(Revenge of the) United Minds

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Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.2

 カタール vs セネガル 1-3

 開催国カタールの2戦目。だが、進境著しいセネガルとはかなり差がある印象。
 セネガルは前半終了間際、後半開始早々と理想的な時間にそれぞれゴールを挙げ、万全の試合運び。カタールムンタリ(元ACミラン所属のガーナ代表選手を思い起こさせる名)のゴールで一矢報いるも、その数分後に追加点を奪われ万事休す。
 カタールも得点後はボールを支配して攻め、追い上げムードが漂ったのだが、チェルシー所属の守護神、エドゥアルド・メンディが好セーブ連発でシャットアウト。本当に素晴らしい選手である。
 カタールにとっては、この試合のゴールが日本における中山雅史の日本初得点のように今後も歴史に刻まれていくだろう。初出場なのだから、ここから経験を積んでいけば良い。だが、ホスト国としては物足りない結果だった。

 

 日本 vs コスタリカ 0-1
 ドイツ戦にまさかの勝利を挙げ、世界に衝撃を与えた日本。早々とノックアウト・ラウンド出場を決定させるため、必勝の想いで試合に臨む。
 だが、本来ならばドイツ、スペインとはタイプの違う難敵として想定されていた相手。ここで勝ち点3を獲らなければグループステージの戦いはままならないとはいえ、国内の楽勝ムードが気にかかった。そして、残念ながらそれは選手にも伝播しているようにも感じられてしまった。
 上田綺世、相馬など東京五輪世代のフレッシュな選手を起用し、ターンオーバーしたメンバーで試合開始を迎えた日本だが、守備を固めるコスタリカを崩せない。
 初戦で0-7という惨敗を喫しているにも関わらず、あくまで自陣に引いた戦いを繰り広げるコスタリカ。さすがにこれは想定外だった。前線の中央でボールを受けようとする上田や鎌田は力強い守りの前に潰され、攻撃の糸口さえ見えない日本。
 スペースを完全に消されているために、三笘を投入しても彼のドリブルをなかなか活かせない。漫然と時間を過ごした末、守備陣にミスが重なってあえなく失点。そこから守備をこじ開ける力は残っていなかった。

 相手の引いた守りを崩せない。これは森保ジャパンの課題として常々指摘されてきた事だが、世界の舞台でそれが露呈してしまった。初戦で見違えるような采配を見せた森保監督だが、相手に研究された際にそれを覆すプランBを持たないという課題もそのまま。
 試合開催されたのは日本における日曜日、キックオフの時間はゴールデンタイム。ドイツ戦で興味を持った日本の視聴者が関心を持ってTVやモニターの前に集まったはず。それでこの結果である。試合内容も、延々と拙攻を繰り返す退屈なものであり、この試合が今大会における最高視聴率を獲得した(日本がベスト4以上に進出しない限り更新されないだろう)というのは何とも皮肉な話だ。私など、久し振りに実家で家族4人(+1人)でこのしょっぱい試合を観る羽目になった。
 前半は相手の守備にシュートすら打てず、後半にチャンスを迎えるもそれを活かせない。そしてミス絡みのカウンターで失点し、反撃するも時既に遅し…森保ジャパンというより、週末のフクダ電子アリーナで幾度となく見せられてきた試合内容である。注目を集めた試合で負ける点も含め、あまりにも日常的な風景がそこに広がっていた。嘆息するほかない。

 

 ポルトガル vs ウルグアイ 2-0
 試合展開に関しては互角だった印象だが、ブルーノ・フェルナンデスのクロスがそのままゴールに入った事で勝負の綾を感じた(クリスティアーノ・ロナウドのゴールかと思われたが、彼の頭には触れておらず)。そのままフェルナンデスが終了間際に自ら得たPKを決め、勝負あり。
 圧倒的なストロングポイントが目立つというよりは、攻守に安定して芯の通ったサッカーという印象のポルトガル。この国は、こういう地味な試合をしている時は強い印象がある。
 対するウルグアイは2試合連続ノーゴールと重症。スパーズのロドリゴ・ベンタンクールの攻守に渡る活躍には目を見張るものがあったが、決定機を全て相手GKディオゴ・コスタのファインセーブに止められてしまった。

 

 ウェールズ vs イングランド 0-3
 ワールドカップで初めて実現したカード。余裕の構えのイングランドに対し、ウェールズは勝利が絶対条件。
 前半は粘るウェールズだが、後半から大黒柱のベイルを下げる奇策。直後にラッシュフォードの凄まじいFKを決められ失点すると、あとはフォーデン、再びラッシュフォードと決められて敗退が決定。さすがにラムジーだけではどうにもならない。
 そして、かつてないほど安定した戦いぶりを見せるイングランド。グループステージを首位通過とは、もはや強豪国の風格がある。果たして、どこまで勝ち上がる事が出来るのか。

 

