(Revenge of the) United Minds

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Subliminal Scribbler

 『A Long Vacation 40th Anniversary Edition』が発売となり、ナイアガラ各作品(全てではない)のサブスクリプション聴取が解禁された事で、メモリアル・デーの3/21にはTwitter上でもちょっとした祭りになっていた。

www.sonymusic.co.jp

av.watch.impress.co.jp

entameclip.com 私はといえば、一切御輿を担がずにその様子を遠巻きに眺めているだけである。『A Long Vacation』の40周年盤も、未だに購入予定は立っていない。
 「こんな阿漕な商売に付き合う気はない!」などと決別宣言を出来れば少しは格好良かったのかもしれないが、悲しいかなそういう理由では全くないのであった。
初回VOX:CD以外はいらない。そもそも価格が…。
通常盤:購入予定で昨年秋に予約済みだったのだが、いつのまにか注文がキャンセルされており、とにかく欲しかったAmazon初回特典のメガジャケ付きが売り切れていた。
 という理由で入手していないだけの話であり、かなり情けない。通常盤はいずれ買うとは思うが、実はソニー期のナイアガラは30周年盤もこんな感じで消極的に向き合っていたので(なにせ未だに『Niagara Triangle Vol.2 30th Anniversary Edition』を所有していない)、個人的には通常運転だったりする。

 

 今回の話題のメインは実はここではなく、メディアの話。

news.yahoo.co.jp

40周年記念の『A LONG VACATION VOX』の内容については、実は大滝詠一本人の“ディレクション”が基本になっているという。

「始まりはまだ大滝さんがご存命だった2011年の30周年の時でした。というのもこのVOXのDISC-2に含まれる『Road to A LONG VACATION』はもう10年前にできていました。それで大滝さんが自ら40周年の時はこれをボーナスディスクにとおっしゃっていて」。

(中略)

30周年が終わった時点で、大滝の頭の中には40周年の内容の構想があったというわけだ。

「周年リリースをやっていた中で、大滝さんはいつも『CDっていつ終わるんだろう』ということを想定していました。だから20周年の時には『30周年の時はもうCDはないだろう。メディアとしてのCDは、ある種使命を終えて次の新しいメディアになっているんじゃないの?』という期待感は常にありました。でも結局30周年を迎えてもCDは残っていて『どうもこの調子だと、40周年の時もCDあるかもしれないね』ということは言っていて、それで今回『Road~』を入れることと、『40周年はとにかくその時代に存在しているオールメディアでリリースをしたい』という二つの構想を、40周年に向けて残していってくれました」。

(中略)

結果的に、3月21日に解禁になったサブスクも大滝の“指示”だった、ということになる。

「様々な事情がありつつも、サブスクの解禁をここまで引っ張った感は、そういう部分もあります。なので今回のVOXの中身も、アナログレコードあり、カセットあり、CDもBlu-rayもあります。夏にはSACD(Super Audio CD)で発売する告知も封入しました。なのでこれでおおよそ想定しうるメディアで発売できたということになります」

  この記事を100%信用するならば、故人は全てのメディアでのリリースを考えていたという。確か山下達郎Sugar Babe『Songs 40th Anniversary Edition』(私は未所有)を「未来のメディアで聴かれる準備のためにリマスターした」と語っていた記憶があるので、今回の作業にもそういう意図があったのかもしれない。

 

 サブスク全盛の現代、私の周囲でも利用者は多いし、少なくとも若者はCDなどのフィジカルでのリスニングを前提としていない事くらいは実感している。
 私も一応Spotifyの登録だけはしてあるが、それはプレイリストを制作・公開しようと思っただけの理由であり、日常的に利用するつもりはなかった。というより、今もない。
 90年代に青春を過ごした者として、やはりフィジカルメディアを所有しておきたいという気持ちは強い。時代が流れようとも、それが変わっていくとは思えないのだ。サブスクリプションで聴いた曲を気に入った場合、それを繰り返し再生するより、「ああ、この曲良いな。アルバム買わなきゃ」と思ってしまう事は明白だろう。
 それは情緒や長年の習慣だけで片付けられるものではないと思う。今回のナイアガラ・レーベルを例に出すまでもなく、全ての曲が配信されているわけではない。更に理不尽なのは、ミュージシャンの不祥事などで簡単に楽曲配信が停止されてしまう事だ。それは看過出来ない事実である。
 もっとも、現代のヤング・ジェネレーションは「あ、この曲聴けなくなってる。まぁいいや、他の曲を聴こう。まだまだ未知の音楽は沢山あるし、何せ聴き放題なのだから。どうしても聴きたくなったら、YouTubeにアップロードされているものを利用しよう」とドライな姿勢で次のお気に入りを探していくのかもしれない。私にはその割り切り方は無理だろう。思い入れだけで今まで生きてきたような人間なのだから。

 

 とはいえ、昔は抵抗のあった音声ファイルでの配信購入にも随分慣れてきてしまった(配信でしか売っていない曲が無視出来ない数になってきたせいもある)。こんな事を書いていても、数年後には「今、サブスクで知ったこの曲が熱い!」などとブログ記事を書いているかもしれない。
 所有欲という最大の課題に何とかして着地点を見付けられれば、フィジカルとストリーミングの併用、という大人の使い方に踏み切る事は出来ると思う。願わくば、「所有したい」という欲望を抑え込む方向より、多少の盤は買っても財布が痛まないような状況へと持って行くことが理想である。あまりにも遠い目標ではあるが。

 ともかく、今のウイルス禍が収まってくれない事には何も始まらない。「何だかんだ言わずに踊りゃんせ」と言い合えるような社会情勢に、一刻でも早く戻ってもらいたいものだ。