(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

What Me, Lonely

 高橋幸宏氏の訃報から、約2週間が経ちました。

www.asahi.com

 現時点で、日本で1番好きな音楽家との別れ。ブログで触れないわけにはいかず、何とかそれらしい文章を書こうと思っていましたが、未だに考えがまとまっていません。ただただ残念、とにかくショック。それ以上の言葉で今の気持ちを表現する事が難しい。

 Twitter上では、幸宏ファンの方々の「覚悟は出来ていた」というツイートを散見しますが、私にとっては青天の霹靂…とまでは書きませんが、少なくともこのような結末は予想していませんでした。

 2018年大会の際には頻繁に感想を呟いていたのに、昨年末のワールドカップ開催期間中は幸宏氏のTwitterアカウントが全く動かず。体調が思わしくないのでは、と感じていましたが、それでもいつか再び我々の前に姿を見せてくれるのではないか。根拠はありませんが、漠然とそう思っていました。

 病気が発覚してからも、ぽつりぽつりと近況を呟いていた幸宏氏。The Good-Byeの加賀氏もそうでしたが、SNSやブログ等で現状を報告してくれる分、リアルタイムで状況を見守っているかのような錯覚を起こしてしまいます。

micalaud.hatenablog.com

 だからこそ、悲しい知らせが入るとショックは大きい。インターネット上で元気に発信していた頃とのギャップが、ファンである私の胸を更に締め付ける。「勝手に一喜一憂しないでくれよ」と彼らに言われてしまいそうですが、こちらも定期的に通院している身としては、知らず知らずのうちに自分を重ねてしまうのです。

 

 ニュースを知って最初に思ったのは、かつての音楽のパートナーはどこでこの事実を知り、そしてどう思っているのだろうか、という事でした。

blog.goo.ne.jp

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 我らの音楽ユニット"SpiSun"のブログでは、初年度しか記事を更新しなかった彼、ジョニー馬論。それでも、上記2エントリーの他にも、決して多くはないブログ記事の中で度々幸宏氏を話題に出しています。

 元々は坂本教授ファンである事を自認しながら、彼も強く幸宏氏の音楽に心惹かれていたのです。実際に後年「人生の名盤」を聴いた際、彼は幸宏氏の『What Me, Worry?』とMari Wilson『Showpeople』を挙げていました。高橋幸宏とTony Mansfieldの2人が、New Waveテクノポップに傾倒するようになってからの彼の2大導師だったのです(John Lennon, George Harrison, Jeff Lynneなどが好きなのは当然として)。

 今回の件に関して、私はこれといって連絡は取っておりません。同時に、彼からのメッセージも未受信のまま。「幸宏、亡くなっちゃったね」「そうだね、ショックだね」「本当だよね、もっと元気でいてほしかったよね」などとやり取りするのも気恥ずかしさがありますし、彼も同じように考えているのでしょう。いつか、実際に顔を合わせて幸宏談義をしてみたいものです。

 ちなみに、今回の記事タイトルは彼の天然発言から拝借しました。何度間違いを指摘しても、馬論は『What Me, Worry?』をこのように間違えて呼称していたのです。それも、もはや懐かしい。

 

 そのまま、どんどん記憶を遡っていく私の思考回路。蘇るのは、今はなき御茶ノ水のレコードショップ。学校帰りに寄ったその店で、T.E.N.Tレーベルの紙ジャケ再発を買った事を思い出します。

 高橋幸宏、そしてMoonridersの4枚。私にとっては、どちらも非常に重要なミュージシャンです。

 更に数年後、セブン・シーズ~アルファ時代の幸宏カタログが再発。この時、全てを購入したはずなのに何故か『四月の魚』サントラだけが私の棚に欠けている。大いなる謎。

(2nd『音楽殺人』はこの再発より前に購入済み)

 そんな事も、今回の報道で思い出してしまいました。

 

 ライブに行ったり、逐一活動を注視したりするほど熱心なファンとは言い難いですが、今でも彼の音楽は日常的に聴いています。まして、昨年はMetafiveの2ndが発売されたばかり。決して過去の音楽ではなく、現在進行形で愛聴していたのです。

 だからこそ、衝撃の大きさを未だに受け止める事が出来ない。悲しみは慣れるものですが、まだまだ全然その段階には達していませんね。もう少し落ち着いたら、、私の幸宏ファン・ヒストリーを記事にしたいと思います。

 

 “幸宏サウンド”を脳内でイメージしようとすると、何故かこの曲のイントロが必ず浮かんできます。それだけ、自分にとっては印象深いのでしょう。当然ながら、大好きな曲です。


www.youtube.com

 小学校時代のマラソン練習の時間、エンドレスで校舎のスピーカーから流れ続けたYMORydeen」。強烈な思い出であり、忘れ得ぬテクノポップの洗礼でした。この時点で、自分の人生はもう決まっていたのかもしれません。

 幸宏さん、今まで本当にありがとうございました。しばし、Salavah!

単なる正月日記

 明けましておめでとうございます。

 

 年明けからいつになく移動が多く、LINE上での年頭の挨拶等も殆ど行われなかったため、正月を通過したという意識が非常に薄いままです。

 特にブログ上で取り上げるようなエピソードがないため、三が日に訪れた寺社仏閣の写真を紹介します。

 

 毎年、殆ど同じような写真を載せているようでいいのか、と改めて思ってしまいました。ブログというよりは、自分の人生に対してです。

 

 我々以外に詣でていた家族が、「あれ、ここじゃない」「いいからここもお参りしておきましょうよ」というやり取りを繰り広げていました。

 

 こちらも近隣の方々が焚火(お焚き上げ?)を囲んで盛り上がっていました。いつぞや行われていたガラポンや豚汁のサービスはなし。

micalaud.hatenablog.com

 実施されたのは、この年だけだったのでしょうか。

 

 「おみくじが高くなっている」とは友人談。昨今の歯止めの利かない値上げラッシュを思えば、確かにそんな気もしてしまいます。

 

 何度も前を通過しているのに、今まで全く存在に気付かなかった史跡より夕日を臨む。

 

