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Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.4

 ワールドカップ閉幕からまだ2週間も経過していないのに、あの日々が遠い昔のように思える。

 それだけ試合内容の密度が濃く、Abemaのお陰で試合を毎日のように追うことが出来た反動だろう。お陰で、大変充実した日々を送らせてもらった。

 

 アルゼンチン vs クロアチア 3-0

 熾烈な戦いを勝ち残った4ヶ国。準決勝第1戦は、勢いに乗るアルゼンチンがクロアチアを下した。

 今まで通り我慢強く戦うクロアチアだが、1本のロングパスでゲームプランに狂いが生じる。裏に抜け出したアルバレスを、リヴァコヴィッチが倒したとしてイエローカードとPKを献上。これをメッシが難なく決め、アルゼンチンが先制。

 この判定を巡っては、世界中で多くの議論を呼んだようだ。

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 リヴァコヴィッチとアルバレスの交錯がファウルと判定されたが、リヴァコヴィッチは横に移動しておらず、むしろアルバレスが彼の脚へと突っ込んでいったように見える。このプレーを毎度PK判定されていては、GKは仕事にならないのではないか。

 後半から選手交代で攻撃のスイッチを入れるクロアチアだが、とにかくアルゼンチンの守備の圧力が凄まじい。攻めあぐねているうちに、徹底マークされていたメッシに突破を許し、アルバレスに2点を叩き込まれる結末。不屈の闘志で大会を勝ち抜いてきたクロアチアも、遂にここで力尽きた。

 モドリッチは、まだまだ代表を引退する気はないらしい。恐ろしいほどの闘志と肉体強度である。もしかすると、4年後もピッチで駆け回る彼の姿を観られる可能性すらある。

 PKの判定に関しては議論の余地があるとはいえ、アルバレスが素晴らしい選手であることは疑いようのない事実だ。まだ22歳の新星は、ゴールにチャンスメイクにと躍動を続けている。アルゼンチンは、遂にメッシの能力を最大限に引き出すことの出来るストライカーを得た。

 恐ろしく速い帰陣、強度のある守備はいよいよ研ぎ澄まされてきた。初戦の躓きから見事な立ち直りを見せた南米の強国が、まずは決勝へと名乗りを挙げる。

 

 フランス vs モロッコ 2-0

 落日を知らぬかのような挑戦者モロッコ、受けて立つ圧倒的王者フランス。結果としては、世界史上1300年越しのリベンジはならず。

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 開始早々、今大会活躍中のテオ・エルナンデスのゴールで先制したフランス。今大会初めての追う展開で、非常にゲーム運びが難しくなってしまったモロッコ

 ボールを相手に持たせ、相手の変化にも柔軟に対応する王者の戦いぶり。時折、エンバペの超人的なスピードで脅威を与えることも忘れない。まさに横綱相撲の域。

 それでも衰えぬ運動量で徐々に盛り返し始めていたモロッコに、デシャン監督は選手交代で的確に対応。なんとあのリリアン・テュラムの息子であるマルクステュラムを左サイドに入れて攻守に安定をもたらすと、投入直後のコロ・ムアニのゴールで勝負あり。デシャン采配は思わず「仰木マジック」とでも言いたくなる、日本人にもわかりやすい交代策の的中ぶりであった。

 コロ・ムアニは追加招集メンバーであり、これが代表初ゴール。しかも、大会直前までこの日本にいた(浦和とのプレシーズンマッチのため)。

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 何とも出来すぎたストーリーである。準決勝でサイドバックがゴールを決める、というのも1998年の初優勝時を思い起こさせるし、その得点者の息子がこの試合の救世主の1人となったのだから尚更だ。連覇は目前に迫ってきた。

 モロッコは、今大会最大の驚きだった。やはり選手達が一致団結してハードワークしなければ世界で結果を残すことは出来ない、そう改めて感じさせてくれる素晴らしいチームだった。ウナイ、アムラバト、エンネシリ、ブファル、マズラウィ、ハキミ…今大会で私も名前を覚えた選手達は、今後マーケットでも引く手数多だろう。個人的には、日本が目指すべきサッカーは彼らのそれだと思っている。

 

 クロアチア vs モロッコ 2-1

 3位決定戦は意味がない、ただのFIFAの金儲けのための茶番だ。そんなひねくれた見方を完全否定する、両チームの真剣な試合ぶり。どちらも、本気で3位の栄誉を狙って戦っていた。

