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Gift to Fanks T

 未発表曲「グリニッジの光を離れて」のために購入した『Gift from Fanks T』。特別にリマスターは売り文句にはされていないのですが、現代のリスニング環境に合わせてトリートメントされているはず。

Gift from Fanks T(特典なし)

Gift from Fanks T(特典なし)

  • アーティスト:TM NETWORK
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 

 今まで所属レーベルであったエピック(ソニー)との関係から、公認・非公認問わず数多のベスト盤リリースを余儀なくされてきたTM。以前も書いた通り意義があったのは活動中に発表した『Gift for Fanks』のみだと思っています(もう少し基準を甘くすればTKブーム中の『Time Capsule』も加えて良い)。よって私はほとんどこの手のアルバムにはタッチしませんでしたが、今回は以下の理由から購入に踏み切りました。
①30周年活動以後、初のリリース全曲「Get Wild」のコンピレーションを除く)
②幻の楽曲「グリニッジの光を離れて」収録
③リマスター効果への期待
 ②が一番大きな動機ではありますが、③もそれと同じくらい自分の中では高いプライオリティでした。私がTMを再び追い始めたのは①の30周年活動後なので、これだけ機が熟せば買うというのは道理だと認識したのです。

 果たして今回のベスト盤で久々に正面から向き合ったTM第1期(1994年の“終了”までの活動)の楽曲達は、「新たな出逢い」と言っても過言ではないくらいの新鮮な輝きに満ちていたのです。これほどまでに印象が変わるとは、驚きを禁じ得ません。

 

 勿論、私の個人的な事情は大きく影響しています。中学生時代に買ったCDが自分の中での基準であり、恐らく初CD化でリマスターなどとは無縁だった時代の音を聴き続けていたのです。加えて、彼らの活動終了後は新たな音楽との出逢いの連続であり、真面目に聴き直す機会は殆どありませんでした。
 この期間、TMに興味を失ったというわけでは、断じてありません。ただあまりにも一時期の生活と密着していたために、その当時の(良き)記憶と密接にリンクしてしまい、気軽に聴く事が出来なかったのです。そして前述通り、音楽の興味の対象はどんどん広がっていきました。まるで中学時代、TMのリリースを待つあまり他の音楽を殆ど求めなかった日々を取り戻すかのように。

 

 以上のような理由から、音質向上により聴き取りやすくなったというわけではなく、ただ単に私がディテールを忘れていただけの可能性は高いです。だがそれでも今回再発見がいくつかあったので、簡単に書き出してみようと思いました。

 

Rainbow Rainbow
 フレットレス・ベースのソロが聴きやすくなった気がする。そして間奏の後半でもチョッパーが唸りを上げていて、ここもほぼベース・ソロと言っていいと思います。ベースをここまでフィーチャーしているのは、当時のテクノポップの文脈によるものでしょうか。それにしてもイントロのインパクトは凄い。佐野元春も絶賛するわけだ。

 

8月の長い夜
 ギターはソロだけフィンガー・ピッキングだと今更気付く。Cメロのミュートしたアルペジオがポップ。
 この曲、周囲の友人には非常に好評でしたが、当時の私はさして好きなわけではありませんでした。本人達が語る通り、やはりどこか歌謡テイストを感じたせいでしょうか。この時代の、リフが主体となっている小室アレンジを愛していたのだと改めて気付く。

 

Twinkle Night
 この時代のシンセ・ベース音はチョッパーっぽい音ばかりだな。ただ、TMのベース音というとこのイメージが非常に強いです。

 

Electronic Prophet
 TM初期を代表する名曲であり、ここでもフレットレス・ベースが活躍している。ボリューム奏法を駆使して、チェロのような使われ方も。木根氏が「歴代のベーシストはこの曲を演奏したがる」と発言しておられましたが、確かにこのニュアンスを出すのはベース奏者冥利に尽きそう。
 ハーモニーで特徴的な小室ボイスが聴き取りやすい。ソロ・ヴォーカルを執ると「モスキート」と呼ばれる甲高い歌声になる彼の声質ですが、やはりこの3人でのハーモニーなら完璧に溶け込んでいます。これはファンの欲目ではないと思う。

 

Your Song ("D" Mix)
 このベース音もチョッパー系。中学生の初めの頃、カセットテープでこのヴァージョンを聴き、間奏の「歓喜の歌」(ベートーヴェン)の部分で「すげー! このためにオーケストラ呼んだのかな! 小室さん金持ち過ぎる! マジかっけー!!」と「歓喜」した当時の私。だが、今改めて聴いてみればもろにサンプリング丸出しですね。だけど、あの頃の方が今より純粋に音楽を楽しめていたとも思います。これは間違いない。
 クラシック楽曲をアレンジに落とし込む、という試みの萌芽が見られますが、これが後に名曲「Human System」での自然な「トルコ行進曲」との一体化に繋がっていったのでしょう。