 近所に滞在していたので、せっかくだからと初詣に訪れた神社。

micalaud.hatenablog.com

 昨年訪れた際の静けさが印象的で、正月からそれを味わってみるのも悪くないと思ったのですが…。

 完全に人手を甘く見ていました。恐らく1~2時間は待たされるであろう大行列。かなり敷地が広く、交通整理のためにかなりの人数が割かれている事からも、「静かに参拝」などと洒落込めるほどの小さな規模の神社ではありませんでした。

 

 正月らしいものを見せて頂いて恐縮しましたが、足早に退散。間違いなく今年も訪れるチャンスはあるはずなので、その時にゆっくりお参りするつもりです。

 

 こちらのお寺は、自分が望んだ通りの静けさがありました。

micalaud.hatenablog.com

 それでも、訪れる人は絶えませんでしたが。

 

 前を歩く若いカップルに気を遣いながら写真撮影。

 

 今年の大河ドラマにも、この御寺ゆかりの人物が登場するかもしれませんね。

 

 古城址に昇る月。

micalaud.hatenablog.com

 画像だけでは、とても城があったようには見えませんが。

 

 今年もよろしくお願いいたします。

 

 昨年末に訪れたこの御寺周辺の風景が、歴史背景も相まって非常に印象的でした。近いうちに再訪する予定です。

Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.4

 ワールドカップ閉幕からまだ2週間も経過していないのに、あの日々が遠い昔のように思える。

 それだけ試合内容の密度が濃く、Abemaのお陰で試合を毎日のように追うことが出来た反動だろう。お陰で、大変充実した日々を送らせてもらった。

 

 アルゼンチン vs クロアチア 3-0

 熾烈な戦いを勝ち残った4ヶ国。準決勝第1戦は、勢いに乗るアルゼンチンがクロアチアを下した。

 今まで通り我慢強く戦うクロアチアだが、1本のロングパスでゲームプランに狂いが生じる。裏に抜け出したアルバレスを、リヴァコヴィッチが倒したとしてイエローカードとPKを献上。これをメッシが難なく決め、アルゼンチンが先制。

 この判定を巡っては、世界中で多くの議論を呼んだようだ。

www.dazn.com

 リヴァコヴィッチとアルバレスの交錯がファウルと判定されたが、リヴァコヴィッチは横に移動しておらず、むしろアルバレスが彼の脚へと突っ込んでいったように見える。このプレーを毎度PK判定されていては、GKは仕事にならないのではないか。

 後半から選手交代で攻撃のスイッチを入れるクロアチアだが、とにかくアルゼンチンの守備の圧力が凄まじい。攻めあぐねているうちに、徹底マークされていたメッシに突破を許し、アルバレスに2点を叩き込まれる結末。不屈の闘志で大会を勝ち抜いてきたクロアチアも、遂にここで力尽きた。

 モドリッチは、まだまだ代表を引退する気はないらしい。恐ろしいほどの闘志と肉体強度である。もしかすると、4年後もピッチで駆け回る彼の姿を観られる可能性すらある。

 PKの判定に関しては議論の余地があるとはいえ、アルバレスが素晴らしい選手であることは疑いようのない事実だ。まだ22歳の新星は、ゴールにチャンスメイクにと躍動を続けている。アルゼンチンは、遂にメッシの能力を最大限に引き出すことの出来るストライカーを得た。

 恐ろしく速い帰陣、強度のある守備はいよいよ研ぎ澄まされてきた。初戦の躓きから見事な立ち直りを見せた南米の強国が、まずは決勝へと名乗りを挙げる。

 

 フランス vs モロッコ 2-0

 落日を知らぬかのような挑戦者モロッコ、受けて立つ圧倒的王者フランス。結果としては、世界史上1300年越しのリベンジはならず。

www.chunichi.co.jp

 開始早々、今大会活躍中のテオ・エルナンデスのゴールで先制したフランス。今大会初めての追う展開で、非常にゲーム運びが難しくなってしまったモロッコ

 ボールを相手に持たせ、相手の変化にも柔軟に対応する王者の戦いぶり。時折、エンバペの超人的なスピードで脅威を与えることも忘れない。まさに横綱相撲の域。

 それでも衰えぬ運動量で徐々に盛り返し始めていたモロッコに、デシャン監督は選手交代で的確に対応。なんとあのリリアン・テュラムの息子であるマルクステュラムを左サイドに入れて攻守に安定をもたらすと、投入直後のコロ・ムアニのゴールで勝負あり。デシャン采配は思わず「仰木マジック」とでも言いたくなる、日本人にもわかりやすい交代策の的中ぶりであった。

 コロ・ムアニは追加招集メンバーであり、これが代表初ゴール。しかも、大会直前までこの日本にいた(浦和とのプレシーズンマッチのため)。

web.gekisaka.jp

 何とも出来すぎたストーリーである。準決勝でサイドバックがゴールを決める、というのも1998年の初優勝時を思い起こさせるし、その得点者の息子がこの試合の救世主の1人となったのだから尚更だ。連覇は目前に迫ってきた。

 モロッコは、今大会最大の驚きだった。やはり選手達が一致団結してハードワークしなければ世界で結果を残すことは出来ない、そう改めて感じさせてくれる素晴らしいチームだった。ウナイ、アムラバト、エンネシリ、ブファル、マズラウィ、ハキミ…今大会で私も名前を覚えた選手達は、今後マーケットでも引く手数多だろう。個人的には、日本が目指すべきサッカーは彼らのそれだと思っている。

 

 クロアチア vs モロッコ 2-1

 3位決定戦は意味がない、ただのFIFAの金儲けのための茶番だ。そんなひねくれた見方を完全否定する、両チームの真剣な試合ぶり。どちらも、本気で3位の栄誉を狙って戦っていた。

 結果こそクロアチアの勝利だったが、内容としてはほぼ互角。モドリッチコバチッチの統率で中盤を支配するクロアチア、火を吹くようなカウンターを仕掛け続けるモロッコ

 何より、前述通り両チームが本気で勝利を追い求めている。ここまで精神力と運動量で相手を上回ってきた国同士が、手を抜かず激突する。好ゲームにならないわけがない。

 後の決勝戦ばかりが絶賛されているが、この試合も忘れてはならない。「ワールドカップ史上、最高の3位決定戦」と断言する。

 

