(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

Some Holocron Vol.3

 現在所有しているSW関連の書籍を、目に付いたものから取り上げて簡単に感想を述べていく企画。

f:id:micalaud:20210722012600j:plain

 『ロスト・スターズ』と同時に購入したのに、何故かここまで寝かせてしまった『レイア ‐王女の試練‐』を今回ようやくピックアップする。

 

 

 

『レイア ‐王女の試練‐』

 

Contents

 

粗筋

 激しい歴史の流れの中で、この宇宙に生まれたもう一人の“新たなる希望”。美しい惑星・オルデランの王家に預けられ、幼い頃から総督である父・ベイルと、女王である母・ブレハに暖かく育てられたレイア・オーガナは、この日16歳の誕生日を迎えた。
 オルデランの霊峰であるアベンザピーク山頂に立ち、「肉体」の強さを。銀河帝国元老員で正式に議員見習いとなり、「頭脳」の強さを。貧しい惑星の救済に従事し、「精神」の強さを。
 3つの強さを証明するための挑戦に挑み、見事に打ち克った時、レイアは女王の正統後継者として認められる事となるのである。

 

 独断で慈善事業に赴いた惑星ウォバニでは、帝国の圧制の酷さと、自らの浅はかな計画が大きな代償を支払う事になる失敗を経験。
 登山訓練では、極限の状況下で若き議員候補生の仲間達と助け合う事の大事さを痛感する。
 コルサントでの青年議会では、過熱するディベートの場で経験を活かし答えを導き出す事に成功。
 王家の一員として、常に失敗を避けようと努力し、自らを厳しく律してきた彼女は、禁忌としていた「失敗」から新たな学びを得る事に気付きを得た。

 

 帝国の支配が徐々に猛り始めたこの銀河、確かな変化が必要だ。だが武力で成し遂げるのではなく、あくまで法で変えていきたいと考えるレイア。
 だが、銀河のどこかでくすぶり始めた反乱の火種は、徐々に彼女の周囲にも近付き始めている。
 そんな反乱者達の実態を知ろうと密かに調査を重ねた彼女は、辺境の惑星クレイトにて謎の組織に囚われてしまう。そこで出会ったのは、父ベイルであった…。

 

作品概要

 以前紹介した『ロスト・スターズ』同様、カノンのスピンオフ小説を、日本の漫画家がLINEマンガにてコミック化した作品である。作者の春壱氏は体調不良で休載されていたらしいが、最近めでたく連載再開されたとの事だ。

 

 主人公であるルークはともかく、ハンは既にスピンオフ映画が公開済みである。そうなれば、トリロジーのもう1人の重要人物であり、“選ばれし者”の1人でもあるレイアの前日譚が取り上げられるのは当然の成り行きであろう。
 私は殆どスピンオフ小説を読まないので、『反乱者たち』にてメインゲストとしてフィーチャーされた回くらいしか彼女のEP4以前の話を知らない(出生直後だったEP3のラストシーンは除くとして)。個人的にも大いに興味のあるテーマであった。

 

もう1人の選ばれし者

 映画本編の主人公であるアナキンもルークも、貧しい出自から成り上がったサクセスストーリー上の人物である(前者の末路はともかくとして)。最初から高貴な立場で育ったレイアの周囲の人物達や、そんな人々の目から見たSWユニバースの状況、及び帝国の現状などは非常に興味深い要素であった。
 リーダーとして政治・軍事の面から反乱同盟をまとめ、自らブラスターを持ち危機を切り抜けるマルチタスクな姫君…そういった素養は、既にこの1巻でも見せ始めている。まだまだ失敗を繰り返している最中ではあるが、そんなトライ&エラーの様子も実にレイアらしいと思える。

 

 そういった意味で、これまた新鮮な視点からの作品であり、スピンオフとはこうであるべきといった想いすらある。
 オルデランがいかに平和で穏やかで、かつ慈悲深い星であるかがよくわかる。それがベイルやブレハといった善き統治者によるものだった事も。だからこそ、EP4での悲劇が更に鮮明となる。
 数々の試練を経験する事によって、日々様々な発見をするレイアの成長の過程も魅力的なストーリーだ。それはフォースやライトセイバー等といった超人的な要素とは全く関係のないものであり、だからこそ親近感も増す。

f:id:micalaud:20210722014526j:plain
 特に、王女として庇護される状況にうんざりしていた彼女が、自らの行動により周囲の見方を変えさせる場面には心を動かされた。

 

選ばれし者のルーツ

 レイアの側近や若手議員仲間達も、ちゃんと漫画的なポップさを兼ね備えており、魅力的だ。ここは『ロスト・スターズ』でも感じた点。こういう点にも、日本の若き漫画家が描いた意味が出てくるのではないか。

 これだけ英才教育を受け、ハイ・ソサエティな仲間達と交流してきたレイアが、コレリアを脱走し、ギャングたちと丁々発止のやり取りを繰り広げてきたチンピラであるハンと夫婦となるのも、これまたアメリカン・ドリームの一種なのかもしれない。


 レイア自身も、キャリー・フィッシャーをモデルにしながらコミックの美少女らしいキャラデザインに落とし所を上手く見つけた印象であり、『反乱者たち』でのものと同様に絶妙だと思う。
 私は巷で言われているほど、キャリーのルックスに不満を感じていない。勿論、ナタリー・ポートマンのような絶世の美女というわけではないが、薬物の影響で激痩せしていたEP5を除けば、EP4のラストのセレモニーでも、EP6のエンドアでの彼女も、十分に魅力的だと思う。勿論、言うまでもなく私はナタリーのファンなのだが…。

 

 青年議会の豪華な歓迎会にて、既にレイアはターキンと対面を果たしていた。

f:id:micalaud:20210722012259j:plain

 当然、EP4におけるデス・スターでの場面を想起しないわけがない。既にこの時点で緊張感が走っているのも、映画本編に繋がっているようで興味深い。

 

続巻への期待

 派手な戦闘や、フォースの神秘性を感じさせるようなものは今のところ一切出てこない。だからこそ、違う視点から俯瞰したSW銀河史としてこの作品に意義があると思う。
 マンガとして非常にレベルが高いので、このまま無事に連載が続いてほしいと願っている。