(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

If you open up your heart, You'll know what I mean.

 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。

 

 昨年は全世界がウイルスの脅威に晒され、多くの人々が不安と危機感に苛まれる日々を過ごしたはず。

 様々な事象が影響を受け、対応に追われる中、エンターテインメント業界も大きな分岐点を迎えている。もはや、存亡の危機に瀕していると言っても過言ではない。

 昨年中の開催を想定されていたイベントは数多あるだろうが、どれも規模縮小や延期、中止に追い込まれている。フィジカルが売れない現在、ライブパフォーマンスやグッズに活路を見出さなくてはならないミュージシャンは大打撃だろう。

 

 そんな2020年、恐らくは企画されていたであろうリイシューの一つが、発売50周年を迎える『All Things Must Pass』のアニバーサリー・エディションだ。

 ストレスの強い毎日の中、何の便りもない事を訝しんでいたが、昨年のジョージの命日、突如としてタイトル・チューンの2020リミックスが公開された。


George Harrison - All Things Must Pass (2020 Mix / Audio)

  30th Anniversary Editionとも違う、新たなアプローチのミックス。イントロだけでもわかる明確な違いは、衝撃的ですらあった。

 1曲だけの公開であったが、プロジェクトの行方が非常に楽しみになる動画だった。リリース形態や具体的な日付は一切明かされていないが、今年中に動きがある事は確実だろう。『Abbey Road』などでも顕著な昨今のトレンド通り、通常の2枚組に加えスーパー・デラックス・エディション等も発売されるはずである。

 問題は、冒頭で書いた社会情勢にも関連する我が経済状況である。そんなに高いCDをホイホイ買えるほど裕福ではないのだが、何しろジョージなのだ。一番高いエディションを買うのはもはや義務なのであろうが…ひとまず、どうするかは正式な発表があってからでも遅くはない。

 

 そして、こちらは明確に2020年の公開が明言されていたThe Beatlesドキュメンタリー映画『Get Back』。避けられぬ解散へと向かうバンドの鬱屈した空気やメンバー間の緊張だけが強調されていた『Let it Be』と違い、同セッションの明るい面を強調した、The Beatlesの『Get Back』セッションに新たな角度から光を与える作品になるとアナウンスがあった。

 しかし、こちらも特に続報はなく、2021年に持ち越されたのだろう…と既に忘れかけていた2020年12月。年も押し迫った21日に、これまた突如スニーク・プレビューが公開された。


The Beatles: Get Back - A Sneak Peek from Peter Jackson

 監督のPeter Jacksonが語るところによれば、この映像は予告編ではなく、膨大な数のマテリアルの一部を公開したものらしい。ただただ無為に続く散漫なセッション、音も映像もかなりの時間を記録し続けていたのだから、スタジオのムードが良い時も険悪な時も残っているのだろう。それを探し出して映画に仕上げるのだから、スタッフの苦労は想像を絶する。

 「ビートルズは、どんな時でも絆を失っていなかった…」と、下手な惹句を付けるならこんな感じの映像だろう。どうしても斜に構えて見てしまう癖が付いてしまったが、仮にセッションの一部分を切り取ったものであろうと、これだけメンバーが楽し気な表情を見せているのは驚きだった。やはりファンとしては嬉しくなってしまうものである。トゥイッケナムからアップル・スタジオへの移動後、更にビリー・プレストン参加後の映像が多くなるのかもしれない(彼の合流後にスタジオのムードは良くなった。勿論連れて来たのはジョージ)。

 ジョージが「史上最低のセッション」と振り返り、レノン・マッカートニーと衝突して(一時的にではあるが)脱退したのは紛れもない事実。ただ同時に、ポールは「あのセッションは最悪だったと言われているけど、そんな事はない。今聴き返してみると、僕らは底抜けに笑い合っていることがわかるよ」と発言している。それもまた事実なのだろう。

 The Beatlesの栄光の歴史から、長年封印されてきた映画『Let it Be』。“ビートルズ伝説”を確固たるものにするため、「黒歴史」を塗り替えようとする意図も見え隠れする。だがそれでも、楽器を持って演奏すればそれだけで楽しそうな4人を綺麗な映像で観られる魅力には抗えない。神格化されつつあるThe Beatlesがベールを脱ぎ、等身大の若者として目の前に蘇った感がある。年齢相応の音楽好きの兄ちゃん達、そんな身近さを感じさせてくれたこの映像には感謝したいし、映画への期待はより高まった。