ふもとの女たち
かつてスピサンの活動が創作意欲だけでなく、技術的な面でも高まり始めた頃、パートナーであった馬論が2枚(というか2セット)のコンピレーションを購入しました。 恐らく、彼はもう手放してしまったでしょうが…。
- アーティスト: オムニバス,細野晴臣,高橋幸宏,南佳孝,マナ,近田春夫,シーナ&ザ・ロケッツ,金井夕子,坂本龍一
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/02/23
- メディア: CD
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- アーティスト: オムニバス,真鍋ちえみ,つちやかおり,ジャンケンポー,大野方栄,高見知佳,TPO,太田裕美,後藤次利,香坂みゆき,アパッチ
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/02/23
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YMOの2003年再発の際にも大活躍だった田中雄二(ウーチャカは「裕二」。念の為)氏が監修・選曲を行ったコンピレーション盤。テーマは「テクノポップな歌謡曲」。それをYMOの3人が関わったもの、そうでないものに分けています。
YMOのブレイク以降、日本のポピュラー音楽をも侵食し始めたテクノポップやニューウェーヴの流れの激しさを伝えるドキュメント。とにかく80年代の日本のムードとシンクロするような、わけのわからぬ勢いがあり、アンダーグラウンドだったカルチャーが表舞台で認知度を得ていく面白さを僅かながらでも感じられます。
「全然テクノじゃない曲が入ってる」という感想も、Amazonだけでなく他の場所でも見かけましたが、方法論だけではなくマインドが「テクノポップ」ならば選曲基準から反れていないと思うので、どちらも素晴らしい仕事が詰まった好選曲だと思っています。買わなかった私も馬論と共にこの2枚に熱狂し、大いに楽しんだのですが、特に気に入った曲がありました。
それが、ムーンライダーズ岡田徹氏の作曲・アレンジ・プロデュース作品である、チロリン「途中にしてね」。ダルシマー(?)によって奏でられる印象的なイントロ、ツボを心得た12弦ギター(弾いているのは白井良明氏?)、曖昧だけど情景が浮かぶ歌詞。何より、全体的に牧歌的で不思議な空気を漂わせるアレンジに、朴訥で少し拙いヴォーカルが浮遊感を醸し出して絶妙にマッチしており、そこが何よりの魅力でした。
「プロのヴォーカリストは、常に完璧なピッチと声量で寸分の狂いも無くメロディを歌い上げなければならない!」という考えで音楽を聴いている人には全く向かない曲ではありますが、安田成美「風の谷のナウシカ」のヴォーカル・プロダクションを評価している私のような人間からすれば、こういう歌声が嫌いなわけがありません。さすが、ムーンライダーズのポップ職人!と快哉を叫びたくなるようなナンバー。
ならばと早速彼女達の音源を入手しようと行動に出たのですが、当時いくら「チロリン」の名を検索しても、ベーシストの方しかヒットしません。2006年のムーンライダーズ30周年記念の際の関連作品リイシューでも取り残される始末。きっと何らかのアルバムを出していただろうに廃盤になってしまい、権利関係の問題で再発されないのだろう…と判断する他ありませんでした。
それから数年後、何やら新たな動きが。
80年代に岡田徹がプロデュースしたユニットであるチロリンが、メンバーを一新しアルバムをリリースしていた模様。渋谷ディスクユニオン店頭にて知ったので早速PVを見てみたが、何だか普通のピコピコアイドルポップになっちゃったな… http://t.co/98XO2WEp
— ミカ・ラウド (@MicaLaud) 2013, 1月 31
なんと四半世紀近くの時間を経て、メンバーを全員入れ替え“新・チロリン”としてこの21世紀の世に復活したのです。勿論、岡田氏の全面プロデュース。
しかし既にツイートで書いておりますが、個人的にはあまり心動かされない仕上がりでした。アレンジは原曲を踏襲していますが、元バージョンに漂っていた微妙な空気感と旨みが削がれてしまったような…勿論、彼女達に罪はなく、一般的なイメージから言えばこちらの方が「テクノポップ」に近いかもしれませんが、個人的にはちょっと首を捻ってしまいます。むしろ、彼女達のオリジナル新曲を聴いて評価したいところ。
ひとまず「途中にしてね」は彼女達のニューバージョンでしか聴けないわけで、買おうかどうか一年以上迷っていました。
そんな中で、意外なニュースが飛び込んできたのはつい先日の事。
レジェンダリー・ガールズ・ユニット“チロリン”のコンプリート・コレクションが登場 - CDJournal ニュース http://t.co/okSKYiO4RA
— ミカ・ラウド (@MicaLaud) 2014, 11月 8
ようやく本家が再発。最初に『テクノマジック歌謡曲』で聴いてから約10年、ここまで長かった。
— ミカ・ラウド (@MicaLaud) 2014, 11月 8
なんと、本家チロリンの音源の再発が決定という、まさかの展開。ライダーズの官能色男ドラマー、かしぶち氏が亡くなって一年。彼のトリビュートライブ、トリビュートアルバムが企画されているようですが、この一連の流れと関係があるのでしょう。
Amazonで商品説明を見て、ここまでなかなか再発されなかったのも納得。
本作は1986年と1987にリリースされたミニアルバム2タイトルに7"シングル曲2曲を収録、彼女たちの残した全音源を収録したコンプリート・コレクション。 英国の全寮制女子高、映画『ピクニック アット ハンギングロック』、チロリアンなどをキーワードにしたコンセプトにしたキュートでどこか切ないサウンドはライダーズファンはもちろん、テクノ歌謡ファン、80sアイドル・ファンも大好きな伝説のユニット。
過去にミニアルバム2作品は1989年にCD化(現在廃盤)されたが、7"シングルは未収録、なかでも「えくぼッチャブル」は今回が初CD化。ジャケットもオリジナルの12インチ2作品をリバーシブルでデザイン。まさにファン待望のCD化です。
何と、彼女達はフルアルバムをリリースしていなかったのです。ミニアルバムもどうやら12インチだったそうですし、実質シングル・アーティストだったという事。リイシューしようにも新たに編集盤を作らなくてはならないわけで、それは発表も遅れようというもの。
年末はリリース続きで、正直に言えば全てをフォローする事は諦めていますが、このアルバムだけは確実にキープする予定。機を逃せば、恐らくは早い時期に生産中止になってしまうでしょう。
もし買い逃したりしたら、どこからか「買えなかった?縁が無かったんだよ!」とぶっきらぼうに言う声が聞こえてきそうです。もっとも、この声の主の初キャリア総括ベストも同時期に出るので、困り果てているのですが。