(Revenge of the)United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

一週間に八日来い

 既に結構時間が経ってますが、観て来ましたよ。

thebeatles-eightdaysaweek.jp

 

 船橋ららぽーとで1回、渋谷Bunkamura(アンコール放映)で1回、と計2回観てます。それぞれに若者から女子、中高年男性、はたまた海外の方と様々な客層が来場していて(ジョージの『Living in the Material World』の時と同様に)、そういった人々と一緒に観ているという事実だけでもなかなか楽しい出来事でした。

 

 狂騒のツアーリング・イヤーズ。基本的には多くのビートルマニアなら知っている事実を検証してくという流れですが、当然ながら新たな映像、そして『Anthology』などと違ってビートル関係者以外の証言も挟む事で、当時の社会背景や少年少女達が抱いていた想い、そしていかにThe Beatlesが時代に果敢に切り込んでいったか。そして世界を動かそうとしたか。若々しいFab4の雄姿と相まって、60年代前半から中盤を活き活きとしたタッチで切り取っているというのが一番の感想です。

 シガニー・ウィーバーの乙女な発言、ウーピー・ゴールドバーグの変わりつつある時代に対する高揚感、エルヴィス・コステロのリアルな音楽ファンとしての率直な言葉の数々。実に効果的な挟み方だったと思います。

 

 映画そのものの内容も勿論見所だらけですが、今回の最大の意義は「The Beatlesのライヴバンドとしての魅力」をありのままに引き出した点でしょう。ハードなハンブルク時代を乗り越えたが故の演奏能力、今まで言葉では語られていましたが、それはこの映画で誰もが実感できるのではないでしょうか。当時のステージ上の劣悪な音響に対するリンゴの新たな発言も、彼らの実力を裏付ける一因となっています。

 そして最新技術でリストアされ、美しくなった映像。リマスターやリミックスで観客のジェットノイズに埋もれない鮮明な音。冒頭の「She Loves You」の美麗な映像と音、あのビートルズ・ライヴ疑似体験っぷりは凄かったです。あれは映画館のスクリーンと音響で観たからこそでしょう。個人的に、60年代にタイムスリップした…という感慨でなく、「Fab4があの当時の姿で2016年にやってきて、グラストンベリーなりサマーソニックなりで演奏したらこんな感じなのではないか」という感慨を持って観ていました。本当に、ここのシーンだけでも映画館で観るべき。

 

 殆ど休みなくツアーで世界各国をめぐり、僅かな時間でレコーディングをする。そのタフさもしっかり取り上げられていました。そしてひとつの到達点となるシェイ・スタジアムでの歴史的公演。そこから徐々に不穏な空気が流れ始め、彼らを取り巻く状況が狂気を孕んでいく。この辺の逸話は、わざわざここに書くまでも無いでしょう。しかし、最終公演だったキャンドル・スティック・パークでのライヴ終了後のエピソードは初めて聞いた話で、それはジョンやジョージが怒るのも無理はないだろう…という酷い扱い。

 殆どのビートルマニアは、いわゆる“ツアーリング・イヤーズ”がどのようにして終焉したかを知っており、ハッピーエンドにならない事は重々承知しているはず。だが、ツアー終了後に口髭をたくわえて現れた4人の姿に、新たなストーリーの始まりを感じる人も多いでしょう。ルーフトップ・セッションで終わる点も含め、4人が疲れ果てたまま映画が終わらなかったのはとても良い点だったと思います。

 結果として、我々はFab4がそれぞれの個性をThe Beatlesの枠に収め切れず、喧嘩別れのような形で解散した事を知っている。それでも、過酷なツアーの日々を乗り切る事が出来たのは、4人の固い結束、そして何よりも学生時代からの仲の良い友人だったという事実が何よりも大きかった。それを改めて実感。

 

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 個人的には、ライヴの音の迫力。この映画はそれに尽きます。これは映画館で観たからこその感想でしょう。ちなみに、本編終了後にこれまた最新リマスターのシェイ・スタジアム公演記録映像を観る事も出来るので、出来る限り億劫がらずに映画館で観るべきだと思われます。一応、この映像は映画館のみの上映という事なので…DVD/BD特典映像なり、他の機会でのリリースなりでソフト化されそうなので、あんまり私はこの言葉を信用していませんが。

 

 今回初めて観た映像の中で一番感動したのは、アンフィールドでKopのリヴァプール・サポーター達が「She Loves You」を大合唱するシーン。その凄まじい大音響に痺れました。当たり前ですが、この時代の客席は男しかいませんね。しかし若き野郎共だけでなく、年配の男性も一緒になって歌っているのが印象的。やはり、地元が世界に誇るヒーローのヒット曲だからという事なのでしょうか。フットボール(この場合サッカーと書くより圧倒的にこっちの方が正しい)と音楽、その両方ともがリヴァプールを象徴するファクターであり、世界に誇るべきもの。そんなリヴァプールっ子達の想いが伝わってくるようです。

 リヴァプール・サポーターというと、Gerry & The Pacemakers「You'll Never Walk Alone」を選手入場時に歌う事が定番になっていますが、またThe Beatlesの曲も歌ってほしいもの。

 今まで“ビートルズ”と“スポーツ”の関係性というものが殆ど我が国では語られた事がなく、たまに言及されるのも「ジョージのF1愛」「ポールがエヴァートン・サポーターのトランペットを吹く男に魅了された」「『Walls and Bridges』のジャケで幼少時のジョンが描いたサッカー選手」程度のものでしたが、フットボールというものが我が国でも徐々に市民権を得始めている昨今、このKopのシーンも年配ビートルマニアにとっても少しはリアリティを持って受け入れられるようになったのではないかと、勝手ながら思った次第。

 

 楽しい映画でした。映画館で観られて良かったです。