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Dear P.Wilson ~Road to "The Good-Bye"~ Vol.1

 The Good-Bye30年ぶりの新作発表、及び昨年から続く35周年アニバーサリーに伴うライヴ開催。以前から何とかライヴを生で観たいと思ってはいたものの、今回もそれは叶わず。

 ならばと、これまたツイート検索で知ったこれに行こうと決意。スケジュールを精査する事なく、半ば衝動的に予約を入れてしまった。少しでもこの記念すべき時に何かイベントに加わりたかったし、The Good-Byeのブレーンでありながらナイアガラにも深く関わった超重要人物、川原伸司氏の話を目の前で聞きたいと思ったのだ。

 

 

目次 

 

開演前

 私の整理番号は早めの番号ながら、店内は満席。狭い空間で人混みを掻き分けながら移動せざるを得ず、以前の『ビートルズ大学』で行ったネイキッドロフトとの勝手の違いに戸惑いつつもDJブース近くに陣取った。

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 観客の殆どは、リアルタイム活動時から追いかけているであろう女性ばかり。男性は私含め片手で数える程であったが、2階席には明らかにサラリーマンではなさそうな見た目の男達が向かっていた。
 開場待ちの時から、長い白髪と髭の男性が近くに立っており、確証はないので一切声はかけなかったが…翌日、ツイッターにて私の予想は間違っていなかった事が判明する。これに関しては後程。

 会場正面に据えられたスクリーンには、当初は最新作『Special ThanX』の初回盤特典DVDが映し出されていたが、20分弱で終わるこの映像作品。次に流れ出したのは、あのLive Aidであった。お馴染みトップを飾る英国近衛軍楽隊の「God Save the Queen」、そしていきなり観客を興奮の渦へと巻き込むStatus Quoのロックンロール2曲が流される。
「ありがとう グッバイ!」
 退場するバンドの台詞が、今イベントの主題への謝辞のように見える粋な演出。ここで川原氏が登場し、トークがスタートする。
 Status Quoを流したのは、この字幕を見せるためだけではない、という川原氏。ギター2人・ベース1人・ドラム1人のバンドという事で言うまでもなくThe Beatlesの影響下からは逃れられないが、サウンドが60年代のままでは時代にそぐわない。そういった理由から、ギター中心にThe Good-ByeのサウンドはStauts Quoを参考に作っていった、といきなりレアな情報を披露。

 勿論私は初めて聞いたし、再発時のライナーや雑誌記事でも触れられていた記憶はない。開始直後から飛び出した歴史の真相に、早くもこのイベントの成功を予感した。

 

 Dawn of The Good-Bye

 まずは最新アルバム制作のきっかけ、そして結成に至る秘話など。時計の針を戻したり、進めたりしながらのトーク大瀧詠一松本隆筒美京平といった当たり前のように出てくる日本音楽史上の重要人物の名、そして彼らに対して一切気後れしている様子もない川原氏の話しぶりに、改めて氏がこなしてきた仕事の重さを実感する。既にインタビュー等で読んでいた話もあったが、目の前で本人の口から聞かせてもらえるのだから最高だ。

 将来の進路を問うた川原氏に対し、アイドルやタレントではなく、この先もミュージシャンでありたいと迷いなく答えた4人。ならば、自分は彼らをそう育てたい。プロデューサーとして、川原氏はそう決意した。
 事実、The Good-Bye活動終了後もメンバーはミュージシャンとして生活し、野村・曾我両氏は古巣の芸能事務所にも大いに貢献している。バンドのセールス面では確かに特筆すべき成果は残せなかったかもしれないが、4人の替えの利かないミュージシャンを生み出したという意味では大成功だった。
 そう語る川原氏の誇らしげな表情に、まだあどけなかったデビュー当時のメンバーの顔がよぎり、後追い世代ながらも胸に迫るものがあった。

 とにかく自分達で創ったオリジナル曲でデビューしたい。そんな決意の元作曲された「赤いポルシェ(後の「Take Off」)」。そして提供曲に頼らずヒットを送り出したいと意気込んだ「You惑‐May惑」。ターニングポイントとして挙げられた2曲の“ネイキッド”なデモテープが流される。勿論、本邦初公開の貴重音源。粗削りなヴォーカルやラフな音像に、言い知れぬ熱情が胎動している事を感じ取れた。確実に何かが動き始めている、そんなうれしい予感。
 特に朝4時半に川原氏の自宅で曾我氏と顔を突き合わせて録ったという「You惑‐May惑」のデモ、既にアレンジは完成形に近く、素直に感心してしまった。川原氏という“ジョージ・マーティン”がいたとはいえ、20歳そこそこでこれだけの曲を作ってしまうという才能、改めて只者ではない。

 

“Special ThanX”

