(Revenge of the)United Minds

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平成五年のフットボール

 日本サッカーだけでなく、日本プロスポーツ界においても一大エポックであった1993年のJリーグ開幕。

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 その開幕戦がYouTubeJリーグ公式チャンネルにてライヴ公開されるとの事。広島と市原の試合には、MC役の原博美副理事長の他、リトバルスキー江尻篤彦下川健一高木琢也片野坂知宏といった当時の選手達がリモート出演するという触れ込みであった。負けた試合を視直すのもどうかと思ったが、せっかくの機会なので楽しむ事にしたのである。

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 当時の若きプレーヤー達も、現在では日本サッカー界を導いていく立場へと役割を変えた。下川以外は全員Jクラブの監督経験があり(勿論MCのヒロミも含む)、特に高木と片野坂は目覚ましい結果を残している。更なるステップアップが期待されている、期待の監督達だ。

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 我が市原側のゲストには、この2人ほどのインパクトを残している指導者がいないのは寂しいところではあるが、途中から急遽加わった佐藤勇人含め、今後に期待したい。

 

 先程、「負けた試合」と書いた。当然ながらリアルタイムで勝敗は知っていたが、試合自体は今の今まで一度も視た事がなかったのだ。風間八宏に開始早々に決められたゴール、後半に入ってようやく決まったパベルの同点弾…これらも文面だけで得た知識でしか脳内にはインプットされておらず、今回ようやく映像を伴って認識されるようになった。試合結果自体はどうあれ、得難い経験である事は間違いない。 

 サッカー選手に限らず、過去にこだわらない事=格好良い事、という風潮は今も昔も確実に存在しており、昔の事象を語りたがらなかったり、思い出そうとしない人は少なくない。だがこの試合、リティことリトバルスキーは多くの出来事をしっかりと記憶しており、それがチームメイトだった江尻・下川のみならず、対戦相手である高木・片野坂のトークを引き出すきっかけにもなっていた。

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 彼が一流選手だった理由は、こういったところにもあるのではないかと一人納得してしまった。何しろ、私が初めて好きになったサッカー選手は彼であり、そのマジカルで遊び心溢れたプレーに魅了されたからこそ(観戦スポーツとしての)サッカーの魅力に気付かされたのだ。

 

 試合内容自体は、仕方がない事ではあるが現在のレベルとはかなり開きがあると感じた。日本代表の過去の試合を視る機会が多いが、少なくともドーハでの戦いぶりはそれなりに現代に通ずるものはあり、さほど目くじらを立てる気にはならない。だがこの試合に関しては、やはり日本リーグの延長にあると認識せざるを得ないドタバタした展開が散見され、日本サッカーの進歩を逆説的に実感した。そんな中でも守備やボールの奪い方に明確な意図が感じられ、規律が存在していたように見える(高木・片野坂の発言でもそれは裏付けられた)広島の方は良いサッカーをしていた。

 対する我がジェフユナイテッド市原は…敗戦も納得の無秩序サッカーだった。特に前半は酷いもので、広島の寄せを嫌ってかマイボールにすると単純に前に蹴ってしまい、前線でパベルも新村もボールに触れずにみすみす相手に主導権を渡す展開が延々続いていた。中盤でパスもドリブルも出来るリティがいるのに、彼の頭上をボールが飛び越えていってしまっては何の意味もない。折角の世界的名手(Jリーグ開幕時、ワールドカップ優勝経験があった選手は彼一人だけ)も、これではカイバー・クリスタルの入っていないライトセイバーのようなものだ。

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 だが、これもリティ・江尻・下川の当時の述懐によって理由は明かされた。永井監督は基本的に放任サッカーで、良く言えば選手の自主性に任せたプレーをさせていたらしい。ジーコ時代の日本代表のようなものだろう。特にリティは数日前に合流したばかりで、選手間で互いのプレー特性も把握しておらず、それがあのロングボール攻勢(と言えるほど意図を感じるものでもなかったが)に繋がったのだという。

