単なる八月日記
2018年大河ドラマ『西郷どん』。西郷隆盛が主人公である事も含め、当然ながら興味深く観ている。
いつもならば敬愛する中岡慎太郎の登場回数や時間でやきもきするところだが、『龍馬伝』以降はもう何も期待しない事にしている。今作では嫌がらせの如く龍馬の使い走り役に甘んじているが、もうそういうものだと思って受け入れるしかない。
さて、大河ドラマでは歴史の勝者である西郷の生涯を振り返るわけだが(征韓論以降の人生はひとまず置いておく)、敗者の側にも目を向けねばならないのは歴史を学ぶ上で不可欠である。そこで、新政府軍に上野で惨敗を喫した彰義隊の足跡を辿ってみる事にした。
というのは後付けで、本当は近場の歴史散歩ルートを巡ってみたかっただけである。
内容は、この記事を参考にした。ほぼ丸パクリとも言うが。
まずは、上野恩賜公園からスタート。
いつも西郷の銅像に目を奪われてしまうが、すぐ近くにあるここが彰義隊の墓碑とは知らなかった。不勉強と洞察力のなさを恥じるばかりである。
余談だが、松田優作主演『探偵物語』第5話「夜汽車で来たあいつ」にて、水谷豊と原田美枝子の兄妹が一時の再会を果たすラストシーンのロケ地は、恐らく西郷隆盛銅像の前だと思われる。
今回は予定ルートに入っていなかった(前述記事に含まれていないため)寛永寺。
道を間違えたせいで寄ってしまう事になったが、彰義隊創始の地であり、終焉の地でもある。まるで吸い寄せられるようにここへ来てしまったので、当然寄るべき場所であったという事だろう。
前回訪れたのはこの記事の時だから、何と9年ぶり。時代は流れる。
前回は夕方の来訪だったせいか門が閉まっていたが、今回は中に入る事が出来た。
とはいえ、境内まで入る事は叶わない。そこから先は檀家の方以外入れないのは、前回来た時と同じである。
徳川綱吉の霊廟であり、天璋院篤姫の墓地でもある、という内容の案内板を確認しつつ、次の場所へと向かった。
その目的地である羽二重団子本店だが、Google Mapが示す場所をうろついても全く見つからない。思わず自分の方向感覚の無さや、まともに作動しないスマートフォンを買い換える余裕の無さを呪いかけるが、何という事はない。この店は現在改装工事中で、白い壁に覆われていたのであった。さすがにこれでは気付かない。
工事を知らせる案内に別店舗の利用を勧める文言があったので、そちらに向かう事にした。本来ならば上野戦争にて使用された砲弾が展示されているという事だが、これを確認するのは残念ながら次の機会という事になる。
日暮里駅前にあるカフェ風の店舗にて、団子セットを頂く。餡子の団子を食べるのが久方ぶりという事もあり、大変おいしかった。
前述の記事によれば、生き残った隊士達は本店の羽二重団子の店舗で慌しく着替え、日光・会津方面へと逃走して行ったらしい。その際に団子を食べる余裕は無かっただろうが、開戦前にはきっとここで舌鼓を打つ機会もあったに違いない。
夏目漱石や正岡子規といった明治の文豪達にもここの団子は取り上げられているようで、そういった関連の資料も置いてあった。写真のピントが合っていなかったので今回は掲載しないが、いずれまた行ってみたい。
日暮里駅を降り、JRの線路を眼下に望む高架橋を渡る。更に谷中銀座方面へと御殿坂を少し歩いた先に、経王寺という御寺がある。
街歩き番組の影響か、観光客は多いものの殆どが通り過ぎていたこの御寺。ここにも敗走中の彰義隊隊士が逃げ込んだようだ。
それを生々しく物語るのが、山門に残る無数の弾痕。
これだけはっきりと残っているのは貴重である。京都にて、三条大橋の新撰組によるとされる刀傷や、蛤御門の弾痕も見つけられなかった私だが、このくらい無数に残っていればさすがに発見出来る。戦闘の激しさを雄弁に物語る痕跡だ。
この日も気温はどんどん上昇中で、さすがにこれ以上は危険と判断した。
御参りしてから、山手線に飛び乗り思い出の地である池袋へと向かう。充実した一日であった。