(Revenge of the) United Minds

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Don't call me Scardisc

 歴代の「Get Wild」をまとめたアルバムが出るらしい。

natalie.mu

 個人的には全く興味がないが、TM Networkを代表するこの曲が、30周年を迎えたという事にはそれなりの感慨がある。
 私は1994年のプロジェクト終了時は学生で、1999年の活動再開後はさほど熱心なファンではなかった。よって、私が持っているバージョンはあまり多くない。上記リンクの収録予定曲を参考に抜粋してみる(出典が明記されていないものは映像ソフトのみでの所有)。

Get Wild Original Single

Get Wild (“Fanks Cry-Max” Version)

Get Wild '89 Reproduction Single / 『Dress』

Get Wild (“Colosseum I”Version) 『Colosseum  1』

Get Wild (techno overdub mix) 『Classix 1』

Get Wild (Ver.0) TMN Groove Gear 1』

Get Wild (“Rhythm Red TMN Tour” Version) TMN Groove Gear 2』

Get Wild (“tour TMN Expo Arena Final” Version)

Get Wild Decade Run Reunion Single

Get Wild Decade Run - 112 Club Mix Get Wild Decade Run」

 

 この程度のものだ。やはり『City Hunter』の思い出と共に刻まれたオリジナルの出来は超えられないし、これに匹敵するバージョンはこれまた思い入れの強い(私が生まれて初めて買ってもらったアルバム『Dress』に収録)「Get Wild '89」だけだ。

 

 これだけ数多くのバージョンが存在し、繰り返し聴く機会が多ければ、お気に入りの曲という認識も薄れてくる。
 だが私がTMに興味を持ったのは間違いなくこの曲を『City Hunter』の印象的なエンディングで聞いた時のインパクトそのものであり、ひいてはTMをきっかけに自ら音楽に興味を持ち、楽器を手にしてソングライティングを始めたわけだから、私にとっても原点の一曲である事は否定しようのない事実だ。
 The Beatlesに興味を持ったのが「Twist and Shout」で、初めてギターで弾いたのが「I Should Have Known Better」なので、何かの機会に音楽を始めるきっかけを問われたらこちらを答えた方が履歴書としては見栄えするだろうが、残念ながら事実を変える事は出来ない。私はビートル・チルドレンであると同時に、TMチルドレンでもあるのだ。

 

 そして、これだけ付き合いが長い曲であれば、良い思い出だけではなく苦い記憶も存在する。
 小学校の終わり頃、まだCDプレーヤーを持っていないのに私はこの曲のシングルCDを買った。それはオリジナルバージョンを早く聴きたいという欲求の現れであり、手元に持っておきたいという所有欲の具現化でもあった。

 当時私には、良き仲間が多くいた。私が発信したTM Networkの音楽の良さを感じ取り共感し、共に行動してくれた仲間だ。小学生にとって、CDなどという高い買い物をするのにはかなりの覚悟を要する。私は、先生に怒られるのを覚悟でこっそりと学校にそれを持っていき、仲間達に購入した事を“報告”するという“義務”を果たしたのだ。
 当時の私は、TMと出会うまではワンオブゼムの一人で、運動神経及び要領の悪さでスクールカーストでもかなり下位に属していた(それを補うためというわけでもないが、目立ったり積極的に発言したりと、おどけ者のポジションは得ていたが)。
 だが、ビックリマンシールミニ四駆ファミコンゲーム、コロコロ漫画など周囲に追随していくだけだった私が、TMを“発見”した事によって先頭の人間を追おうとしなくなった。

 天使と悪魔のヘッドのシールがない?どれだけ軽量化したりシャフトを強化したりしても自慢のダンシングドールが速くならない?それがどうした、俺には今夢中になれる音楽という新たな興味の対象があり、そして仲間がいる。何の関係もないさ。
 クラス全員が一つの流行を追う必要はない、それぞれが興味のある事を突き詰めればいい。少なくとも、当時の私はそう思っていた。ネット世代の現在の子供達からすれば「そんなの、当たり前だろう」と思われるだろうが、情報から隔絶された平成初頭の田舎の小学生には、それは当然の認識ではなかった。


 あくまで今考えればの話だが、そういった異分子を疎ましく思う人間は確かに存在したのだろう。体育の授業を終えて教室に帰ってきた私が見たものは、読み取り面を一分の隙も無いほど傷だらけにされた「Get Wild」のシングルCDだった。
 勿論、犯人は私が困る姿が見たくて犯行に及んだのだろうが、傷で覆い尽くされたCDを見ると暗い情念と執念がひしひしと感じられ、小学生ながらも愉快犯にしては性質が悪すぎると感じた。

 当然、CDなどという勉学に関係ない物を学校には持って来てはならない。よって担任教師に相談も出来ず泣き寝入りしたわけだが、この件をきっかけに私は更に音楽へとのめり込んでいく事となる。

 

 今回の「Get Wild」アルバム発売のニュースで、実にどうでもいい事を思い出してしまった。30周年おめでとうございます。