(Revenge of the)United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

Another happy landing.

 前回のSW記事で少しだけ紹介したが、SWのスピンオフコミックを入手した。アメコミの翻訳ではない、れっきとした日本人作家が描いたものである。

 

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 原作付きとはいえ、日本の若い漫画家がSWのカノンを紡ぐという事が誇らしい。もっと早くこういう機会があっても良かったとは思うが。

 

 今回は、『ロスト・スターズ』の感想を簡単に書いていきたい。当然ネタバレを含むので、その点ご了承願う。

 

 

 銀河外縁領域、辺境の惑星ジェルーカン。この星に最初に入植した貧しい“第1派”、後から入植した裕福な第2派”は激しく対立し、長きに渡り友好関係を構築出来ずにいた。
 そんな中で始まった、銀河帝国の支配。強大な力による統治の前には、住民同士の争いもやがて収束するのではないか。彼の地にやってきたグランド・モフ、ウィルハフ・ターキンに心酔した者が、帝国に“希望”を見出だした。セインとシエナ、2人の子供達はやがて帝国アカデミーの門を叩く事となる。
 厳しい軍事教練を耐え抜き、トップクラスの成績を修めて憧れの帝国軍人となった2人。だが、反乱同盟軍との戦いの日々や、帝国統治の現実を知れば知るほど、彼らには疑念が渦巻いていく。それでも帝国へと忠誠を誓うシエナ、軍の離脱を望み始めたセイン。やがてオルデラン破壊、第1デス・スターの敗北が決定的なトリガーとなり、愛し合う2人の道は別たれてしまうのである。 

 

 ルーク、レイア、ハン、ヴェイダー、皇帝などVIP組以外から見た、無名の帝国・反乱同盟軍人が綴る銀河史。藤子・F・不二雄『ヌターウォーズ』(短編「裏町裏通り名画館」内に登場)を連想させる視点からの物語は非常に新鮮。
 ジェダイでもシスでも、両陣営のトップに近い位置からでもない立場から見た数々の重要な事件や戦闘は、リアリティがあり生々しかった。

 

 個人的に興味深かったのは第1デス・スター破壊(ヤヴィンの戦い)直後の帝国軍の混乱ぶり。
 艦隊が銀河各地に展開していたであろう事は、デス・スター本体とタイ・ファイターだけで反乱同盟軍の戦闘機隊を迎え撃った慢心ぶりという形でEP4内でも描かれていたが、帝国首脳部ナンバー2のターキンが搭乗していた事でもわかるように、指揮系統はデス・スターに委ねられていたはず。
 そんな巨大な頭脳を突如失い、その事実すら確認出来ていない帝国軍はカオスに陥った。ヴェイダーの旗艦“デヴァステイター”で別の星系にいたシエナ、惑星ダントゥインで反乱軍基地を調査していた(レイアの虚偽の自白によるもの)セインの視点で描かれるメインストーリーの裏側は、非常に惹き付けられるものがあった。
 後日譚として、『ローグ・ワン』同様に反乱同盟軍の負の側面もしっかり描かれている。

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  勧善懲悪という単純なストーリーであったEP4だが、別の見方をすれば様々な捉え方がある。この台詞は、デス・スター攻略戦の数少ない生き残りであるウェッジ・アンティリーズに対してセインが放ったものだ。だがウェッジも、綺麗な戦いなど存在しない事は重々承知している。彼とて、帝国から離反した者だからだ(この作品内では触れられていないが、『反乱者たち』にて2話に渡りウェッジの帝国アカデミー脱走の様子が描かれた)。

 

 他に目に留まったポイントを簡単に挙げていこうと思う。

 

①オルデラン側から見たデス・スターのスーパーレーザー
 デス・スターの全リアクターを使用したフルパワー状態での攻撃。その破壊の最初の犠牲となったのが、EP4でも描かれるベイル・レイア父娘の出身惑星オルデラン。美しい惑星の平和な光景が一瞬にして禍々しい光に飲み込まれる様は、あっさりした描写ではあるものの対比があまりに残酷であるために、『ローグ・ワン』以上に強い印象を残す。

