(Revenge of the)United Minds

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Can't Touch Them Now Madness EX Theater Roppongi Vol.1

 何の前触れもなく、突如決まった感のある今回のMadness来日。名目は昨年発表した新作『Can't Touch Us Now』の世界ツアーの一環という事らしい。
 とはいえ、前回の来日のように、ヒットパレード的選曲の日本のファンに配慮したものとなるのだろう。少なくとも私はそんな生温い事を考えていた。

 

 前回の公演時、「オリジナルメンバーでの来日」を謳っていたにも関わらず、サックスのLee "Kix" ThompsonとギターのChris "Chrissy Boy" Foremanはラインナップには加わっていなかった。サポートメンバーはナイスアクトを果たしたものの、中心人物である2人を欠いては看板に偽り有りの告知であったのだ。
 今回はフロントメンの片方であるChas Smashが脱退したという事もあり、メンバーを1人欠いての6人という布陣。
 私のお気に入りメンバーであり、前回は私の目を見ながら叫んだり、冷たい水を浴びせてくれたりと印象的な思い出のある彼がいないのは残念だが、ようやくLeeとChrisをこの目で拝めるというわけだ。

 だが、夏の盛りに行われた2006年と違い、今回は新年度初めの月曜という挑戦的な公演日設定がされており、形振り構わず行ってやる!とまでは言い切れない状態であった。ただでさえ私にとって春は鬼門であり、心身及び公私に落ち着かない季節である事はこのブログでも繰り返し書いている通り。
 よって、チケットを購入したのもかなり遅い時期であり、発券後もかなり不鮮明なスケジュールの中で当日を迎えた。本当に自分はあのMadnessの来日公演に行くのだろうか?悪い意味で現実感がないまま、心の準備も出来ず六本木へと向かったのである。

 

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 当日は六本木駅の出口階段を上がり、最初の交差点まで歩いたあたりで重い雲から落ちてくるものが。EXシアターに着く頃には本降りとなり、2階のテラスでの整理番号呼び出し時は激しい雷と強風を伴った豪雨と変わった。

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 下手な表現だが、まさに嵐を呼ぶ男達Madnessという事か。運営スタッフが整列を呼びかけるが、この状態で風雨に打たれる物好きはいない。老若男女、そして国籍を問わず狭い屋根の下に身を寄せあい、入場を待つのみであった。

 この日はライブハウス内でのトラブルに備え、コートやジャケットの類を控えて軽装で臨んでいた。はしゃいだ英国人のビール浴びせや、メンバーからの全身ミネラルウォーター振る舞い等といった前回の教訓を活かしたものである。だがそれは、30分近く雨に打たれた私の体温をキープしてくれる装備ではなく、一刻でも早くライブが始まってくれないと風邪を引いてしまいそうな状況だ。

 

 遅れて到着した我が“スカ伝道師”である友人Fと合流し、彼がビールを飲み終えるのを待ってゆっくりと入場。当然ながら前回よりも後ろの位置だが、中央右寄りでしっかりとステージは見渡せる場所で悪くない。フロントラインでの攻防の激しさは前回のライヴで十分味わっているし、スピーカー近くで突発性難聴になるのも困るので、個人的にはこれくらいの位置がベストであった。
 会場内をセレクターが60~80年代の名曲(The Who,The Beat, etc...)でじっくり暖めたところで、カラフルな照明と共に電子音、そしてボコーダーでのアナウンスが流れ出す(YMOを思い出した)。会場に来てもいまいちエンジンのかからなかった私の心は、ここにきてようやく臨戦態勢へ。そして、パーカッションとホーン隊(トランペット、トロンボーンバリトンサックス)を従え、伝説の男達6人が遂にステージに登場する。

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 オープニングの音が流れる中、友人Fの「最初の曲はなんだろうな。予想しないか?」という問いに「チャス抜きでもここは『One Step Beyond』じゃないか?」と答えた私だったが、我々の予想を覆すナンバーでギグは始まった。何と、最初の1曲は新作『Can't Touch Us Now』のタイトルチューンであった。
 それは、Madnessからの強烈なメッセージであった。「俺たちは、今この時を活動するバンドだぜ」…少なくとも、私はそう受け取った。
 最新曲を、自信満々に歌い上げるフロントマンSuggsの姿。その姿は非常に頼もしく、ファンとしては心強いものであった。彼らは、今でも懐メロバンドにならず、この時代を生きているのだと。

 

 勿論、往年のヒットチューンを期待して集まったファンを裏切るような事は決してしない。最新アルバムからの曲と、過去の曲をほぼ交互に配置。ヒット曲でフロアを盛り上げ、渋いブリティッシュポップ・アルバムとなった『Can't Touch Us Now』からの曲でじっくり聴かせる。
 そんな中で私の大好きな近年曲であるドラマティックな「NW5」や、再結成前最後の作品からのシングル「Yesterday's Men」など、(友人Fの言葉を借用すれば)変化球が見事に決まる。緩急自在、彼らの過去と現在を織り交ぜながら、様々な時代を乗り越えて活動し続けるMadnessの歴史を惜しげもなく日本のファンに見せてくれる。

