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Abemaに心から感謝 2022ワールドカップ観戦記 Vol.1

 いよいよ、2022年ワールドカップカタール大会がスタート。しかも今回はAbemaが全試合を無料配信してくれるという事で、試合中継もこれまでとは全く違う次元へと突入しました。
 年末に向け、ブログ記事の題材にも困っていた矢先の出来事。まさに朗報であり、今年いっぱいはAbema関係者各位の英断に心から感謝を捧げながら、インターネット観戦した試合の感想を簡単に記していく予定。
 初めてTV観戦した1998年フランス大会から、いよいよここまできたかという感慨があります。リアルタイムで初めて関心を持ったのは1994年USA大会でしたが、この時は試合開始時刻や視聴環境の都合もあり、登校前に慌ただしく決勝戦PK戦だけを観た程度です(ロベルト・バッジオの失敗の瞬間だけは見届けた)。
 TV中継からネット配信へ、この転換期に我々は立ち会っているのかもしれません。

 

 

 カタール vs エクアドル 0-2
 大会を占う重要な開幕戦。まずは開催国であるカタールが登場。
 2019年アジアカップ決勝では、徹底的に対戦相手である日本を研究。FWの軸である大迫を完全に封じ、電撃的なサッカーで3-1の勝利を収めたカタール
 ワールドカップに向けた国家的プロジェクト「アスパイア・アカデミー」を設立し、スペインのメソッドを用いた世界最先端の育成組織でアジアのサッカーに革命を起こすのではないか…当時はそのような報道が目立ちました。私自身、あれほど完成度の高いチームに破れた本邦代表チームの不甲斐なさを考えると、その報道を鵜呑みにせざるを得なかった覚えがあります。
 しかし、この試合ではあのコレテクティブなサッカーは見る影もなく、終始エクアドル横綱相撲。2得点を挙げたエネル・バレンシアの偉大さばかりが目立ち、カタールの攻撃は単発的な個人技のみ。
 カタールは2019年にピーキングを持ってきてしまった、というネット上の意見も、さもありなん。開催国特権での大会初出場、加えて開催におけるプロジェクトの中で多々発覚した人権問題という事実の数々で風当たりが強い中、観客は後半途中には続々帰り始める始末でホスト国の面目は丸潰れ。

 たかだか2点ビハインドで帰ってしまうのか? こんな試合展開、私は幾度となく蘇我の球技場で観てきたのに…あまりにナイーブすぎるのでは。
 チームとしても文化としても、ワールドカップ開催は時期尚早だったのではないでしょうか。1997年、開催国初出場という汚名を避けるためにジョホールバルで死に物狂いで戦った男達を見てきた私としては、そう思ってしまうのが正直なところ。

 

 イングランド vs イラン 6-2
 こちらも同じく、2019年アジアカップ準決勝で対戦したイランが登場。だが、フットボールの母国に力の差を見せつけられる事となりました。
 日本の南野、室屋相手に大立ち回り(乱闘という意味で)を見せたエースのアズムンはベンチスタート。にほんっでもお馴染みのカルロス・ケイロス監督は当然対策を練って臨んだのでしょうが、若い選手が躍動するイングランドを抑えられない。2ゴールは挙げたものの、内容的には完敗でした。
  そしてイングランドの充実ぶり。サカ、スターリング、ベりンガムといった若手選手の輝きが眩しい。勿論、前回大会得点王の大エースであるハリー・ケインもいるわけで、ベッカムオーウェンの時代より遥かに優勝への現実味があります。


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 もしかすると、本当にFootball's comin' homeしてしまうのかもしれない…それほど期待を持たせる内容でした。

 

