Only a Harrisong
当ブログ開設(移転)当初に「廉価版CD」という私のオリジナル・ネーミングで紹介した、EMI・キャピトル・アップル以外のレーベルから発売されているアンオフィシャルなThe BeatlesのCDの数々。
この危うい立ち位置にあるディスクに関する思い出についてはリンクを参照して頂くとして、似たような商品がリマスター盤やデラック・エディションが発表されてる現在でも流通している事、そしてその中にジョージのヴォーカル曲だけをコンパイルした盤があるらしい事は、Twitterで何度か目にしていました。
The Beatles時代のジョージの曲だけを集めたアルバム。着眼点は良いですし、意外にありそうでなかった企画です。当然ながら既に音源は全て持っているわけですが、ファンとしては心を大いにくすぐられたのは事実。
目撃談の多くは大型ホームセンターか、大型量販店のどちらか。勿論、タワーレコードやHMVでは取り扱わないでしょう。値段を見る限り、高くても500円という投げ売り価格なので。
残念ながら、現住所近辺にそのような商業施設はありません。実家の周辺地域でも、自動車での移動が必須の場所のみ。なかなかそういった店に縁がなく、たまに訪れてもそれらしいものは一切見つかりませんでした。
このCDの存在を知ってからそれなりに時間が経っているように思いますが、少なくとも自分が足を運んだ店はどこも置いていませんでした。 pic.twitter.com/inwOtLwBmz
— ミカ・ラウド (@MicaLaud) 2020年3月17日
しかし今回思うところあり、通販にて件のCDを入手しました。ブログの記事にも使えるし、一石二鳥なのではないかと思ったのです。
以下、続きから。
収録曲はこの12曲。
初期の人気曲「I Need You」と、記念すべき処女作「Don't Bother Me」が選から漏れています。
「いやいや、『While My Guitar Gently Weeps』『Something』『Here Comes the Sun』がないのはおかしいだろう!」という指摘が当然入るのは想定内ですが、この手の廉価盤コンピレーションは『The Beatles(ホワイト・アルバム)』『Yellow Submarine』『Let it Be』『Abbey Road』収録曲は何故か避けられているのです。これは私の中学時代の同系統商品から変わらないのですが、The Beatlesが『ホワイト・アルバム』からアップルに移った事と関係あるのでしょうか?
Amazonのおすすめから知った情報によれば、この『ジョージ・ボーカル・ベスト』と同系列のコンピレーションは全部で9枚あるようです。
やはり、見事に『Magical Mystery Tour』までの曲しか収められていません(つまり『オール・ザ・ベスト』という看板に偽りあり)。とはいえ廉価盤CDでも単体で1969年以降のアルバムを販売しているメーカーは存在したので(現在は不明)、ディストリビューションする会社によって権利関係の扱い方が違うのでしょうか。
「I Need You」はディスク3『ラブソングス』に収録されているようです。同名のオフィシャルなコンピレーションがありましたよね? 叔父がこれのカセット版を所有していて、私が「Something」を聴いたのはこっちが先でした。
この時の思い出があまりに印象的で、「Something」を聴くとあの頃の風景がフラッシュバックします。
Something
— ミカ・ラウド (@MicaLaud) 2019年8月15日
Here Comes the Sun
She Said She Said
All My Loving
It's All Too Much
While My Guitar Gently Weeps
All You Need is Love
Tomorrow Never Knows
Oh! Darling
You Can't Do That#ビートルズの好きな曲10曲あげるとその人の世界が分かる
The Beatlesで一番好きな曲を問われるとこの曲を挙げるのは、こういった個人的な思い入れが大きいからです。
閑話休題。「Don't Bother Me」と「Blue Jay Way」は完全収録漏れという事になっています。『フラワー・パワー』に「Blue Jay Way」を収めずに、何がサイケなのか。
こんな事で熱くなっても仕方ありませんが、テーマ別に選曲するという体裁をとった事により、発表順をバラバラにしてコンパイルする事への意義は生まれました。
かつてのように、このような選曲で完全なる混沌と無秩序を生じる事なく、大義名分を据えた事によってリスナーの混乱を鎮める事に成功したわけです。ここだけは私の中学時代とは大きく違う、時代の進歩でしょうか。
実は、今回購入するにあたって心を動かされた要因がもう一つ存在しました。Amazonレビューにて、The Beatlesに興味を持った高校生の孫にリアルタイマーの方が前述アフィリエイトのボックスをプレゼントした…との書き込みを読んだ事です。
メンバー(やその家族)に入る印税や、音質やアルバムそのものの意義を考えればオフィシャルのボックスが良いのは当たり前でしょうが、簡単に切り捨てたくない情緒がそこにあるのではないか、と…。
最初に張ったリンク記事に書いた通り、私は英検合格のご褒美でアンオフィシャルな音源集をプレゼントしてもらったわけですが、これは私がリクエストしたわけではありません。このレビュアーの方も、この時の私の親と同じ気持ちでお孫さんにプレゼントしたのではないか、と勝手に重ねて見てしまうのです。
勿論、私はその後オフィシャル盤を全て購入し、2009リマスター・ボックスも当然買いました。本当にThe Beatlesを好きになれば、自然とそういう方向に向かうのではないかと思います。何しろ、件の廉価盤ボックスには『ホワイト・アルバム』以降の曲は収録されていないわけですから、自分で入手するしかない。
だから、「こういう入り口もそんなに悪くない、本当に興味を持ったら自分の小遣いや稼ぎで揃えろ」と思ってしまうのは、自分の体験に拠りすぎた意見でしょうか。しかし、「情弱」などというイマジネーション不足の言葉では片付けたくない、琴線に触れるものがあったのは紛れもない事実です。
そしてここまで無駄に文章を重ねていますが、この記事を書くまで一度も『ジョージ・ボーカル・ベスト』をプレーヤーに入れていませんでした。
今更ながら飛ばし飛ばし聴いてみましたが、レノン=マッカートニーの影響下で遜色ない作品を作ろうと奮闘していた初期(「You Like Me Too Much」しか収録されていませんが)と若々しいカヴァー曲、そしてジョンとポールとは違う自分なりの個を模索し確立し始めた中期とは、はっきりと違いが出ていますね。こうしてごちゃまぜに並べる事によって、それは余計に鮮やかになっているように思います。
そして改めて思ったのは、「Think for Yourself」のいびつさというか変な感じが愛おしくてたまらない事。ポールのファズ・ベースがそれに拍車をかけていて、良い仕事をしていると思います。解説本だと評論家の先生方の評価はあまり芳しくありませんが、これは初めて聴いてからずっと一貫しています。
このCDは、思い出の品々と共に実家に置いておく事にしました。
ついでなので、冒頭リンク記事にて触れていた廉価版CDの“解説”にも触れておきたいと思います。
歌詞カードは上記のものよりちゃんとしたフォントのものが付いています(対訳は当然ありませんが)。帯には解説も付いていると書いてありましたが、序文程度の短い歴史紹介のみ。
「その後の彼らの活動の歴史は今更書きのべるまでもないことだろう」
それを知りたい人が殆どだと思うのですが、詳細はちゃんとしたCDや本を買えという事なのでしょう。勿論、このシリーズ全10枚全く同じ文章が印刷されています。武道館公演の日付も間違っている…6月29日は来日した日であって公演日ではないです(気になって調べ直した)。正確には6月30日・7月1日(2回)・7月2日(2回)ですね。
インターネット時代ではありえない“解説”ですが、これはこれで大らかで味があるような気がします。