 

Girl
 バラード曲でもリフが肝である、と改めて実感する小室楽曲。硬いベース音、シンセリフと絡み合うギターのアルペジオが判別しやすくなった気がする。
 友人達とのカラオケでは、何故か異常に人気の高い曲でした。他のシングル曲ほどはメジャーではない、シンガロングしにくい(皆それぞれが自分の歌に自信を持っていたので)、ファルセットがあってそれなりに難易度が高い、のがその理由でしょうか。

 

Telephone Line
 木根氏のアコギのアタック音が聴きやすくなった。あと、クリーン・トーンのギターも聴こえる。リード・ギターは後のDuran Duranのメンバー、Warren Cuccurulloによるもの。
 言うまでもなくモチーフはELOの同名異曲ですが、自分はそこまでパロディックに思えないのは思い入れ故なのか。パロディという意味では、ライヴでは松本孝弘氏が「Bohemian Rhapsody」のソロをこの曲でそのまま引用しています。

 

Fool on the Planet (Where are You Now)
 原曲は言うまでもなく傑作ですが、埋もれがちなこのリプロダクト・ヴァージョン(シングル「Get Wild '89」収録)が取り上げられたのは嬉しかった。特にギターのアレンジが本当に素晴らしい。

 

Love Train
 売り上げ枚数ではTM最大のヒット曲であるとはいえ、ミリオンには及ばなかった事で小室氏は次の展開を考えるようになったとか。ヒット狙いだというのは何となく当時から感じていて、正直自分は今でもそんなに好きではありません。

 TMNに“リニューアル”してハードな音になったはずなのに、また聴きやすい打ち込みポップスに戻ってしまったのも自分の中での失望が大きかった(シングル両A面の「We Love the Earth」に顕著)。だから、友人達が『Expo』を絶賛するなかで自分だけが浮いていた事を覚えています。
 BメロではRがディストーション、Lがクリーントーンなのに、サビではこれが左右入れ替わっている。この微妙なギターのチャンネル変化にようやく気付きましたが、何か意図があるのでしょうか。ともかく、いかにこの曲を私がちゃんと聴いていなかったかがわかろうというもの。

 

Detour
 活動終了2年後の1996年、TKブームの只中にリリースされたシングル・ベスト『Time Capsule』に収録された新曲(Takashi Utsunomiya/Tetsuya Komuro/Naoto Kine名義)。リード・ヴォーカルと同じくらいの音量でミックスされた小室氏のねちっこいハーモニーが耳についてあまり好きではなかった上、すぐにこのベストを手放してしまったので久し振りに聴きました。今回、こうした形でまた音源を所有出来るのは喜ばしい事。
 特徴的なシンセ音とスネアロールの印象が強いのですが、よく聴くとアコギがうっすらと入っているのがわかる。まさかこれだけのためにゲスト・ミュージシャンを呼んだとは思いたくないので、木根氏が弾いていると信じたい。彼は素晴らしいリズム・ギタリストだと私は評価しているので。

 

君がいる朝
 再結成後のバラード。重厚なアルバム・ヴァージョンしか聴いておらず、この打ち込みゼロのAORバラードのようなアレンジが嬉しい。デモかと思うくらいシンプルではありますが、木根氏のメロディはこういった編成でも映える。
 それまでThe Beatles (というかMcCartney)やELO, Eric Carmen的な素養を見せていた木根氏ですが、再結成後はAOR風味の名曲を続々と生み出しています。

 

グリニッジの光を離れて
 問題の発掘曲。タイトルからして壮大で幻想的なバラードをイメージしていたのですが(「Electronic Prophet」のような)、まさかのあっけらかんとした明るいミディアム・ナンバー。キィが高く、それが理由で没になったのだと聞きます。
 アコギのカッティングからのスタート、スティールパンや木琴をフィーチャーしたカリプソ風味のアレンジ、「アヒルの池」「リトルリーグの少年」という生活感ある歌詞…と異例尽くし。これがリリースされていれば、1stアルバムもエレポップ一辺倒のイメージから変わっていたかもしれません。「元ネタがわかりやすい時代のTM」の楽曲として貴重。
 個人的には、ネオアコというかScritti PolittiPrefab Sproutの香りを感じました。当時のUK New Waveとの地続き感が、何やら嬉しくもあります。勿論好きな曲の一つに加わりました。