 ポーランド vs アルゼンチン 0-2
 サウジ戦にまさかの敗戦を喫し、グループステージ突破に黄信号が灯ったアルゼンチン。一方、既に勝ち点4を挙げて有利な状況のポーランド
 試合は激しい出足でボールを支配したアルゼンチンが、ほぼ試合通して攻め続けた。メッシは勿論、マック・アリスター(特徴的な姓は先祖がアイルランド移民だからだとか)、アルバレス、デ・パウルといった新星が素晴らしい働き。
 対するポーランドは防戦一方。何とか絶対的ストライカーであるレヴァンドフスキにボールを供給したいが、彼の元にやって来るのはクリア紛いのアバウトなボールだけ。大砲も弾を込められなければただの筒である。
 GKシュチェスニーの数々のセーブ、そしてPKストップなどで何とか2失点に抑えたポーランドは、勝ち点・得失点差で並んだメキシコをフェアプレー・ポイントで上回り、何とかノックアウト・ラウンドに進出した。
 2大会連続でフェアプレー・ポイントによる駆け引きに立ち会ったポーランド。前回は対する日本に配慮する傍観者だったが、今回は自分達が当事者となってしまった。
 日本の時間稼ぎのパス回しに付き合い、攻める意思をセーブした前回大会の彼らだったが、今回は終盤までアルゼンチンが3点目を獲ろうと攻める気満々。前回俺らは空気読んだんだから少しは忖度してくれよ、と言いたくなったに違いない。

 

 サウジアラビア vs メキシコ 1-2
 そして、そのフェアプレー・ポイントに泣いたメキシコ。急いで移動してタイムアップの瞬間だけ観る。
 7大会連続で16強に進出し続けてきた彼らの偉大な記録は、ここで止まった。これも歴史の一幕だ。
 アルゼンチンに劇的勝利を挙げて大会を盛り上げたサウジの旅もここで終了。だが、終了間際にアルドサリがゴールを挙げ、意地は見せた。

 

 日本 vs スペイン 2-1
 私が想定する、相当な幸運がなければ勝てない相手。それは、ブラジル、フランス、ドイツ、そしてこのスペインだ。
 しかしドイツには勝利した。ならばスペインも…と思いたいが、コスタリカを0-7で蹂躙する試合を見せつけられては、なかなかそんな気にもなれない。元々は3連敗予想だったのだから、この時点ででGS突破の可能性が残っているだけでも上出来なのではないか…とも思うが、ここまで来たら何としても勝ち残ってほしい気持ちが強かった。
 試合は予想通り、圧倒的にボールを支配される展開。モラタの先制点は回線の不良で観られなかったが、繋ぐ技術に消耗させられたという展開は前半の終了間際だけでも観ていればわかった。
 後半から、三笘・堂安の投入で勝負に出る日本。まさか、まさかである。このシフトチェンジは、この試合でも見事に成功してしまうのだ。
 迷いなく振り抜いた堂安の同点ゴール。そして、「三笘の1mm」として話題になったライン際のクロスから、田中碧の逆転ゴール。流れを一気に掴んだ日本があっという間に2ゴールを奪い、逆転勝利を奪った。

 ドイツ戦同様、信じられない結果であるが、試合展開としてはドイツより与しやすかった印象だ。東京五輪組のインタビューではスペインを警戒する発言が目立ち、「非常に嫌な相手」と認識しているように感じられたので、ここまで自信を持って試合を進めた事には非常に驚いた。
 それにしてもスペインである。前線に簡単にボールを蹴ったりせず、とにかくGKやDFからボールを繋いで攻めていく。堂安の同点ゴールも、元々はGKウナイ・シモンにかけたプレスがきっかけになっている。これが彼ら流のサッカーであり、トラッドなのだろう。
 こういうきっちりスタイルを持っているチームには、プレスをはめる技術があるし、試合を引っくり返すだけの選手も揃っている。日本は、そういった国ならばどんな強豪でも伍して戦えるようになった。Jリーグ誕生から30年、遂にここまで来たのだ。1993年のドーハから日本代表を見守ってきた人間としては、非常に感慨深い。
 さて、そうなると次なる課題が待っている。テクニックでプレスを剥がせる相手、しっかりと対策を取って引いてくる相手、変則的なサッカーで試合中でもやり方を変えてくる老獪な相手、そんな国にはどう勝てば良いのか。次のクロアチア戦が、早速その試験の場となりそうだ。難問を見事パスし、新たな領域へと辿り着いてほしい。

 

 セルビア vs スイス 2-3

 ブラジルvsカメルーンではなく、あえてこちらを選択。前半からゴールの奪い合いとなり、楽しい試合展開となった。勿論、日本がGS突破を決めたからこそ気楽に観られる試合になったのである。
 ミトロヴィッチ、ヴラホヴィッチの連続ゴールで逆転したセルビア。守備を崩しきっていないのに決めてしまうストロング・スタイル。猪木イズムを継承したかのような終盤の肉弾戦も含め、フィジカルに優れたサッカーをしている。「東欧のブラジル」の通り名はどこへやら。
 だが、トータルで見るとスイスの方がバランスで優れていた。彼らの勝利は妥当な結果だろう。
 それにしても乱闘紛いの衝突が多く、試合が何度も止まったのには閉口した。次ラウンド進出のかかった試合で緊張感も高かったのだろうが、それがボールではなく相手への不満に向かってしまった印象。退場者が出てもおかしくなかった。そんなところまで猪木イズムを受け継がなくともよろしい。
 それでいて、試合後には和やかにピッチ上で会話をする両チームの選手達。オンとオフの切り替えが激しく、困惑する。普段から欧州各国のリーグで顔を合わせているからなのだろう。遺恨が残らないのは結構な事だと思う。