 アルゼンチン vs フランス 3-3 (PK 4-2)

 世界王者の座をかけた戦いゆえ、決勝戦は両チームがセーフティーに試合を進めることが多い。結果、自然とロースコアの堅い勝負になりがち…そんな決勝戦の一般的な評価を覆す、超スペクタクルな攻撃マッチとなった。

 だが、試合序盤はアルゼンチンのペース。主役はメッシではなく、左サイドで度々フランスの守りを切り裂いていたディ・マリアだった。まずはテクニカルな突破でPKを誘ってメッシの先制点をお膳立てすると、更に自らのゴールで突き放す。

 守っては準決勝のクロアチア戦でも見せたインテンシティ溢れる守備でジルーやエンバペを完封。反撃に転じようとするフランスの攻撃の芽を早い段階で摘み続ける。

 ここまでの攻撃力が嘘のように、フランスは沈黙してしまった。アルゼンチンの切り替えの速さに攻めを組み立てる事すら出来ず、ただひたすら時間だけが過ぎていく。後述するが、私はフランスを応援しながら視ていただけに、シュート0本という不甲斐なさには心底がっかりした。あまりの退屈さに、ハーフタイムから後半開始直後まで眠ってしまったほどである。

 前半終了間際に、ここまでフランスのオフェンスをリードしていたジルー、デンベレを立て続けに交代させたデシャン監督の采配も、閉塞した状況を打開するために目先の変化のみを求めたように見え、とても効果的とは思えなかった。少なくとも、この時点では…。

 後半、更にグリーズマンとテオ・エルナンデスという、決勝進出の立役者達を下げるフランス。対して、前半大活躍だったディ・マリアに代わりDFのアクーニャを投入したアルゼンチン。ここが勝負の分かれ目となった。

 後半もペースを握られていたフランスだが、終了間際にコロ・ムアニが倒されてPKを獲得。これを難なくエンバペが決めると、前回覇者がここで完全に復活を遂げた。大攻勢を仕掛け、テュラムとのワンツーからエンバペが目の覚めるような(二重の意味で)ボレーを叩き込んだのである。

 コロ・ムアニもテュラムも、この試合でも途中投入で結果を出した。結果として、デシャン監督の修正は見事奏功したこととなる。

 ここからは、目くるめく攻撃マッチとなった。延長戦、メッシが決めればエンバペも譲らない。どっちに勝負が転ぶかわからない、緊張感溢れる内容。思わず寝落ちしてしまった前半の低調さはどこへやら、全く別の試合を観ているような感覚に陥る。

 ここまでくるとPK戦はボーナスのようなものだが、ともかく最後の最後にアルゼンチンは勝利し、追いすがったフランスは涙をのんだ。代表では長年苦しみ続けてきたメッシが、遂に世界王者を戴冠。殆どのフットボール・ファンが望む、理想的なハッピーエンドだったのではないか。

 ただし、個人的には前述通りフランスを応援していたので、少々やりきれない想いがあったのは事実。アルゼンチンはオランダとのPK戦勝利で相手を挑発し、メッシは相手選手に声を荒げていた(苛立ちの理由は理解出来るものの)。そして、準決勝の先制点と同じく、この試合の先制点も微妙な判定。あれだけ誘うようなボールキープにまんまと足を出してしまったフランスのDFにも問題はあるが、どちらのPK判定も個人的に納得のいくものではなかった。

 とはいえ、歴史に残る素晴らしい試合だったという事実は揺るがない。個人的には、今まで観てきたワールドカップの中で最高の決勝戦だった。睡眠時間がどんどん少なくなっていく焦燥感を、サッカーという競技の魅力を感じさせてくれた幸福感が上回った。

 

 1998年フランス大会以降、ワールドカップをTVの前で体感してきた私だが、間違いなく今大会がベストだったと断言できる。伝統の強さ、それを超えようとする新たな潮流。何より、その流れの中に我が日本代表が加わったことが大きい。

 そう感じることが出来たのも、全試合を無料配信してくれたAbemaのお陰である。改めて、深く感謝いたします。本当にありがとうございました。

 

 

 今年は大晦日まで更新を続けるという、変則的なカレンダーとなりました。

 本当に色々ありましたが、来年は世界も私も皆様もポジティヴな方向に進むことをねがっています。

 今年もありがとうございました。お年を。

Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.3

 アルゼンチン vs オーストラリア 2-1
 グループステージも終わり、いよいよノックアウト・ラウンドが開始。今回のワールドカップでは、アジアからは3ヵ国が進出。敗退したチームもそれぞれ勝利を挙げており(カタールを除く)、躍進の大会となりました。
 まずはアジアの1番手として、オーストラリアが登場。相手はサウジ戦の敗北から復活したアルゼンチン。十分に大物食いは可能な相手。
 相手の出方を窺いながらボールを支配するアルゼンチン、守備を固めてカウンターを狙うオーストラリア…という戦前の予想通りの展開。
 しかし、アルゼンチンからすればこういった引いた相手はお手の物なのかもしれません。前半にメッシが美技を見せて先制点を奪うと、後半開始早々にも追加点。恐らくプラン通りの試合運びを見せます。
 特に2点目は、今大会活躍中のデ・パウルがGKに激しいプレスをかけてミスを誘い、それをアルバレスが決めるというプロセスでしたが、むしろオーストラリアがやりたかった得点の形だったのではないでしょうか。
 その後、グッドウィンの相手DFへのディフレクションからのゴールや、メッシのお株を奪うようなベヒッチの鋭いドリブル突破など最後まで追いすがったオーストラリア。負けはしましたが、素晴らしい戦いぶりでした。
 思えばサウジ、日本と同居したアジア最終予選グループB3位から、アジア第3代表決定戦、大陸間プレーオフを勝利して本大会まで辿り着いた同国。その上グループステージを突破し、アルゼンチンにも善戦したタフさには頭が下がります。J2岡山所属のミッチェル・デュークのゴールなど、日本のファンには嬉しい余録もありました。
 そして完全に息を吹き返した感もあるアルゼンチン。これはまだまだ勝ち残りそうです。

