(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

So I must be on my way, and face another day

 久し振りに会った友人から、過去に人生の中ですれ違ったことのある人の話を聞いた。曰く、地域の仕事で最近よく顔を合わせる女性が、私の中学時代の部活の先輩とのこと。

 名前を聞いても全く思い当たる節がなく、あれだけ印象的だった部活動の記憶も遠い彼方へと追いやられてしまったのか、と諦めの気持ちと共に話を聞いていたが、彼女自身がインターネット上に公開している写真を見る事により疑念は雲散霧消した。確かに見覚えのある顔である。

 それもそのはず、彼女は既に結婚により姓を変えていたのであった。当然、名前を聞いただけでは誰なのかわかるはずもない。私の1年上という事は既にそれなりの年齢であるという事実を意味しているが、当時の面影を残しており、とてもチャーミングな女性という印象だった。良い年齢の重ね方をしておられるのであろう。

 

 とはいえ、彼女の事はその瞬間まで忘れていたのも事実だ。当然ながら、私の事も彼女は全く覚えていないだろう。当時の吹奏楽部において、私の担当パートはテナー・サックス、彼女はホルン。木管金管という違いは全体合奏練習時しか顔を合わせる機会がないことを意味している。接点自体が殆どなく、恐らく会話すらしたことがないのではないかと思われる。

 当時の私は今ほどひねくれた人間ではなく、同級生とは男女関係なくオープンに会話することのできるパーソナリティーの持ち主だった。

 だが、こと部活となると話は別である。部員の80%を女子生徒が占める吹奏楽部では圧倒的に男子の立場は弱く、対抗するには多勢に無勢である。それでなくとも、中学生など女子の方が圧倒的に大人びているのだから。その上、学年が上の先輩ともなれば猶更言葉を交わすことは困難だった。

 更に、私の2年時において木管パートの男子は私ただ1人。隅っこで縮こまっているしか選択肢がないのである。女子たちの注文に対し、何か言い返せば10倍のパワーでやり込められてしまう。お手上げ状態とはこのことだ。

 勿論、金管パートには女子と真っ向から対立する者も複数おり、それが我が吹奏楽部における男子部員の立場を一層危ういものにしていた。彼らは怠慢に見えてしまう練習態度や、顧問の教師の指揮能力に不満を露わにするという反抗的な態度を取っていた。その件で、何度も部内ミーティングが開かれたことを思い出す。

 私は木管パートの女子が怖いので、一応は真面目に練習に取り組むふりをしていたが、「男子は全員不真面目!」という彼女達のレッテル張りには抗えない。勝手に彼らの仲間としてカウントされていたのは大いに不本意であったが、「でも、西園君だけは真面目に練習してるけど!」とわざわざ私に言及する義理もなかったのだろう。それほど、部内における私の存在感は薄かった。

 そういった不満分子は、2年の文化祭終了と共に退部してしまった記憶がある。実は彼らは私とバンドを組んでいたり、後に組んだりする仲だったのだが、当時のことはあまり語ってくれなかった。

 

 閑話休題。そういったインパクトすら残せず、OBとして卒業後に練習に顔を出すといった行動をするわけもない私が、当然前述の女性の記憶に残っているはずがない。

 彼女について調べてみると、介護の資格を取って実務は勿論、啓蒙活動にも積極的に参加しているらしい。かなりステディに人生を歩んでこられたのであろう。尊敬する。

 個人的には、かつて我が母が出席していたようなフォーラムに、同年代の人が登壇していることに感慨があった。つまり、私もそういう年齢なのだ。

 思えば、私と過去に関わった人は皆何らかの実績を残している。海外での美術展開催、超有名ゲーム作品のプロデュース、パリでの出店、音響会社の商品開発チーフ、アニメ系音楽の有名サークル運営、そして今回の彼女。要は、私が今までの人生の中であまりに何も結果を出せていないだけなのだが。

 改めて、今まで生きてきたことを無駄にしない程度の実績を残したい。そう考える良い機会であった。

 

 それにしても、部活動とは不思議なものだ。あれだけ一つの目標に対し一致団結して取り組んでいたのに、ほんの数年間で散り散りになってしまう。そして、その後の人生を把握している部員の方が稀だ。

 例えば、今まで組んできたバンドなら現在も付き合いのあるメンバーが多いのに、同じ音楽を主題とした活動なのに部活の方はそうもいかない。こうして、誰かから話を聞いてようやく思い出すような人もいる。

 バンドと違って人数が多い上、長くとも3年間しか活動を共にしないのだから当たり前なのだが、こうして立派に頑張っている部活動仲間の話を聞かされると妙に感慨に耽ってしまう。

 当時の演奏風景を捉えた写真を見直したが、名前すら忘れてしまった人が何人かいる。あれから長い年月が経ち、それぞれ様々な人生を送られているのだろう。3年の途中でドロップアウトしてしまった私だが、せめて彼・彼女達と再会した時に胸を張って話すことの出来るような実績を残しておきたいものだ。