 話はデビュー当時から、新作へと飛ぶ。河原氏はプロデュースにあたり、作曲者の2人にはソロの手癖が出てしまうものではない、あくまで“The Good-Byeの楽曲である事”を厳しく要求した。30年ぶりのバンドのアルバム、平凡な出来では出す意味がないと。
 それと同時に、自身がバンドをプロデュースするのも、そしてThe Good-Byeが作品リリースをするのも、これが最後のつもりだったらしい。アルバムのオープニングチューンも、最初のタイトルは「旅の終わり」というものだった。
 だが、復活作の始まりがそのような後ろ向きなタイトルなのは如何なものか。メンバーは強くこの提案を拒否。そして、「Never Ending Story」というファンの気持ちを駆り立てるものへと変更された。この時点ではネガティヴなイメージを抱かせないための目的でしかなかったようだが、先日のライヴでメンバーは活動の継続を力強く宣言したそうである。
「ここまで30年かかったけど、次があるかどうかわからないのでこの作品で20年くらいは楽しんで」
 あくまで“次”を明言する事は避けた川原氏。それはアルバムの制作が開始してからリリースまで6年が経過した事からも、一筋縄ではいかない事情があった事を示している。
 楽曲制作というクリエイティヴな部分だけではない。上手くはぐらかしてトーク内容を軽妙なものにしているものの、The Good-Byeが世に出たバックボーンを考えれば、彼らがその名を掲げて世に出るだけでもクリアしなければならない問題が様々に発生する。「ファンのために」、そんなイノセントな想いだけでメジャーレーベルでCDを出せるほど簡単に物事は運ばないだろう。
 川原氏は自分の功績を声高に語ったりしないし、必要以上の自画自賛などとは無縁な粋人だ。しかし、そういった各所への根回しや諸問題の解決は氏が大きく尽力しているのは確実である。ファンが彼に感謝しなくてはならないのは、音楽面においてだけではない。

 The Beatlesから『インディ・ジョーンズ』『スターウォーズ』まで。脱線のように思えて必然でもあるトークの中で、持参した新作のアウトテイクやデモを河原氏が聴かせてくれるという嬉しい流れになった。リクエストを募るものの、客席は遠慮しあっているのか暫く無言の状態が続く。
 ならばと、リアルタイムファンのお姉様方に少々遠慮していた私が、手を挙げる事にした。
「『Blue』をお願いします」
 すると川原氏は私を見て、こう反応してくれた。
「それは今日持ってきてないんだ。ハチのデモテープはメロディだけでよくわからなかったんだけど、義男が『これは八郎っぽくていい曲だ』と詞を付けていった」
 全くこちらから目を逸らさず、細かく解説をしてくれる川原氏。
「義男が詞を付けていくと、どんどん“加賀八郎の曲”って感じになってきた。あれは凄く創っていく中で感動したなぁ。単なる追悼って事じゃなく、八郎がイキイキと今ここにいるような感じになった」
 加賀氏のデモからどんな感じで構築していったのかを聴きたかった、と言った私に、制作秘話を次々に明かしてくれる川原氏。デモを聴けなかったのは少し惜しい気もしたが、それ以上に一番聞きたかったプロデューサーの意見を明かしてもらえた。音を聴く以上に価値があったと思う。
 結局、会場からのリクエストで流したのは、野村氏制作の「あの日のまま」のデモ。イントロのスライドはほぼ完成版のままだが、Bメロからの展開は大きく違う。これは良い曲になると思った川原氏は、じっくり野村氏にディレクションしたらしい。ギターを持った2人が向き合っての楽曲制作、それは恐らく36年前と何ら変わらぬ光景であったのだろう。

 

 第2部 Talking about...

 トイレ休憩を挟み、観客それぞれがドリンクを頼み直して再開した第二部。だが、ここの内容は記す事が出来ない。誰かがいずれ文章にするかもしれないし、ツイッターやブログ等でもさりげなく触れておられる方も見かけたが、私は出来る限り言及を避けたい。

 このツイートで何となくでも重大性を察して頂ければと思う。こういった所がオフラインのイベントの醍醐味であり、例えばストリーミング等の媒体では成立し得なかったパートであった。
 もう少し感想を足すならば、私としては当初は求めていなかった話の方向性であった。私はあくまでミュージシャンとしてのThe Good-Byeのファンであり、それ以外の事象は資料的な価値しか見出ださない。
 だが、ここで明かされた川原氏の仕事ぶりや人脈は、そんな私ですら吃驚せざるを得ないものであった。その圧倒的な重厚さに、ただただ打ちのめされ、唸る以外の選択肢が残されていなかった。会場を埋め尽くした歴戦のThe Good-Byeファンの方々からすれば、私など比較にならない程深く感じ入るものがあったはずである。
 その時代に自我を持って生き、追い続けてきた者でない私は、自分の知っている日本音楽史と必死に照らし合わせながら話を聞くしかなかった。今回のイベントタイトル川原伸司、The Good-Bye Soundのルーツを語る、And You...」は、この第二部のために用意されたものと言っても良い。一瞬「趣旨が違うのでは…」などと考えてしまった不届き者だが、決して看板に偽り無し。本当の意味でタイトルに則した事を語っていたのは、この第二部の方だったのかもしれない。

 

 

 書いても書いても終わる気配がないので、ひとまず今回はここまでとしたい。個人的にはイベントそのもの以上に、イベント後に起こった事がこの日のハイライトなので、まだ本当に書きたい事が書けておらず、不本意な中断である事はご留意願いたい。

 2015年にはてなブログに追加されたらしい“目次機能”を今頃初使用してみましたが、それだけ気合が入っているという事です。

 

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