 

 フランス vs ポーランド 3-1
 私が今大会の優勝候補に推しているフランス。前半はポーランドに攻め込まれるものの、ジルーの先制ゴール後は貫禄の試合ぶり。
 特筆すべきはやはりエンバペ。もはや別次元の動きで2ゴール。彼を止められるDFは、今大会に存在するのでしょうか? ものが違うとしか表現しようがないです。
 ポーランドの大黒柱レヴァンドフスキも、最後にPKを決めて面目を保ちました(1度止められた後に不可解な蹴り直し判定あり)。聞くところによると、チームが負けたのに自分のゴールにニコニコしていたとか…真のストライカーとはこういう心構えでなければならないのかもしれません。
 ベンゼマはじめ、怪我人続出のフランス。しかし私のような素人の目からすれば、そういったネガティヴ要素を全く感じさせない戦いぶりです。

 

 日本 vs クロアチア 1-1 (PK 1-3)
 日本サッカー史上初のベスト8への挑戦。超えるべき相手は、1998年・2006年大会でも対戦済みのクロアチア。イヴィツァ・オシムとも縁のある国であり、ここで当たるのも必然とすら思えます。

 周知通りのタフな試合ぶりでもわかるように、粘り強く相手のスタイルを見極めながら試合を進める国。延長戦、PK戦が連続してもお構いなしの無尽蔵のスタミナで、前回大会の準優勝という結果を手にしました。
 ドイツやスペインのような確固たるスタイルを持たない相手であるが故に、守備がはまらない。当然、ゲームの進め方にも迷いが出てくる。更に森保ジャパン最大の問題点である「相手がしっかり日本を研究してきた際の対策」を求められる局面。伊東純也も堂安も(さらに途中投入の三笘も)しっかりケアされており、非常に苦しい展開でした。
 そんな状況でも、前半にこれまた苦手のセットプレーから、前田大然の先制点を奪う日本。逆にこの想定外の展開も、日本のゲームプランに更なる迷いを生じさせたのかもしれません。ビハインドを負った状況で攻勢に転じる、というここまでの勝利パターンに比べれば、ナイーヴな試合運びが求められます。選手達は、前回大会のベルギー戦の結末である“ロストフの悲劇”(0-2から逆転負け)も頭をよぎった事でしょう。
 圧倒的な高さとフィジカルで、徐々に日本を押し込み始めるクロアチアペリシッチの同点ゴール後は、ほぼ一方的な展開だったように思います。やはりモドリッチ、コヴァチッチ、ペリシッチペトコヴィッチといった選手は試合を通して脅威でした。
 選手交替プランが狂った日本に対し、延長戦に次々とFWを送り込んだクロアチア。思えば、これもPK戦への布石でした。この時点で勝負あり、だったのかもしれません。
 PK戦に関しては、運というより場数、経験としか言いようがありません。それも選手個人のものというよりは、チームとしての成功体験です。それは日本にとって全く不足しているもの。個人的には、延長で勝負を決められなかった時点でもうこの結果を予想していました。
 相手GKリヴァコヴィッチも含め、クロアチアPK戦に突入した時点で勝利を確信していた事でしょう。それは、前回大会で積み上げた経験の上に成り立っている自信だと思います。

 今大会の日本は、今までの出場大会で最もベスト8に近付いたチームだと思います。もう少しで乗り越えられた壁、しかしやはりそこを越えるにはまだまだ経験が足りなかったというのが率直な感想です。非常に残念ですが、そう納得せざるを得ない強さがクロアチアにはありました。

 

 モロッコ vs スペイン 0-0 (PK 3-0)
 ラウンド16最大の衝撃。完全にホームと化したスタジアムの大声援をバックに、モロッコPK戦でスペインに勝利。世界に衝撃を与えました。
 いつも通り、一方的にポゼッションを握ったスペインですが、モロッコのアグレッシブな守りに大苦戦。日本の素人サッカーファンに言われたくはないでしょうが、スペインには変化が足りないように思いました。昨年の五輪でわかるように、全員が飛び抜けた巧さを持っているのはわかるのですが…。
 例えば、ジエゴ・コスタのようなパワーのあるFWで攻めたり、イニエスタやシャビのようなチェンジ・オブ・ペースの出来る選手が足りなかったように思います。
 時折、躍動感溢れるカウンターを仕掛けていたモロッコはいつ得点を奪ってもおかしくありませんでした。試合を支配していたのはスペインかもしれませんが、サッカーに判定制度があるならば殆どの採点員がモロッコに旗を挙げると思います。
 一見モロッコが起こした番狂わせに見えますが、実は必然の勝利でした。
 それにしても、PK戦にて3人連続で止められたスペインはとても他人事には見えませんでした。タイムスリップして、前日と同じ試合を見せられているのかと思ったくらい。奇しくも、グループE突破国は連日のPK戦敗退を喫した事になります。

 

 クロアチア vs ブラジル 1-1 (PK 4-2)
 ここから準々決勝。所用をこなしながら、横目で観戦…したのですが、延長戦はもうそれどころではなくなりました。ディス・イズ・フットボール
 ブラジル相手にも、対日本戦のような試合運びを繰り広げるクロアチア。相手はネイマールを擁するサッカー王国、ボールを支配される事など想定済みでしょう。
 攻めるブラジル、粘り強く耐えるクロアチア。それが決壊したのは延長後半。ここまでスコアレスで凌いできたクロアチアのゴールを、ブラジルの象徴たるネイマールが遂に打ち破ります。
 ここまで攻め手がなかったクロアチアは、もはや反撃の手段は残されていないだろう。これで試合も決まりだ…誰もがそう思った延長後半終盤、何とクロアチアがまさかのカウンターからペトコヴィッチのゴール。まるで魔法のように繋がった流れに、クロアチアの不屈の精神を見せ付けられました。
 日本戦同様、PK戦に突入した時点でもう勝負あり。相手が王国だろうがどこだろうが、最後はクロアチアが勝つ。極上のドラマを観させてもらいました。
 全員が一致団結して守り、相手より走る。そして数少ないチャンスを活かしてゴールを決め、前評判を覆す…私が好きなチームの典型を挙げるとこうなるのですが、このクロアチアはまさにそういった集団でした。
 30代後半なのに、2試合連続でPK戦のキッカーまで務めたモドリッチ、天晴れ。2006年大会からフィールドプレーヤーとして君臨し続けているという事実が、いかにこの選手が特別であるかを示していると思います。凄いとしか言いようがない。