 

 あの2006年の夏、ライヴの期待以上の出来に熱狂しながらも、どこか寂しさを感じていたのも事実だった。
 再結成後の曲は僅か3曲のみのセットリスト。ラストに日本のみでヒットしたCMソング「In the City」まで披露する大サービスぶりに心から楽しませてもらったものの、ライヴはヒットパレードのみで最早現役バンドではないのか…と、どこか心に引っかかるものもあったのだ。
 事実、あの日のオーディエンスも、『Wonderful』や『The Dangermen Sessions Vol.1』からの曲は望んでいない、少なくとも私はそう感じた。

 しかし今回のライブは、誰が何と言おうと新譜『Can't Touch Us Now』を引っ提げての世界ツアーであった。新境地を開いたような曲(「You are My Everything」)も生で聴く事が出来、更に「Embarrassment」や「The Sun and the Rain」「My Girl」のような名曲もシンガロング出来る。これは非常に贅沢な体験だ。
 過去の名曲だけを彼らは演奏しにきたのではない。あくまでニューアルバムありきのツアーを行っているのだ。ある意味で、80年代にアルバムツアーを行っていた頃の彼らのライヴを、2017年の現在に体験出来ているという解釈すら可能ではないだろうか。


 その上、今回のライヴはハッピーでフレンドリーなムードが漂っていた。

 あのShibuya AXの時のように、初対面の人間にビールを浴びせたり、立場を弁えずステージに何度も乱入したり、女性を押し退けて最前線へ急いだり、セキュリティスタッフに必死に取り押さえられるような狼藉を働く人間はいない。

blog.goo.ne.jp

 ライヴ中に酒を買いに行く事も出来る気安さで、Madnessの本気の演奏を楽しむ事が出来る。
 今までパフォーマンス面で大きな役割を担っていた男が抜けた分、Suggs, Lee, Chrisの3トップがサービス精神をフルに発揮して頑張っていた。特にLeeはステージ狭しと動き周り、奔放にサックスをブロウする。その姿を見て盛り上がらない観客はいないだろう。

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 ステージの出来を比べる事にあまり意味はないのかもしれないが、ライヴの意義や彼らが取り組む姿勢、加えて会場の雰囲気、どちらも私は今回のステージに軍配を上げたい。非常に満足したし、納得もいった充実のギグだった。

 

 私がオープニングに予想した「One Step Beyond」は、終盤に披露された。Chasが担当していた前口上を、Chrisとオーディエンスとのコールアンドレスポンスで代用するというまさかの展開。Leeのリード・サックスだけでなく、サポートのホーンの人にもソロを用意するアレンジで、若い頃の攻撃的なスカパンクよりもオーセンティックなスカに近付いた感があった。
 この曲に至る前、Chrisは日本人の物真似を披露。これも前回のChasと一緒だが、「イキマショー!」を連発し、それを会場に連呼させるのは何やら可愛らしかった。他にも、訃報が入ったばかりのChuck Berryリスペクトで、何度もお決まりのフレーズ(「Johnny B. Goode」のイントロのあれです)を弾いたり、ダックウォークをSuggsにやらされたりしていた。

 

 友人Fのツイート通り、この公演はスカとロックンロールの偉大な先人へのトリビュートの意味も含まれていたのは確実だ。「The Prince」演奏前のMCで、拙すぎる英語力ながらSuggsの言わんとしている事は理解した。


 アンコールも最初の曲は新作のリード・シングル「Mr.Apples」。この徹底した明確な姿勢に感心しながら、さらっと聞き流してしまった感のある『Can't Touch Us Now』をもう一度じっくり検証すべきだ、私はそう考えていた。
 やはり生で聴くのとは印象が違うし、楽曲の持つ本当の力を実感する。これも、新作ツアーを行ってくれたからこそ気付いた事である。
 最後は大熱狂の「Night Boat to Cairo」で〆。Monty Pythonの「Always Look on the Bright Side of Life」(George Harrisonが製作総指揮した『Monty Python's Life of Brian』の主題歌)が流れる中、充実のライヴは幕を閉じた。

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 2006年と違い、今回はセットリストを全曲知っている状態での参加だった。これが、この11年での私の数少ない成長の跡だ。

 次回は覚えている限りのちょっとしたエピソード、ライヴアクト以外に感じた事などを簡単に触れておきたい。

 

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Madness EX Theater Roppongi

 

Can't Touch Us Now

Embarrassment

The Prince

NW5

My Girl

Herbert

Wings of a Dove

Good Times

Cardiac Arrest

Blackbird

The Sun and the Rain

Yesterday's Men

Mumbo Jumbo

Grey Day

Tomorrow's (Just Another Day)

You are My Everything

One Step Beyond

House of Fun

Baggy Trousers

Our House

It Must Be Love

 

enc.

Mr. Apples

Madness

Night Boat to Cairo