Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.3
アルゼンチン vs オーストラリア 2-1
グループステージも終わり、いよいよノックアウト・ラウンドが開始。今回のワールドカップでは、アジアからは3ヵ国が進出。敗退したチームもそれぞれ勝利を挙げており(カタールを除く)、躍進の大会となりました。
まずはアジアの1番手として、オーストラリアが登場。相手はサウジ戦の敗北から復活したアルゼンチン。十分に大物食いは可能な相手。
相手の出方を窺いながらボールを支配するアルゼンチン、守備を固めてカウンターを狙うオーストラリア…という戦前の予想通りの展開。
しかし、アルゼンチンからすればこういった引いた相手はお手の物なのかもしれません。前半にメッシが美技を見せて先制点を奪うと、後半開始早々にも追加点。恐らくプラン通りの試合運びを見せます。
特に2点目は、今大会活躍中のデ・パウルがGKに激しいプレスをかけてミスを誘い、それをアルバレスが決めるというプロセスでしたが、むしろオーストラリアがやりたかった得点の形だったのではないでしょうか。
その後、グッドウィンの相手DFへのディフレクションからのゴールや、メッシのお株を奪うようなベヒッチの鋭いドリブル突破など最後まで追いすがったオーストラリア。負けはしましたが、素晴らしい戦いぶりでした。
思えばサウジ、日本と同居したアジア最終予選グループB3位から、アジア第3代表決定戦、大陸間プレーオフを勝利して本大会まで辿り着いた同国。その上グループステージを突破し、アルゼンチンにも善戦したタフさには頭が下がります。J2岡山所属のミッチェル・デュークのゴールなど、日本のファンには嬉しい余録もありました。
そして完全に息を吹き返した感もあるアルゼンチン。これはまだまだ勝ち残りそうです。
フランス vs ポーランド 3-1
私が今大会の優勝候補に推しているフランス。前半はポーランドに攻め込まれるものの、ジルーの先制ゴール後は貫禄の試合ぶり。
特筆すべきはやはりエンバペ。もはや別次元の動きで2ゴール。彼を止められるDFは、今大会に存在するのでしょうか? ものが違うとしか表現しようがないです。
ポーランドの大黒柱レヴァンドフスキも、最後にPKを決めて面目を保ちました(1度止められた後に不可解な蹴り直し判定あり)。聞くところによると、チームが負けたのに自分のゴールにニコニコしていたとか…真のストライカーとはこういう心構えでなければならないのかもしれません。
ベンゼマはじめ、怪我人続出のフランス。しかし私のような素人の目からすれば、そういったネガティヴ要素を全く感じさせない戦いぶりです。
日本 vs クロアチア 1-1 (PK 1-3)
日本サッカー史上初のベスト8への挑戦。超えるべき相手は、1998年・2006年大会でも対戦済みのクロアチア。イヴィツァ・オシムとも縁のある国であり、ここで当たるのも必然とすら思えます。
周知通りのタフな試合ぶりでもわかるように、粘り強く相手のスタイルを見極めながら試合を進める国。延長戦、PK戦が連続してもお構いなしの無尽蔵のスタミナで、前回大会の準優勝という結果を手にしました。
ドイツやスペインのような確固たるスタイルを持たない相手であるが故に、守備がはまらない。当然、ゲームの進め方にも迷いが出てくる。更に森保ジャパン最大の問題点である「相手がしっかり日本を研究してきた際の対策」を求められる局面。伊東純也も堂安も(さらに途中投入の三笘も)しっかりケアされており、非常に苦しい展開でした。
そんな状況でも、前半にこれまた苦手のセットプレーから、前田大然の先制点を奪う日本。逆にこの想定外の展開も、日本のゲームプランに更なる迷いを生じさせたのかもしれません。ビハインドを負った状況で攻勢に転じる、というここまでの勝利パターンに比べれば、ナイーヴな試合運びが求められます。選手達は、前回大会のベルギー戦の結末である“ロストフの悲劇”(0-2から逆転負け)も頭をよぎった事でしょう。
圧倒的な高さとフィジカルで、徐々に日本を押し込み始めるクロアチア。ペリシッチの同点ゴール後は、ほぼ一方的な展開だったように思います。やはりモドリッチ、コヴァチッチ、ペリシッチ、ペトコヴィッチといった選手は試合を通して脅威でした。
選手交替プランが狂った日本に対し、延長戦に次々とFWを送り込んだクロアチア。思えば、これもPK戦への布石でした。この時点で勝負あり、だったのかもしれません。
PK戦に関しては、運というより場数、経験としか言いようがありません。それも選手個人のものというよりは、チームとしての成功体験です。それは日本にとって全く不足しているもの。個人的には、延長で勝負を決められなかった時点でもうこの結果を予想していました。