 

 モロッコ vs ポルトガル 1-0
 そして、この試合もまたフットボールの象徴的な試合。先制点を守り切ったモロッコが、2試合連続の快挙でアフリカ勢初のベスト4に進出。
 攻めるポルトガル、守るモロッコという図式は誰もが予想した通りだと思いますが、スペイン戦同様にモロッコの躍動感が凄まじい。守りの時間は確かに長いのですが、決定的なチャンスの数は明らかにモロッコの方が多かったのではないかと思います。
 クリスティアーノ・ロナウドをスタメンから外し、フレッシュな面子で臨んだポルトガルですが、最後までモロッコの精力的な動きの前に沈黙。
 そのCR7も後半から登場しましたが、決定的チャンスを活かせません。4年前の彼ならば、そのうちの1つくらいは決めていたのでしょうか? 試合後の涙は、2004年のEUROで彼を知った人間としても切ない気分になりました。今はなき千歳烏山のサッカーショップで、同店の店長や店員の方とこの大会について話し込んだ事を思い出します。
 それにしても、このモロッコを止めるチームはあるのでしょうか? 確かにイニシアティヴを握って勝つチームではないですが、そう簡単に負けるイメージが沸かない。それこそ、2004年EUROのギリシャのように優勝すら有り得るのではないか…それがこの時点で抱いた印象でした。
 スペインとポルトガルイベリア半島の代表チームを制した事で、ウマイア朝の話題を出す人もいるようです。

 果たして、次回大会以降に両国のレコンキスタはあるのか。世界史から見るワールドカップも、これまた一興。

Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.2

 カタール vs セネガル 1-3

 開催国カタールの2戦目。だが、進境著しいセネガルとはかなり差がある印象。
 セネガルは前半終了間際、後半開始早々と理想的な時間にそれぞれゴールを挙げ、万全の試合運び。カタールムンタリ(元ACミラン所属のガーナ代表選手を思い起こさせる名)のゴールで一矢報いるも、その数分後に追加点を奪われ万事休す。
 カタールも得点後はボールを支配して攻め、追い上げムードが漂ったのだが、チェルシー所属の守護神、エドゥアルド・メンディが好セーブ連発でシャットアウト。本当に素晴らしい選手である。
 カタールにとっては、この試合のゴールが日本における中山雅史の日本初得点のように今後も歴史に刻まれていくだろう。初出場なのだから、ここから経験を積んでいけば良い。だが、ホスト国としては物足りない結果だった。

 

 日本 vs コスタリカ 0-1
 ドイツ戦にまさかの勝利を挙げ、世界に衝撃を与えた日本。早々とノックアウト・ラウンド出場を決定させるため、必勝の想いで試合に臨む。
 だが、本来ならばドイツ、スペインとはタイプの違う難敵として想定されていた相手。ここで勝ち点3を獲らなければグループステージの戦いはままならないとはいえ、国内の楽勝ムードが気にかかった。そして、残念ながらそれは選手にも伝播しているようにも感じられてしまった。
 上田綺世、相馬など東京五輪世代のフレッシュな選手を起用し、ターンオーバーしたメンバーで試合開始を迎えた日本だが、守備を固めるコスタリカを崩せない。
 初戦で0-7という惨敗を喫しているにも関わらず、あくまで自陣に引いた戦いを繰り広げるコスタリカ。さすがにこれは想定外だった。前線の中央でボールを受けようとする上田や鎌田は力強い守りの前に潰され、攻撃の糸口さえ見えない日本。
 スペースを完全に消されているために、三笘を投入しても彼のドリブルをなかなか活かせない。漫然と時間を過ごした末、守備陣にミスが重なってあえなく失点。そこから守備をこじ開ける力は残っていなかった。

 相手の引いた守りを崩せない。これは森保ジャパンの課題として常々指摘されてきた事だが、世界の舞台でそれが露呈してしまった。初戦で見違えるような采配を見せた森保監督だが、相手に研究された際にそれを覆すプランBを持たないという課題もそのまま。
 試合開催されたのは日本における日曜日、キックオフの時間はゴールデンタイム。ドイツ戦で興味を持った日本の視聴者が関心を持ってTVやモニターの前に集まったはず。それでこの結果である。試合内容も、延々と拙攻を繰り返す退屈なものであり、この試合が今大会における最高視聴率を獲得した(日本がベスト4以上に進出しない限り更新されないだろう)というのは何とも皮肉な話だ。私など、久し振りに実家で家族4人(+1人)でこのしょっぱい試合を観る羽目になった。
 前半は相手の守備にシュートすら打てず、後半にチャンスを迎えるもそれを活かせない。そしてミス絡みのカウンターで失点し、反撃するも時既に遅し…森保ジャパンというより、週末のフクダ電子アリーナで幾度となく見せられてきた試合内容である。注目を集めた試合で負ける点も含め、あまりにも日常的な風景がそこに広がっていた。嘆息するほかない。

 

 ポルトガル vs ウルグアイ 2-0
 試合展開に関しては互角だった印象だが、ブルーノ・フェルナンデスのクロスがそのままゴールに入った事で勝負の綾を感じた(クリスティアーノ・ロナウドのゴールかと思われたが、彼の頭には触れておらず)。そのままフェルナンデスが終了間際に自ら得たPKを決め、勝負あり。
 圧倒的なストロングポイントが目立つというよりは、攻守に安定して芯の通ったサッカーという印象のポルトガル。この国は、こういう地味な試合をしている時は強い印象がある。
 対するウルグアイは2試合連続ノーゴールと重症。スパーズのロドリゴ・ベンタンクールの攻守に渡る活躍には目を見張るものがあったが、決定機を全て相手GKディオゴ・コスタのファインセーブに止められてしまった。

