(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

Some Holocron Vol.5

 待望の2巻発売!

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 2021年のブログは、この作品の感想で終えたいと思います。

 

 

 

 

『レイア ‐王女の試練‐』

 

Contents

 

粗筋

 青年議会の任務中、辺境の惑星クレイトにて、何者かに拘束されるレイア。そこで対面したのは、養父ベイル・オーガナであった。
 遂に娘に自分達の秘めた“活動”…反乱同盟の存在を知られてしまったオーガナ夫妻。勇んで参加を望むレイアだが、2人は必死にそれを制する。愛する娘を戦いに巻き込みたくはない、そのためには何も知られてはならないのだ、と。
 まだ自分には、両親の戦いに参加する資格が足りない。そう考えたレイアは、再び人道的支援を独自に開始する。行き先はオノアム、美しい惑星ナブーの衛星。説明の必要はない、ナブーは銀河皇帝シーヴ・パルパティーンの出身惑星であり、そして…。
 現在のナブーを実質的に統治するのは、勿論帝国である。そこで実権を握るのが、モフ・クァーシュ・パナカ。かつて首都シードの宮殿にて女王に仕え、ナブーの戦いも経験した帝国主義の信奉者だ。
 レイアの容貌に、明らかに何かを感じ取った様子のパナカ。だが、その事をレイアが疑問に思ったのも束の間、彼は邸宅ごと爆破されてしまう。
 ナブー女王との交流、鉱山労働者の過酷な現実、ソウ・ゲレラ率いる過激派反乱組織によるパナカの暗殺、沼の惑星チャル・ハッダでの本音をぶつけ合った交渉…数々の得難い経験を重ねながら、プリンセスは賢明に、そしてタフに成長していく。
 政治と法でこの現状は変えられないのだろうか、残された手段は戦いのみなのだろうか。まだ若い彼女にも、決断の時は着々と迫っているのであった。

 

レイア、日々の研鑽と成長

 かなり濃い内容の1冊でした。1度コマを読んだだけでは100%理解する事が出来ず、何度か読み返して台詞を咀嚼し、発言者の心情や物語の流れ、作者の意図を読み解いていく。一見回りくどいように思えるかもしれませんが、それだけ充実したストーリーなのです。今までのSW関連映画やアニメ作品のようなわかりやすいカタルシスを提示するのではなく、レイアがいかにしてあの人格を形成し、反乱同盟軍の指導者になっていくのかが非常に納得出来る内容。
 彼女の男勝りなブラスター捌きも、何事にも動じない度胸も、エリート教育と数々の経験、加えて自ら望んで飛び込んだ環境によって育まれたものでした。その点、オビワンに導かれるまで田舎で燻っていたルークと差があるのは当然でしょう。

 

ルーツへの接近

 ナブーの現女王との交流も新鮮な場面でした。SW作品中の女性同士の交流というと、どうしてもジェダイ絡みの話になってしまいがち。クイーンとプリンセス、互いの立場で、出来うる限りの努力をして現状を少しでも良いものに変えていこうという姿勢。そこにはライトセイバーも、ターボレーザーキャノンも存在しませんが、力だけが全てを変えるわけではない事を示しており、SW関連作品としてはかなりフレッシュな印象を与えてくれます。

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 EP1以来となるパナカの再登場(甥のタイフォは本編だけではなくクローンウォーズにも多数登場していたが)もファンサービスではなく、必然と思えます。彼の登場シーンも含め、ナブーの衛星での一連のシークエンスは、トリロジーが確かにプリクエルから繋がっている物語なのだと実感させてくれる敬意に満ちたもの。この物語がスピンオフとして良質であると示しているポイントです。

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 この場面、必ず「ナタリー・ポートマンキャリー・フィッシャーが似ているのか?」と野暮な突っ込みを入れる人もいるでしょうが、両者を取り巻くオーラ、言うなればフォースのようなものが共通しているのだと考えましょう。そもそも、ルーカスもルックスに全く共通点のない者をキャスティングしたりはしないはずです。
 それにしても、キャリー・フィッシャーに似せながらも漫画的美少女にデザインを上手く着地させる春壱先生の筆致は冴え渡っていますね。1巻よりも見た目のキャリーらしさは格段に増したように思います。

  今回、議員候補生であるエリートのキアと良いムードになるレイア。

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 それでも、やはり彼女はアナキンの娘であり、後にハンの妻となる女性なのだと実感させてくれる場面もあり、なかなか痛快です。

 

今後の展開に臨む事

 問題は、これだけレイアの葛藤や反乱活動の理想と現実など、ディープで静的な話が描かれると、作品自体の魅力がライト層に伝わるかが不安になる事。やはり、大多数のSWファンは宇宙でのドンパチや、ライトセイバーでの剣劇を望んでいるようなイメージがあり(プリクエルに対しては否定的、かつEP7を熱狂的に迎えたオールドファンの存在がその論拠)、今後に向けての懸念材料です。
 とはいえ、スポットの当たりにくい女性キャラを、これだけ説得力のあるシナリオで描いてくれる作品が志半ばで終わってほしくありません。何としても、本来意図した形で完走してほしいと願っています。

 コミック版『反乱者たち』は、やはりというべきか3巻で打ち切られてしまったようです。元々、あの膨大なストーリー全てを漫画化出来るとも思っておりませんでしたが、いかにも短すぎる。私に出来る事は新刊を買う事くらいしか支援の術がありませんが、『レイア』は今後も応援していく所存。

 

 

 長いようで短く、短いようで長い1年。毎年同じような事を書いているのにも少々うんざりしてきますが、振り返れば色々な事がありました。

 昨年から続くこの世界の状況は未だ収まる事を知らず、新たな脅威さえ広がりつつあるのが現状。だが歩みを止めるわけにはいきません。来年も、何とか無事にやり過ごし、実りある日々を過ごしていきたいと願っています。

 今年もお付き合い頂き、ありがとうございました。良いお年を。