじら(武川)氏のバイオリンが冴えまくる。

 「僕はいつも夢を胸にいだいて疲れている」という一節が突き刺さる。こういう歌詞があるから最高なんですよね、このバンドは。

 

イスタンブール・マンボ(紙ジャケット仕様)

イスタンブール・マンボ(紙ジャケット仕様)

 

 ハバロフスクを訪ねて

from the Album 『Istanbul Mambo』

 ワールドミュージック的アプローチで混沌とした名盤の、これまたラストを飾る一曲。偽ロシア民謡風メロディが最高。歌うはくじら氏。男らしく苦味のある歌が完璧にはまっています。シンセベースが異様だけと曲に合っていて、白井氏のギターもスプートニクスのような音で物悲しい酷寒の地を表現。

 このアルバムでは、本人作曲ではないので外しましたが、かしぶち氏がトルコ民謡に詞を付けた「ウスクダラ」も非常に重要な一曲です。ここからタイトルチューン「イスタンブール・マンボ」に繋がる流れはニセモノ感覚がクールで最高。

 

MANIA MANIERA

MANIA MANIERA

 

  スカーレットの誓い

from the Album 『Mania Maniera』

 異形の名盤から、かしぶち楽曲では絶対に外せない一曲。ライブでは必ずシングアロングになる盛り上げチューン。花と色の名前を多用した歌詞がオシャレで、ライダーズを象徴するような言葉「薔薇がなくちゃ生きていけない」はこの曲が発祥。

 近年のライブでは、ドラムを叩きながら本人が歌う事が多かったように思います。「百億の色で描く青春のエムブレーム」…なんて素敵な歌詞だろう。この歳になると、ここの箇所でいつも涙が出そうになります。

 

ANIMAL INDEX / HQCD ムーンライダーズ

ANIMAL INDEX / HQCD ムーンライダーズ

 

 Frou Frou

from the Album 『Animal Index』

 派手なトランペットとシンセに導かれて始まるポップな曲。慶一氏のしゃっくり唱法も快調な一曲。『アニマル・インデックス』は二枚目に買ったライダーズ作品だったので、そういう意味でも思い出深い一曲です。最初に気に入ったのがこの曲でした。

 

 

DON’T TRUST OVER THIRTY / HQCD ムーンライダーズ

DON’T TRUST OVER THIRTY / HQCD ムーンライダーズ

 

  CLINIKA

from the Album 『Don't Trust Over Thirty』

 これまたド派手なシンセ・オーケストレーションが炸裂する一曲。なんとライダーズには珍しいインスト。確かこのタイトルも、かしぶち氏が入院中に思い付いたという事だったはず…。

 実は、最初に買ったライダーズのアルバムがこの作品でした。つまり、生まれて初めて聴いたライダーズ・ナンバーはオープニング・チューンであるこのかしぶち作品という事になります。そういう意味で外せない一曲。

 

ダイア・モロンズ・トリビューン(SHM-CD)

ダイア・モロンズ・トリビューン(SHM-CD)

 

Curve

from the Album 『Dire morons TRIBUNE』

 わしゃわしゃ鳴る打ち込みリズムと流れるようなガットギター、トランペットが心地良い。自ら執るダブルトラックでのヴォーカルの低音が良い味を出している、とてもオシャレな曲。だけど絶望的な歌詞。こういうのがライダーズらしい。

 

ムーン・オーヴァー・ザ・ローズバッド

ムーン・オーヴァー・ザ・ローズバッド

 

 Dance Away

from the Album 『MOON OVER the ROSEBUD』

 私が一番好きなアルバム『ムーン・オーバー・ザ・ローズバッド』から。軽やかでヨーロピアンな香りが濃厚なポップ・チューン。女性コーラスが最高に効いている。マンドリンアコーディオンがトラッド・ミュージックの香りも感じさせる。とにかく最高の一曲という事です。

 評論家先生がこのアルバムにどのような評価を下しているかは知りませんが、自分はライダーズのニューウェーブ時代を後追いでしか知らないので、常に時代を先導してほしいなどとは思っていません。自分の中では、好みに非常に合う良い曲を創ってくれるバンドでしかないので、それ以上の事は求めていません。あしからず。

 

Serenade and Serabande

from the Album 『MOON OVER the ROSEBUD』

 これまた30周年アルバムからのナンバー。「Dance Away」同様、慶一・かしぶち両氏のデュエットがオッサンの悲哀を感じさせ素晴らしい。船乗りのドラマを描いた歌詞はストーリーになっていて、その流れに沿ってサウンドも変化してきます。バンド名が出てきた辺りから怪しくなる雲行き。白井氏のギターが嘶き、激しい展開を迎えてまた軽快なピアノに戻る箇所が最高に能天気でスリリング。

 この2曲に限らず、このアルバムは全曲最高で聴きやすく、そしてあくまでバンドの音としてガッチリまとまっているのでオススメです。 

 

Tokyo7

Tokyo7

 

タブラ・ラサ ~ When rock was Young

from the Album 『Tokyo 7』

 XTCを髣髴とさせる、複雑に捩れたギターリフがいきなり格好良い、これもオープニング・ナンバー。このアルバムの評価は、もうこの1曲で決まったようなものでした。そう考えると、かしぶち楽曲はオープニングでリスナーの心を掴むという重要な役割を担うことが多かったようですね。

 

Ciao!

Ciao!

 

Pain Rain

from the Album 『Ciao!』

 現在の所のラストアルバムから。エフェクト加工されたかしぶち氏本人の歌声が渋い、 美しく切ないバラード。メロディに香るアジアっぽい大らかさを、大正琴や月琴で強調している。

 活動休止直前の作品、そして3.11の影響も色濃い内容という事もあって、発売当時は冷静に聴けなかったアルバム。実際にメンバーそれぞれがヴォーカルを執る事が多く、全体的に音も重いんだけど、改めて聴いてみるとやはり良い作品だと実感しました。

 

 

 かしぶち哲郎氏のご冥福をお祈りいたします。