相手GKリヴァコヴィッチも含め、クロアチアはPK戦に突入した時点で勝利を確信していた事でしょう。それは、前回大会で積み上げた経験の上に成り立っている自信だと思います。
今大会の日本は、今までの出場大会で最もベスト8に近付いたチームだと思います。もう少しで乗り越えられた壁、しかしやはりそこを越えるにはまだまだ経験が足りなかったというのが率直な感想です。非常に残念ですが、そう納得せざるを得ない強さがクロアチアにはありました。
モロッコ vs スペイン 0-0 (PK 3-0)
ラウンド16最大の衝撃。完全にホームと化したスタジアムの大声援をバックに、モロッコがPK戦でスペインに勝利。世界に衝撃を与えました。
いつも通り、一方的にポゼッションを握ったスペインですが、モロッコのアグレッシブな守りに大苦戦。日本の素人サッカーファンに言われたくはないでしょうが、スペインには変化が足りないように思いました。昨年の五輪でわかるように、全員が飛び抜けた巧さを持っているのはわかるのですが…。
例えば、ジエゴ・コスタのようなパワーのあるFWで攻めたり、イニエスタやシャビのようなチェンジ・オブ・ペースの出来る選手が足りなかったように思います。
時折、躍動感溢れるカウンターを仕掛けていたモロッコはいつ得点を奪ってもおかしくありませんでした。試合を支配していたのはスペインかもしれませんが、サッカーに判定制度があるならば殆どの採点員がモロッコに旗を挙げると思います。
一見モロッコが起こした番狂わせに見えますが、実は必然の勝利でした。
それにしても、PK戦にて3人連続で止められたスペインはとても他人事には見えませんでした。タイムスリップして、前日と同じ試合を見せられているのかと思ったくらい。奇しくも、グループE突破国は連日のPK戦敗退を喫した事になります。
クロアチア vs ブラジル 1-1 (PK 4-2)
ここから準々決勝。所用をこなしながら、横目で観戦…したのですが、延長戦はもうそれどころではなくなりました。ディス・イズ・フットボール!
ブラジル相手にも、対日本戦のような試合運びを繰り広げるクロアチア。相手はネイマールを擁するサッカー王国、ボールを支配される事など想定済みでしょう。
攻めるブラジル、粘り強く耐えるクロアチア。それが決壊したのは延長後半。ここまでスコアレスで凌いできたクロアチアのゴールを、ブラジルの象徴たるネイマールが遂に打ち破ります。
ここまで攻め手がなかったクロアチアは、もはや反撃の手段は残されていないだろう。これで試合も決まりだ…誰もがそう思った延長後半終盤、何とクロアチアがまさかのカウンターからペトコヴィッチのゴール。まるで魔法のように繋がった流れに、クロアチアの不屈の精神を見せ付けられました。
日本戦同様、PK戦に突入した時点でもう勝負あり。相手が王国だろうがどこだろうが、最後はクロアチアが勝つ。極上のドラマを観させてもらいました。
全員が一致団結して守り、相手より走る。そして数少ないチャンスを活かしてゴールを決め、前評判を覆す…私が好きなチームの典型を挙げるとこうなるのですが、このクロアチアはまさにそういった集団でした。
30代後半なのに、2試合連続でPK戦のキッカーまで務めたモドリッチ、天晴れ。2006年大会からフィールドプレーヤーとして君臨し続けているという事実が、いかにこの選手が特別であるかを示していると思います。凄いとしか言いようがない。
モロッコ vs ポルトガル 1-0
そして、この試合もまたフットボールの象徴的な試合。先制点を守り切ったモロッコが、2試合連続の快挙でアフリカ勢初のベスト4に進出。
攻めるポルトガル、守るモロッコという図式は誰もが予想した通りだと思いますが、スペイン戦同様にモロッコの躍動感が凄まじい。守りの時間は確かに長いのですが、決定的なチャンスの数は明らかにモロッコの方が多かったのではないかと思います。
クリスティアーノ・ロナウドをスタメンから外し、フレッシュな面子で臨んだポルトガルですが、最後までモロッコの精力的な動きの前に沈黙。
そのCR7も後半から登場しましたが、決定的チャンスを活かせません。4年前の彼ならば、そのうちの1つくらいは決めていたのでしょうか? 試合後の涙は、2004年のEUROで彼を知った人間としても切ない気分になりました。今はなき千歳烏山のサッカーショップで、同店の店長や店員の方とこの大会について話し込んだ事を思い出します。
それにしても、このモロッコを止めるチームはあるのでしょうか? 確かにイニシアティヴを握って勝つチームではないですが、そう簡単に負けるイメージが沸かない。それこそ、2004年EUROのギリシャのように優勝すら有り得るのではないか…それがこの時点で抱いた印象でした。
スペインとポルトガル、イベリア半島の代表チームを制した事で、ウマイア朝の話題を出す人もいるようです。