 

 ウェールズ vs イングランド 0-3
 ワールドカップで初めて実現したカード。余裕の構えのイングランドに対し、ウェールズは勝利が絶対条件。
 前半は粘るウェールズだが、後半から大黒柱のベイルを下げる奇策。直後にラッシュフォードの凄まじいFKを決められ失点すると、あとはフォーデン、再びラッシュフォードと決められて敗退が決定。さすがにラムジーだけではどうにもならない。
 そして、かつてないほど安定した戦いぶりを見せるイングランド。グループステージを首位通過とは、もはや強豪国の風格がある。果たして、どこまで勝ち上がる事が出来るのか。

 

 ポーランド vs アルゼンチン 0-2
 サウジ戦にまさかの敗戦を喫し、グループステージ突破に黄信号が灯ったアルゼンチン。一方、既に勝ち点4を挙げて有利な状況のポーランド
 試合は激しい出足でボールを支配したアルゼンチンが、ほぼ試合通して攻め続けた。メッシは勿論、マック・アリスター(特徴的な姓は先祖がアイルランド移民だからだとか)、アルバレス、デ・パウルといった新星が素晴らしい働き。
 対するポーランドは防戦一方。何とか絶対的ストライカーであるレヴァンドフスキにボールを供給したいが、彼の元にやって来るのはクリア紛いのアバウトなボールだけ。大砲も弾を込められなければただの筒である。
 GKシュチェスニーの数々のセーブ、そしてPKストップなどで何とか2失点に抑えたポーランドは、勝ち点・得失点差で並んだメキシコをフェアプレー・ポイントで上回り、何とかノックアウト・ラウンドに進出した。
 2大会連続でフェアプレー・ポイントによる駆け引きに立ち会ったポーランド。前回は対する日本に配慮する傍観者だったが、今回は自分達が当事者となってしまった。
 日本の時間稼ぎのパス回しに付き合い、攻める意思をセーブした前回大会の彼らだったが、今回は終盤までアルゼンチンが3点目を獲ろうと攻める気満々。前回俺らは空気読んだんだから少しは忖度してくれよ、と言いたくなったに違いない。

 

 サウジアラビア vs メキシコ 1-2
 そして、そのフェアプレー・ポイントに泣いたメキシコ。急いで移動してタイムアップの瞬間だけ観る。
 7大会連続で16強に進出し続けてきた彼らの偉大な記録は、ここで止まった。これも歴史の一幕だ。
 アルゼンチンに劇的勝利を挙げて大会を盛り上げたサウジの旅もここで終了。だが、終了間際にアルドサリがゴールを挙げ、意地は見せた。

 

 日本 vs スペイン 2-1
 私が想定する、相当な幸運がなければ勝てない相手。それは、ブラジル、フランス、ドイツ、そしてこのスペインだ。
 しかしドイツには勝利した。ならばスペインも…と思いたいが、コスタリカを0-7で蹂躙する試合を見せつけられては、なかなかそんな気にもなれない。元々は3連敗予想だったのだから、この時点ででGS突破の可能性が残っているだけでも上出来なのではないか…とも思うが、ここまで来たら何としても勝ち残ってほしい気持ちが強かった。
 試合は予想通り、圧倒的にボールを支配される展開。モラタの先制点は回線の不良で観られなかったが、繋ぐ技術に消耗させられたという展開は前半の終了間際だけでも観ていればわかった。
 後半から、三笘・堂安の投入で勝負に出る日本。まさか、まさかである。このシフトチェンジは、この試合でも見事に成功してしまうのだ。
 迷いなく振り抜いた堂安の同点ゴール。そして、「三笘の1mm」として話題になったライン際のクロスから、田中碧の逆転ゴール。流れを一気に掴んだ日本があっという間に2ゴールを奪い、逆転勝利を奪った。

 ドイツ戦同様、信じられない結果であるが、試合展開としてはドイツより与しやすかった印象だ。東京五輪組のインタビューではスペインを警戒する発言が目立ち、「非常に嫌な相手」と認識しているように感じられたので、ここまで自信を持って試合を進めた事には非常に驚いた。
 それにしてもスペインである。前線に簡単にボールを蹴ったりせず、とにかくGKやDFからボールを繋いで攻めていく。堂安の同点ゴールも、元々はGKウナイ・シモンにかけたプレスがきっかけになっている。これが彼ら流のサッカーであり、トラッドなのだろう。
 こういうきっちりスタイルを持っているチームには、プレスをはめる技術があるし、試合を引っくり返すだけの選手も揃っている。日本は、そういった国ならばどんな強豪でも伍して戦えるようになった。Jリーグ誕生から30年、遂にここまで来たのだ。1993年のドーハから日本代表を見守ってきた人間としては、非常に感慨深い。
 さて、そうなると次なる課題が待っている。テクニックでプレスを剥がせる相手、しっかりと対策を取って引いてくる相手、変則的なサッカーで試合中でもやり方を変えてくる老獪な相手、そんな国にはどう勝てば良いのか。次のクロアチア戦が、早速その試験の場となりそうだ。難問を見事パスし、新たな領域へと辿り着いてほしい。

 

 セルビア vs スイス 2-3

 ブラジルvsカメルーンではなく、あえてこちらを選択。前半からゴールの奪い合いとなり、楽しい試合展開となった。勿論、日本がGS突破を決めたからこそ気楽に観られる試合になったのである。
 ミトロヴィッチ、ヴラホヴィッチの連続ゴールで逆転したセルビア。守備を崩しきっていないのに決めてしまうストロング・スタイル。猪木イズムを継承したかのような終盤の肉弾戦も含め、フィジカルに優れたサッカーをしている。「東欧のブラジル」の通り名はどこへやら。
 だが、トータルで見るとスイスの方がバランスで優れていた。彼らの勝利は妥当な結果だろう。
 それにしても乱闘紛いの衝突が多く、試合が何度も止まったのには閉口した。次ラウンド進出のかかった試合で緊張感も高かったのだろうが、それがボールではなく相手への不満に向かってしまった印象。退場者が出てもおかしくなかった。そんなところまで猪木イズムを受け継がなくともよろしい。
 それでいて、試合後には和やかにピッチ上で会話をする両チームの選手達。オンとオフの切り替えが激しく、困惑する。普段から欧州各国のリーグで顔を合わせているからなのだろう。遺恨が残らないのは結構な事だと思う。

Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.1

 いよいよ、2022年ワールドカップカタール大会がスタート。しかも今回はAbemaが全試合を無料配信してくれるという事で、試合中継もこれまでとは全く違う次元へと突入しました。
 年末に向け、ブログ記事の題材にも困っていた矢先の出来事。まさに朗報であり、今年いっぱいはAbema関係者各位の英断に心から感謝を捧げながら、インターネット観戦した試合の感想を簡単に記していく予定。
 初めてTV観戦した1998年フランス大会から、いよいよここまできたかという感慨があります。リアルタイムで初めて関心を持ったのは1994年USA大会でしたが、この時は試合開始時刻や視聴環境の都合もあり、登校前に慌ただしく決勝戦PK戦だけを観た程度です(ロベルト・バッジオの失敗の瞬間だけは見届けた)。
 TV中継からネット配信へ、この転換期に我々は立ち会っているのかもしれません。

 

 

 カタール vs エクアドル 0-2
 大会を占う重要な開幕戦。まずは開催国であるカタールが登場。
 2019年アジアカップ決勝では、徹底的に対戦相手である日本を研究。FWの軸である大迫を完全に封じ、電撃的なサッカーで3-1の勝利を収めたカタール
 ワールドカップに向けた国家的プロジェクト「アスパイア・アカデミー」を設立し、スペインのメソッドを用いた世界最先端の育成組織でアジアのサッカーに革命を起こすのではないか…当時はそのような報道が目立ちました。私自身、あれほど完成度の高いチームに破れた本邦代表チームの不甲斐なさを考えると、その報道を鵜呑みにせざるを得なかった覚えがあります。
 しかし、この試合ではあのコレテクティブなサッカーは見る影もなく、終始エクアドル横綱相撲。2得点を挙げたエネル・バレンシアの偉大さばかりが目立ち、カタールの攻撃は単発的な個人技のみ。
 カタールは2019年にピーキングを持ってきてしまった、というネット上の意見も、さもありなん。開催国特権での大会初出場、加えて開催におけるプロジェクトの中で多々発覚した人権問題という事実の数々で風当たりが強い中、観客は後半途中には続々帰り始める始末でホスト国の面目は丸潰れ。

 たかだか2点ビハインドで帰ってしまうのか? こんな試合展開、私は幾度となく蘇我の球技場で観てきたのに…あまりにナイーブすぎるのでは。
 チームとしても文化としても、ワールドカップ開催は時期尚早だったのではないでしょうか。1997年、開催国初出場という汚名を避けるためにジョホールバルで死に物狂いで戦った男達を見てきた私としては、そう思ってしまうのが正直なところ。

 

 イングランド vs イラン 6-2
 こちらも同じく、2019年アジアカップ準決勝で対戦したイランが登場。だが、フットボールの母国に力の差を見せつけられる事となりました。
 日本の南野、室屋相手に大立ち回り(乱闘という意味で)を見せたエースのアズムンはベンチスタート。にほんっでもお馴染みのカルロス・ケイロス監督は当然対策を練って臨んだのでしょうが、若い選手が躍動するイングランドを抑えられない。2ゴールは挙げたものの、内容的には完敗でした。
  そしてイングランドの充実ぶり。サカ、スターリング、ベりンガムといった若手選手の輝きが眩しい。勿論、前回大会得点王の大エースであるハリー・ケインもいるわけで、ベッカムオーウェンの時代より遥かに優勝への現実味があります。


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 もしかすると、本当にFootball's comin' homeしてしまうのかもしれない…それほど期待を持たせる内容でした。

 

 USA vs ウェールズ 1-1
 ウェールズ、ワールドカップの舞台に復帰。前回の出場は1958年、The Beatlesすら結成されていない時代です。この年の2月、前身バンドであるThe Quarry Menにようやくジョージが加入した頃。西暦で歴史の一コマとしてさらりと言ってしまう事に、少々躊躇いがあるほど昔の話。
 ウェールズは2016年EUROの躍進がとにかく印象的で、攻撃はギャレス・ベイルアーロン・ラムジーの2人に託し、残りの選手でパワフルに守るというサッカーをしており、強豪国をどんどんカウンターで沈めていました。個人的に、こういう頑張って大物食いをするチームは大好きなのです。
 試合自体は終盤を観戦したのみ。近年のワールドカップでは常に一定の結果を残し、ペリシッチやウェア(“リベリアの怪人”ジョージ・ウェアの息子)など世界レベルのタレントも揃えているUSAが、試合の長い時間をウェアのゴールでリードしたまま時間を進めていました。
 だが、終了間際に自ら得たPKをギャレス・ベイルが決めて同点。少々キックが強すぎたように思えて冷や冷やしましたが、あの速度でないと相手GKに止められていたでしょう。千両役者はワールドカップでも結果を出して見せました。

 