 USA vs ウェールズ 1-1
 ウェールズ、ワールドカップの舞台に復帰。前回の出場は1958年、The Beatlesすら結成されていない時代です。この年の2月、前身バンドであるThe Quarry Menにようやくジョージが加入した頃。西暦で歴史の一コマとしてさらりと言ってしまう事に、少々躊躇いがあるほど昔の話。
 ウェールズは2016年EUROの躍進がとにかく印象的で、攻撃はギャレス・ベイルアーロン・ラムジーの2人に託し、残りの選手でパワフルに守るというサッカーをしており、強豪国をどんどんカウンターで沈めていました。個人的に、こういう頑張って大物食いをするチームは大好きなのです。
 試合自体は終盤を観戦したのみ。近年のワールドカップでは常に一定の結果を残し、ペリシッチやウェア(“リベリアの怪人”ジョージ・ウェアの息子)など世界レベルのタレントも揃えているUSAが、試合の長い時間をウェアのゴールでリードしたまま時間を進めていました。
 だが、終了間際に自ら得たPKをギャレス・ベイルが決めて同点。少々キックが強すぎたように思えて冷や冷やしましたが、あの速度でないと相手GKに止められていたでしょう。千両役者はワールドカップでも結果を出して見せました。

 

 アルゼンチン vs サウジアラビア 1-2
 メッシ、最後のワールドカップ。並々ならぬ覚悟で臨むアルゼンチン相手に、半ばホームのような状態で挑むサウジアラビア
 ここまで2連敗のアジア代表。この試合もメッシのPKで先制され、このまま力負けしてしまうのだろう…殆どの人がそう思っていたはず。
 しかし、後半から息を吹き返したサウジアラビア。鋭い出足で攻守にアルゼンチンを圧倒し始め、電光石火の2ゴールでまさかの逆転に成功。特にアルドサリの強烈な一撃は、ワールドカップ史上に残りそうなスーパーゴール。
 異様なムードのスタジアムで、優勝候補の猛攻を(お馴染みの時間稼ぎも使いながら)凌ぎきったサウジがまさかの番狂わせ。世界に衝撃を与えました。
 あのアルゼンチン相手に、ハイライン・ハイプレスで守備を仕掛け、超コンパクトな中盤でスペースを徹底的に消す。DFラインの裏はGKがペナルティエリアを飛び出してカバーし、時には前線へと直接パスを供給…ジェフユナイテッド市原・千葉エスナイデル監督がやりたかったのは、まさにこういうサッカーだったのではないでしょうか。GKアルオワイスの動きに、佐藤優也を思い起こしたジェフサポーターは私だけではないはず。
 破滅的な内容で壊滅したジェフと違い、メッシ率いる攻撃陣にこれを仕掛けて成功させてしまうサウジアラビア。高いラインは、今大会から導入されたAIによる高精度のオフサイド判定テクノロジーを前提としている、という意見もあり、美男としても有名なルナール監督の強心臓ぶり、理論派ぶりには脱帽。これぞ、ワールドカップらしい戦術の更新。そしてフットボールの醍醐味。
 日本と同じくアジア最終予選グループBを突破した国の躍進に、是非翌日の本邦代表チームも続きたいところでしたが…。

 

 ドイツ vs 日本 1-2
 そして、本当にサウジに続いてしまった。アジアが苦戦する大会を予感させた序盤を振り払うかのような、連日のアップセット。
 大会前、様々なサッカー動画で識者の分析を見ましたが、考えれば考えるほどドイツ(とスペイン)に勝てる要素が見つかりませんでした。世界でも先端の育成を行っているドイツは日本相手にも本気で、試合だけでなくYouTubeの動画までチェックしている、大学に戦術分析の大規模なチームがあってそこには日本人もいる…という情報が次々に入ってくるにつれ、とても勝ち目がないと考えてしまうのは自然な流れでした。
 事実、試合は序盤からドイツの猛攻に次ぐ猛攻。ギュンドアンミュラーが攻守に渡って日本に脅威を与え続け、ムシアラがテクニックでDFを切り裂く。よくPK1本で失点を凌げたものだと思います。しかし、前半を1失点で乗り切った事が、後半の一大反抗作戦へと直結する事になりました。
 後半開始から、森保監督は次々に攻撃的な選手を投入。3バックに変更し、攻撃的な三笘と伊藤純也をウイングバックにして守備も行わせるという捨て身の布陣。これが奏効しました。
 堂安、浅野のゴールであっという間に逆転すると、あとはDF陣が粘りきってタイムアップ。特筆すべきは権田のセービングで、この試合のMan of the matchに選出されるのも当然の神がかったものでした。

