ジョージの夏
ジョージの夏といえば、当然ながら『Gone Troppo』でしょう。
- アーティスト: George Harrison
- 出版社/メーカー: Capitol
- 発売日: 2004/02/09
- メディア: CD
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トロピカルで鮮やかな日差しを感じる音、シンセを多用したニューウェーヴへの興味、そしていつも通りの優しいジョージ節。彼のアルバムの中で最低の売り上げを記録してしまった作品ですが、作品の出来にはそんな外的要素は全く関係ありません。これぞジョージ、といった音。
最近妙に愛おしくて仕方ないオープニング・チューン「Wake Up My Love」は、ポップで力強いサウンドが炸裂する「シングル向き」のパワーを持った曲。
個人的には、ダークホース時代の曲では屈指のシングル向きナンバーだと思うのですが、全く売れなかったのが悲しい。どこかで歯車が噛み合っていれば、ジョージの80年代中期のヒット曲になっていたと思うのですが。
ショボい、古いとお決まりの文句で片付けられるシンセの音も、70~80年代エレポップを聴き馴れた耳からすれば特に違和感はありません。
トロピカルなサウンドに伝家の宝刀スライドを見事に合わせた「That's the Way it Goes」「Greece」ドゥーワップをばっちり決めた「I Really Love You」、カリプソ風味が心地良い「Gone Troppo」、親友に捧げた美しいナンバー(ボコーダーによるコーラスとマンドリンが泣ける!)「Mystical One」、ジョージ印のコード進行と泣きのスライドが心を掴んで離さない「Unknown Delight」(ギターソロでの「Something」のセルフパロディも最高!)、Billy Prestonの低音コーラスも渋いブラックなナンバー「Baby Don't Run Away」、「オ・ラ・イ・ナ・エ」の呪文もインパクト大なポップチューン「Dream Away」、The Beatles時代に書かれたミステリアスな「Circles」…どの曲も、初めて聴いた瞬間からすぐにお気に入りになりました。
このアルバム、全く売れなかったのでチャート的には失敗作とされるのは理解出来ますし、当然だと思いますが、私がジョージを本格的に聴き始めた頃に参照した本では内容的にも芳しい評価をされていませんでした。ライターの先生方は本当にちゃんと聴いたのかな? と若輩者ながら疑問が消えなかったのを思い出します。
この作品に関しては、共同プロデューサーのPhill McDonaldが「ジョージの音楽を理解出来るのは彼のファンだけ」と評した影響があったのかもしれませんが、当時のビートルズ評論本では『All Things Must Pass』『Living in the Material World』『George Harrison(慈愛の輝き)』『Cloud Nine』(あとTraveling Wilburysの1st)以外はまともに作品として扱われていないような印象すらありました。
誰かの評論は、あくまで参考程度に読んでおくべきなのだなぁ、と当時の私は学んだわけです。四の五の言わず、自分の耳で確かめよう! という事です。