 アルゼンチン vs サウジアラビア 1-2
 メッシ、最後のワールドカップ。並々ならぬ覚悟で臨むアルゼンチン相手に、半ばホームのような状態で挑むサウジアラビア
 ここまで2連敗のアジア代表。この試合もメッシのPKで先制され、このまま力負けしてしまうのだろう…殆どの人がそう思っていたはず。
 しかし、後半から息を吹き返したサウジアラビア。鋭い出足で攻守にアルゼンチンを圧倒し始め、電光石火の2ゴールでまさかの逆転に成功。特にアルドサリの強烈な一撃は、ワールドカップ史上に残りそうなスーパーゴール。
 異様なムードのスタジアムで、優勝候補の猛攻を(お馴染みの時間稼ぎも使いながら)凌ぎきったサウジがまさかの番狂わせ。世界に衝撃を与えました。
 あのアルゼンチン相手に、ハイライン・ハイプレスで守備を仕掛け、超コンパクトな中盤でスペースを徹底的に消す。DFラインの裏はGKがペナルティエリアを飛び出してカバーし、時には前線へと直接パスを供給…ジェフユナイテッド市原・千葉エスナイデル監督がやりたかったのは、まさにこういうサッカーだったのではないでしょうか。GKアルオワイスの動きに、佐藤優也を思い起こしたジェフサポーターは私だけではないはず。
 破滅的な内容で壊滅したジェフと違い、メッシ率いる攻撃陣にこれを仕掛けて成功させてしまうサウジアラビア。高いラインは、今大会から導入されたAIによる高精度のオフサイド判定テクノロジーを前提としている、という意見もあり、美男としても有名なルナール監督の強心臓ぶり、理論派ぶりには脱帽。これぞ、ワールドカップらしい戦術の更新。そしてフットボールの醍醐味。
 日本と同じくアジア最終予選グループBを突破した国の躍進に、是非翌日の本邦代表チームも続きたいところでしたが…。

 

 ドイツ vs 日本 1-2
 そして、本当にサウジに続いてしまった。アジアが苦戦する大会を予感させた序盤を振り払うかのような、連日のアップセット。
 大会前、様々なサッカー動画で識者の分析を見ましたが、考えれば考えるほどドイツ(とスペイン)に勝てる要素が見つかりませんでした。世界でも先端の育成を行っているドイツは日本相手にも本気で、試合だけでなくYouTubeの動画までチェックしている、大学に戦術分析の大規模なチームがあってそこには日本人もいる…という情報が次々に入ってくるにつれ、とても勝ち目がないと考えてしまうのは自然な流れでした。
 事実、試合は序盤からドイツの猛攻に次ぐ猛攻。ギュンドアンミュラーが攻守に渡って日本に脅威を与え続け、ムシアラがテクニックでDFを切り裂く。よくPK1本で失点を凌げたものだと思います。しかし、前半を1失点で乗り切った事が、後半の一大反抗作戦へと直結する事になりました。
 後半開始から、森保監督は次々に攻撃的な選手を投入。3バックに変更し、攻撃的な三笘と伊藤純也をウイングバックにして守備も行わせるという捨て身の布陣。これが奏効しました。
 堂安、浅野のゴールであっという間に逆転すると、あとはDF陣が粘りきってタイムアップ。特筆すべきは権田のセービングで、この試合のMan of the matchに選出されるのも当然の神がかったものでした。

 相手の戦術変更に対応する事が出来ず、杓子定規に決めたことをとにかくやり続ける。あとは選手任せ…これがこの4年間の森保ジャパンに対する印象でしたが、まさか本番でこんなギャンブルを行ってくるとは思いませんでした。
 ドイツに勝利。アジア予選で苦戦し、ジャマイカに蹴落とされ、ブラジルやコロンビアに遊びのプレーをされながら惨敗する…そんな時代を知っている人間からすれば、この重みは勝ち点3を遥かに越えるものがあります。
 とにかく信じられない勝利ですが、こういう事があるからサッカーは面白い。今まで散々日本代表や贔屓クラブに文句を言ってきた私ですが、全く飽きずに追いかけ続けているのはこういう試合があるからこそです。

 

 スペイン vs コスタリカ 7-0
 そんな歴史的勝利の余韻を一瞬で吹き飛ばす、2010年世界チャンピオンの圧倒的な試合。一気に現実に引き戻されました。
 精密機械のようなパスワークと、突然訪れるリズムの変化。「スペインは日本の上位互換」などと簡単にネット上では囁かれていますが、ともかく完成度があまりに違いすぎるというのがこの試合の印象です。
 世界的GKナバスを擁し、引いて守るコスタリカを容易く崩していく。思わず「もう勘弁してやってくれ」と言いたくなってしまう7ゴール、まさに圧巻。さすがにやりすぎだろうとすら思いましたが、結果としてスペインにとってこの得失点差は非常に重要になりました。
 元々日本はスペインには分が悪いと思っていましたが、この試合で更にそれが実感に変わりました。とてもでないがこれは歯が立たない、コスタリカ戦の勝利は必須だ…そう思ったのは、私だけではないと思います。

 

 ウルグアイ vs 韓国 0-0
 アディショナルタイムだけでも観ようと思ってアクセスしたら、繋がった瞬間終わってしまった試合。Jリーグ経験者+ソン・フンミンといったスカッドである韓国の初戦はスコアレス・ドロー。ウルグアイ相手によくやったという印象です。
 ソンがしっかり大会に間に合った事が、この後しっかり効いてきた韓国。逆に、ウルグアイはこの試合でノーゴールに終わった事が大きく影響する事となります。

 

 ポルトガル vs ガーナ 3-2
 メッシ同様、最後の大会になると予想されるクリスティアーノ・ロナウド。無所属で臨む今回、マンチェスター・ユナイテッドでそうだったように問題を起こさないかが焦点。
 しかし、しっかりと自ら得たPKで先制するのはさすが。あきらかにもらいにいった感じのファウルでしたが、それでも5大会連続ゴールの偉業には変わりません。
 ジョアン・フェリックスやラファエル・レオンなど、しっかり育っている若手のゴールで勝利はしたポルトガルですが、DFの人数が揃っているのにあっさり決められるなど、ガーナに付き合ってしまった感もあります。
 クリスティアーノ・ロナウドは、自分のゴールにだけこだわるプレーをするのではないかと予想していましたが、少なくともこの試合ではそれほどエゴイスティックではなかったですね。

 

 ウェールズ vs イラン 0-2
 試合を観始めたのは終了間際。しかし、私が観始めた時間から激しく動く展開となりました。
 GKヘネシーが退場したのが86分。観戦を始めたのはその後イランが攻めあぐねている最中でしたが、アディショナルタイム、遂にイランがウェールズのゴールをこじ開け、更に前がかりになったウェールズの守備を突いて追加点。番狂わせとまではいきませんが、劇的勝利でサウジ、日本に続きました。
 ウェールズはベイルもラムジーも沈黙。僅かな可能性にかけ、イングランドとの英国対決へと臨む事になりました。