 

②皇帝の姿
 『反乱者たち』のクライマックスにて、主人公エズラの前に登場した皇帝のホログラフは好好爺そのものといった姿だった。EP3でのメイスとの対決前の「パルパティーン議長」に近いこのビジュアルが、表向きの姿として一般市民や多くの帝国軍人に公開されていたようだ。それがデス・スター内で初めて皇帝を迎えた際のシエナの驚きようでわかる。
 あのシワシワの悪の権化そのものの姿は、実際に会った事がある極一部の者でしか知り得なかった…そのような描写があるのは興味深い。

 

③あっさり終わるエンドア戦
 デス・スターからの指示を愚直に待つあまり(エンドアからのシールド焼失や、ルークとヴェイダーの対決等で混乱していたと思われる)、陣形を維持する亊に精一杯なシエナ属する帝国艦隊。ランド率いるデススター侵入部隊の援護に回ったセイン。どちらも戦場ではあったが、メインの流れからは外れたポイントにいた事になる。いつのまにか戦闘が終了している様子が、やけにリアルに感じた。

 

④ジャクーの戦い
 新共和国と帝国の最後の戦いとされているジャクーの戦い(EP7制作時に設定された正史)。エンドアでの敗北後、度重なる敗戦の末に帝国軍は既に最終局面まで追い詰められており、まだアカデミーを修了していない10代の若者を大量に戦場へと送り込まねばならない状況だったようだ。25歳にもならないシエナがスターデストロイヤーの艦長に任命されたりと、何だかどこかで聞いた事のあるような話である。

 

⑤妙にタイムリーなセインの所属中隊名

  私が読んだ時期が悪かったのだろう。

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 今までのSWでのトワイレックは「女性は美人、男性は不男」というような暗黙のルールがあったが、イェンダー(画像中列)は漫画のメインキャラに相応しい美青年で驚いた(インターネット上でも同内容の指摘を多数見かける。私も最初は女性かと思ったくらい)。トワイレックの認識も、この作品から変わっていくのだろうか。

 

 ここまで銀河史からの視点で作品の感想を語ってきたが、あくまで物語はセインとシエナの悲恋の物語である。ハッピーエンドに終わるかに見えて、戦争の非情さを思い知らされるラスト。そんな切ないストーリーを、日本漫画らしい細やかかつポップな描写、若々しい感性で楽しめる作品。SW作品でこのような読後感を味わった事がなく、新たなる可能性を見せてもらった。

 帝国将校とて、その多くは理想に燃えてアカデミーを目指したはず。誰もが悪の手先ではない。だからこそ帝国の政治に疑問を抱く者は離反し、反乱軍に加わるのだ。『反乱者たち』でも垣間見えた「帝国内部の普通の若者達」が今回の主人公達であり、歴史を引っ張る立場ではない。彼らは「普通の若者」らしく、向き合わされた現実の重さに苦悩を深めていく。

 セインとケンディは決して晴れぬ疑問を抱き、抜け出した。シエナは帝国の間違いに気付き、セインを愛しているものの、濡れ衣を着せられて投獄された母を見捨てるわけにはいかない。ジュードはデス・スターの致命的欠陥(ゲイレン・アーソが仕込んだ罠)を発見しながらも、運命を共にする以外の選択肢はなかった。ナッシュは故郷オルデランを目の前で破壊され、帝国を妄信する事でしか自我を保てなくなり、やがて狂気に飲み込まれていく…銀河史においては端役でしかない帝国アカデミー卒業生にも、それぞれの人生がある。この濃厚さこそSWそのものだ。


 彼らが心血を注ぎ命を懸けた戦いの行く末も、シークエルのあれやこれやに繋がっていると考えると悲しく、また空しくもあるが、ジャクーの戦いで物語が終わっているので、その後をそれほど気にしなくて済む。トリロジー、プリクエル、『ローグ・ワン』への密接なリンクとリスペクトも感じる素晴らしい作品。