(Revenge of the)United Minds

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数多のダイヤ まとわせながら 女を激しく踊る

 我がバンドの元ベーシストにして、私の古い友人が誘ってくれるという嬉しい出来事があり、『シティーハンター 新宿Private Eyes』を観ました。

 

 

 映画に何を求めるか、それは人それぞれです。ことアニメーション映画となると、未だに私は少し身構えてしまうのが正直なところ。それは、我々の世代が一番背伸びしたい年頃に社会現象を起こした作品のブームが直撃してしまった事が最大の原因です。
 アニメーション映画は哲学的で、難解で、謎解き要素があって、過去の名作を引用していて、人間が抱える罪を内包していて、観るのにある程度の痛みを伴うものでないと意味がない。
 これは私の感情であり過去の記憶から基づく偏見であって、このイメージが正しいものだと言いたいわけではありません。ただし、私の周囲のこの作品の信奉者には一筋縄ではいかない友人知人が多く、そんな人々から植え付けられたアニメに対するアティテュードのようなものがこんなイメージでした。

 

 加えて、この世で一番愛する映画シリーズの続編で巻き起こった「自分の見たいものだけ見たいのならば去れ」という論争。我々守旧派(自分自身ではそうは思っていないが)は「自分の思い通りにいかなかった展開に駄々を捏ねる者達」という批判を受け、当該作品を語る時に少なからず複雑な感情を抱くようになってしまった。

 

 しかし『シティーハンター』待望の新作であった『新宿Private Eyes』は、そういった私の心の奥底で燻っていた些末な感情を吹き飛ばすような快作。
 小細工一切なし、正々堂々の正攻法で挑んできてくれた“いつもの”シティーハンター。こちらの期待を全く裏切る事はありませんでした。

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 リョウと香は勿論、冴子や海坊主や美樹、更に教授までアニメに初登場させ(原作で見慣れているのでアニメ未登場とは知らず)、更に同作者の作品なれど交じり合う事はなかったキャッツアイの3人まで登場させる大サーヴィス。それに伴い、海坊主&美樹が経営する店名の由来を2019年の現在に種明かし(後付けだけど)するおまけも付いた見事さ。

 

 声優は勿論オリジナル・キャスト。アニメの初期シリーズでは名も無きチョイ役を務める事が多かった山寺宏一を、堂々のメイン悪役に据えるという心憎い配役もありました。
 音の面で触れるなら、アニメ版主題歌は3曲を除き全編にBGMとして使用される大盤振る舞い。「Get Wild」の使用のみが公開前にアナウンスされましたが、これは撒き餌というか囮のような情報公開だったのですね。

 劇中で流れるのは「Get Wild」だと思って観始めたのに、冒頭からいきなりPsy・s「Angel Night」のイントロが聞こえてきた時の驚きと来たら! 昨年引退宣言をした人物の「Running to Horizon」もしっかり使われており、あの“モスキートボイス”と称される歌声を劇場で聞けるとは思いませんでした。

 

 劇中には、過去に例を見ないくらい新宿のご当地スポットが登場、昨今のアニメに顕著な「聖地巡礼」的な楽しみ方も提示しています。
 アニメや原作がリアルタイムで制作されていた当時、私といえば千葉の陸の孤島で情報をまともに得る事の出来ない子供だったので、新宿の街並みを全くリアルに感じられず、あくまで創作の中の出来事として眺めているだけでした。

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 それが東京での生活も長くなり、まだまだ未知の部分も多いとはいえ新宿の地理はあらかた把握しています。リョウが、香が、冴子が、海坊主が自分の庭のように走り回る新宿の街を、ようやく現実と照らし合わせながら認識出来るようになった。ある意味で、この事実が一番感動した点かもしれません。

 

 こちらが観たいと思ったものを、最高のクオリティで提示してくれる。それもファンの心をくすぐるサーヴィスも多数用意した上でこれを快作と呼ばずに何と呼べばいいのか。
 ファン側が「観たいもの」、制作側が「作りたいもの」が見事にクロスし、それが大ヒットに繋がった。稀有で幸福な一例なのではないでしょうか。

 

 この映画が、決して『シティーハンター』史上の最高傑作というわけではありません。スペシャル版ならば、個人的には『グッバイ・マイ・スウィートハート』が一番好きな作品です。
 この作品に快哉を叫びたいのは、実はその点。いつかから続いていて、この後も普段通り彼らの日々は続いていく。久し振りの劇場版だからといってシナリオに殊更スペシャル感を煽るのではなく、今までとこれからの中継地点としてこの映画を作ってくれた。そんなところに、何より制作スタッフの愛を感じました。

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 登場人物達は当たり前のようにスマートフォンを使いこなし、消えてしまった新宿西口の掲示板はWeb上のAR映像として登場する。そこにいちいち疑問を挟む者もいない。そんな自然な「継続している」感じが、さりげなく私の琴線に触れる。
 エンディングなどはその象徴的なもので、無理矢理原作の最終回のエピソードなどを盛り込んだりせず、また次週アニメ放送があるかのような終わり方。この映画で一番感銘を受けた場面でした。

 

 友人の提案であえて新宿で観ましたが、その選択は大成功だったと思います。劇場を出てすぐ、先程まで作品世界に登場していた街を体感出来るわけですからね。
 ただし同じ事を考える方々は当然多いわけで、時期も悪かったせいか来場特典はもらえず、それどころかグッズやパンフレットも全てソールドアウト。せめてパンフレットだけは入手したいので鑑賞当日も含め複数箇所の映画館を巡っていますが、未だにどの場所も売り切れのままです。ここまで人気が高いとは...劇場側もここまでの事態は想定していなかったのでしょうか。せめてパンフくらいは買わせてほしい、というのが本音ですが。

 代わりに、このアルバムを買いました。

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  当然、ここに入っている楽曲は既に所有していますが、映画への謝意を表明する意味での購入です。

 

 友人との懐かしい会話も含め、久しぶりに楽しい体験をさせてもらいました。