 1993年の2ndステージ開始直前、学研の月刊誌・ストライカーが予想したのは、ディフェンシブハーフ(まだボランチという役割は存在しなかった)を置かず、サイドの江尻と越後が交互に中盤の底に入るというギャンブルそのもののシステムだった。最近その事を思い出し、「まさかそんなハイリスク・ローリターンなフォーメーションは組まないだろう」と思っていたが、今回の永井監督に関する証言を聞いていると実際に行っていたのではないかとも思えてしまう…事実として残されているのは、このステージのジェフは深刻な守備崩壊に見舞われ、一つ下に(当時最弱だった)浦和しかいない9位という悪夢のような最終順位だ。

 

 閑話休題。開幕戦ハーフタイムのロッカールームにて、リティがチームメイトを一喝。それによってジェフは持ち直し、負けはしたものの同点ゴールを生む事が出来たらしい。実際、後半はボールも良く回り、悪くない内容になっていた。相変わらずパスの精度はかなり危なっかしかったが、リティが前線からプレスをかけて一人でパスカットを繰り返す場面があり、改めて彼の能力に驚かされた。華麗な攻撃的プレーにばかり目が行きがちだが、いわゆる”サッカー脳“が段違いだったのだろう。選手としてのスケールの大きさを、27年経って再び思い知らされた。

「この試合は新村とか(中西)永輔とか木澤みたいな若い選手が突然抜擢されて、連携が取れなかった。リティも合流したばかりだったし、よくわからないままサッカーしていた」

「ベテランの後藤さんや越後さんがベンチスタートだったのは大きかった。佐々木さんも次の試合は出場して凄いゴールを決めた」

「前の年にフジタ(現・湘南ベルマーレ)から来た(宮澤)ミシェルさんはDFリーダーだったけど、怪我で離脱している時間がとても長かった」

「高木さん嫌いなんですよ、僕いつもやられるし(下川は高木によく点を取られていたようだ)

「国士館で大学得点王を獲って入ってきた新村は凄いゴールを決めるんだけど (1995年2ndステージにてヴェルディの連勝を止めた背面ヒールループシュートなどその典型だろう) 、簡単なチャンスを外してしまう」

 など、何気なく挟み込まれる選手達の証言も貴重。既に客観的な事実として認識しているものもあるが、当事者が語る事によって大きな重みを持つ。こういった企画は今回だけで終わるのではなく、願わくば別の機会にも行われてほしいと思った。

 

 選手たちのやりたい事がバラバラなまま落としてしまった初戦。この反省は、第2戦のヴェルディ川崎戦にて活かされる事となる。ホーム国立(市原臨海競技場は工事中)で絶対的本命と前評判の高かったスター軍団相手に、リティのロングFKや佐々木のスーパーゴールなどで見事な勝利を収めるのだ。


【ジェフ公式】1993 Jリーグサントリーシリーズ 第2節 vs ヴェルディ川崎

(何故、佐々木のゴールは収録されていないのだろうか…)

 私が本当の意味でジェフを愛し始めたのは、この試合をTVで観戦してからだ。その後連勝街道を進んだジェフは横浜マリノスを5-0で下すなどの快進撃で首位に立ち、魅了された私がサッカー無しの生活に戻る事は最早不可能となった。

 本来なら、サッカーと私の出逢いを改めて振り返る予定だったが、思った以上に配信内容が濃いものであったため、今回はここで留める。

 

 こういった状況だからこそ設けられた機会であり、それを考えると複雑な気分にはなるが、それでも出場していた選手達のコメントを聴きながら試合を視られた事に非常に感謝している。 

 プロスポーツに限らず、エンターテイメント界全てが存亡の危機に瀕している昨今。勿論、私個人としても無縁とはいかない厳しい状況だが、今は耐えるしかない。一日でも早く、フクアリで試合が観られる事を願いながら。