 相手の戦術変更に対応する事が出来ず、杓子定規に決めたことをとにかくやり続ける。あとは選手任せ…これがこの4年間の森保ジャパンに対する印象でしたが、まさか本番でこんなギャンブルを行ってくるとは思いませんでした。
 ドイツに勝利。アジア予選で苦戦し、ジャマイカに蹴落とされ、ブラジルやコロンビアに遊びのプレーをされながら惨敗する…そんな時代を知っている人間からすれば、この重みは勝ち点3を遥かに越えるものがあります。
 とにかく信じられない勝利ですが、こういう事があるからサッカーは面白い。今まで散々日本代表や贔屓クラブに文句を言ってきた私ですが、全く飽きずに追いかけ続けているのはこういう試合があるからこそです。

 

 スペイン vs コスタリカ 7-0
 そんな歴史的勝利の余韻を一瞬で吹き飛ばす、2010年世界チャンピオンの圧倒的な試合。一気に現実に引き戻されました。
 精密機械のようなパスワークと、突然訪れるリズムの変化。「スペインは日本の上位互換」などと簡単にネット上では囁かれていますが、ともかく完成度があまりに違いすぎるというのがこの試合の印象です。
 世界的GKナバスを擁し、引いて守るコスタリカを容易く崩していく。思わず「もう勘弁してやってくれ」と言いたくなってしまう7ゴール、まさに圧巻。さすがにやりすぎだろうとすら思いましたが、結果としてスペインにとってこの得失点差は非常に重要になりました。
 元々日本はスペインには分が悪いと思っていましたが、この試合で更にそれが実感に変わりました。とてもでないがこれは歯が立たない、コスタリカ戦の勝利は必須だ…そう思ったのは、私だけではないと思います。

 

 ウルグアイ vs 韓国 0-0
 アディショナルタイムだけでも観ようと思ってアクセスしたら、繋がった瞬間終わってしまった試合。Jリーグ経験者+ソン・フンミンといったスカッドである韓国の初戦はスコアレス・ドロー。ウルグアイ相手によくやったという印象です。
 ソンがしっかり大会に間に合った事が、この後しっかり効いてきた韓国。逆に、ウルグアイはこの試合でノーゴールに終わった事が大きく影響する事となります。

 

 ポルトガル vs ガーナ 3-2
 メッシ同様、最後の大会になると予想されるクリスティアーノ・ロナウド。無所属で臨む今回、マンチェスター・ユナイテッドでそうだったように問題を起こさないかが焦点。
 しかし、しっかりと自ら得たPKで先制するのはさすが。あきらかにもらいにいった感じのファウルでしたが、それでも5大会連続ゴールの偉業には変わりません。
 ジョアン・フェリックスやラファエル・レオンなど、しっかり育っている若手のゴールで勝利はしたポルトガルですが、DFの人数が揃っているのにあっさり決められるなど、ガーナに付き合ってしまった感もあります。
 クリスティアーノ・ロナウドは、自分のゴールにだけこだわるプレーをするのではないかと予想していましたが、少なくともこの試合ではそれほどエゴイスティックではなかったですね。

 

 ウェールズ vs イラン 0-2
 試合を観始めたのは終了間際。しかし、私が観始めた時間から激しく動く展開となりました。
 GKヘネシーが退場したのが86分。観戦を始めたのはその後イランが攻めあぐねている最中でしたが、アディショナルタイム、遂にイランがウェールズのゴールをこじ開け、更に前がかりになったウェールズの守備を突いて追加点。番狂わせとまではいきませんが、劇的勝利でサウジ、日本に続きました。
 ウェールズはベイルもラムジーも沈黙。僅かな可能性にかけ、イングランドとの英国対決へと臨む事になりました。