 結果こそクロアチアの勝利だったが、内容としてはほぼ互角。モドリッチコバチッチの統率で中盤を支配するクロアチア、火を吹くようなカウンターを仕掛け続けるモロッコ

 何より、前述通り両チームが本気で勝利を追い求めている。ここまで精神力と運動量で相手を上回ってきた国同士が、手を抜かず激突する。好ゲームにならないわけがない。

 後の決勝戦ばかりが絶賛されているが、この試合も忘れてはならない。「ワールドカップ史上、最高の3位決定戦」と断言する。

 

 アルゼンチン vs フランス 3-3 (PK 4-2)

 世界王者の座をかけた戦いゆえ、決勝戦は両チームがセーフティーに試合を進めることが多い。結果、自然とロースコアの堅い勝負になりがち…そんな決勝戦の一般的な評価を覆す、超スペクタクルな攻撃マッチとなった。

 だが、試合序盤はアルゼンチンのペース。主役はメッシではなく、左サイドで度々フランスの守りを切り裂いていたディ・マリアだった。まずはテクニカルな突破でPKを誘ってメッシの先制点をお膳立てすると、更に自らのゴールで突き放す。

 守っては準決勝のクロアチア戦でも見せたインテンシティ溢れる守備でジルーやエンバペを完封。反撃に転じようとするフランスの攻撃の芽を早い段階で摘み続ける。

 ここまでの攻撃力が嘘のように、フランスは沈黙してしまった。アルゼンチンの切り替えの速さに攻めを組み立てる事すら出来ず、ただひたすら時間だけが過ぎていく。後述するが、私はフランスを応援しながら視ていただけに、シュート0本という不甲斐なさには心底がっかりした。あまりの退屈さに、ハーフタイムから後半開始直後まで眠ってしまったほどである。

 前半終了間際に、ここまでフランスのオフェンスをリードしていたジルー、デンベレを立て続けに交代させたデシャン監督の采配も、閉塞した状況を打開するために目先の変化のみを求めたように見え、とても効果的とは思えなかった。少なくとも、この時点では…。

 後半、更にグリーズマンとテオ・エルナンデスという、決勝進出の立役者達を下げるフランス。対して、前半大活躍だったディ・マリアに代わりDFのアクーニャを投入したアルゼンチン。ここが勝負の分かれ目となった。

 後半もペースを握られていたフランスだが、終了間際にコロ・ムアニが倒されてPKを獲得。これを難なくエンバペが決めると、前回覇者がここで完全に復活を遂げた。大攻勢を仕掛け、テュラムとのワンツーからエンバペが目の覚めるような(二重の意味で)ボレーを叩き込んだのである。

 コロ・ムアニもテュラムも、この試合でも途中投入で結果を出した。結果として、デシャン監督の修正は見事奏功したこととなる。

 ここからは、目くるめく攻撃マッチとなった。延長戦、メッシが決めればエンバペも譲らない。どっちに勝負が転ぶかわからない、緊張感溢れる内容。思わず寝落ちしてしまった前半の低調さはどこへやら、全く別の試合を観ているような感覚に陥る。

 ここまでくるとPK戦はボーナスのようなものだが、ともかく最後の最後にアルゼンチンは勝利し、追いすがったフランスは涙をのんだ。代表では長年苦しみ続けてきたメッシが、遂に世界王者を戴冠。殆どのフットボール・ファンが望む、理想的なハッピーエンドだったのではないか。

 ただし、個人的には前述通りフランスを応援していたので、少々やりきれない想いがあったのは事実。アルゼンチンはオランダとのPK戦勝利で相手を挑発し、メッシは相手選手に声を荒げていた(苛立ちの理由は理解出来るものの)。そして、準決勝の先制点と同じく、この試合の先制点も微妙な判定。あれだけ誘うようなボールキープにまんまと足を出してしまったフランスのDFにも問題はあるが、どちらのPK判定も個人的に納得のいくものではなかった。

 とはいえ、歴史に残る素晴らしい試合だったという事実は揺るがない。個人的には、今まで観てきたワールドカップの中で最高の決勝戦だった。睡眠時間がどんどん少なくなっていく焦燥感を、サッカーという競技の魅力を感じさせてくれた幸福感が上回った。

 

 1998年フランス大会以降、ワールドカップをTVの前で体感してきた私だが、間違いなく今大会がベストだったと断言できる。伝統の強さ、それを超えようとする新たな潮流。何より、その流れの中に我が日本代表が加わったことが大きい。

 そう感じることが出来たのも、全試合を無料配信してくれたAbemaのお陰である。改めて、深く感謝いたします。本当にありがとうございました。

 

 

 今年は大晦日まで更新を続けるという、変則的なカレンダーとなりました。

 本当に色々ありましたが、来年は世界も私も皆様もポジティヴな方向に進むことをねがっています。

 今年もありがとうございました。お年を。