(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

豪徳寺一族

 好調な滑り出しを見せている、今年の大河ドラマ『青天を衝け』。主人公が農民出身という事もあり、今までの幕末ドラマとは一味違う視点で激動の時代を捉えているのが新鮮です。
 何故日本は封建制度からの変革を求め、身分の差を廃し近代国家への道を歩まなければならなかったのか。外圧やそれに対する国内の思想の衝突といった見方だけでなく、時代の中で理不尽な目に遭い続けてきた農民だからこそ感じる事の出来る、旧体制の歪さ。そこを過不足無く描写し、それでいて新たな時代へと挑んでいく若者達の挑戦にワクワクさせられます。
 今のところ、主人公が無理に歴史上の重大事件に絡んだり、全てを自分の力で解決していくような事もなく、創作人物がファンタジックな活躍を見せるわけでもない。ストレス無く作品世界を楽しんでいます。それほど期待していなかったので、良い意味で予想を裏切ってくれた事が痛快でした。

 

 さて、先日の劇中では桜田門外の変が描かれました。時代が沸騰するきっかけとなったテロであり、一部の者の暴走が、結果的に時代を動かす事が可能だと天下に知らしめた重大な事件。
 その中で、彦根藩主井伊家の菩提寺豪徳寺である事を知りました。その近辺…というほど近くもないのですが、ともかく用事があったのでついでに足を伸ばしてみる事にしました。

 

 小田急電鉄に関しては、下北沢以外の駅で降りるのは本当に久し振り。もしかすると、この時以来かもしれません。

blog.goo.ne.jp

 勿論、豪徳寺駅の利用は今回が初めて。この線の駅舎に共通するホームの造りが懐かしい。

 マップを頼りに歩いていくと、ポップなイラストが山門へと誘ってくれる。

f:id:micalaud:20210423221922j:plain

 この絵を見て、豪徳寺は招き猫伝説で有名な寺院である事を思い出しました。

www.city.setagaya.lg.jp

 招き猫の発祥の地という一説もあり、仏殿横の招福殿では招き猫が右手をあげて福を呼んでいます。

 このブログでも、太田道灌ゆかりの地を探っていた際に取り上げた自性院。

micalaud.hatenablog.com

  黒猫に導かれ、命拾いした道灌。一方、猫の招きにより雷雨を避ける事が出来た井伊直孝(『おんな城主 直虎』でもお馴染み井伊直政の次男であり、彦根藩二代目藩主)。

 伝説として神秘的で勇ましいのは道灌の方ですが、直孝の方がリアリティや暖かみがあるエピソードだと感じます。豪徳寺と自性院、どちらも招き猫発祥の地としての由縁を持つ寺院ですが、江戸の時代を創るにあたって不可欠な役割を果たした者同士が関わっているという共通点もあります。いつか、何らかの形でコラボレーションなどをしてほしいものですが。

 

 しかし、招き猫を前面に押し出しているのは、どう見ても豪徳寺の方でした。招き猫(招福猫児)の奉納を行ったり、招猫観音なる本尊を奉ったりしており、それに伴って寺に至る道中にも猫グッズを扱った店が多数ありました。

f:id:micalaud:20210423222851j:plain

f:id:micalaud:20210423222904j:plain

f:id:micalaud:20210423222916j:plain

f:id:micalaud:20210423222943j:plain

f:id:micalaud:20210423223033j:plain

f:id:micalaud:20210423223045j:plain

 圧巻なのは招き猫の奉納所。大小様々な招き猫が、所狭しと3ヶ所の棚に奉られています。特に本堂近くの奉納所は圧巻。あまりの迫力に、思わずたじろぐ程。

f:id:micalaud:20210423223117j:plain

 私も1つ所望しようかと思いましたが、招き猫がケースに入った御守りを土産としました。そういう場所ではないのかもしれないとは理解しつつ、もう少しファンシーなグッズ等あると若者には買いやすいのかもしれない、と思ったりもする。

 

 さて、いよいよ今回のメインである、国指定の史跡・彦根藩主井伊家墓所へ。

f:id:micalaud:20210423223209j:plain

 遭難した大老井伊直弼その人以外にも、襲撃に立ち向かい殉職した彦根藩士8名もここに眠っているようです。

f:id:micalaud:20210423223234j:plain

 是非はともかく、幕末の動乱がこの桜田門外の変から大きく沸き立ちました。ここから起こった怒濤の流れを、長く鉄壁の幕藩体制で国内を治め続けていた徳川幕府でも止めることは叶わず。

f:id:micalaud:20210423223340j:plain

 こういう御時世である事も関係したのでしょうか。墓参して手を合わせた際、柄にもなく井伊大老に語りかけるように祈りを捧げてしまいました。世界的な危機にある今、我々は先人の知恵を活かしながら苦境を乗り越えなくてはなりません。

 

 参拝を終えて駅へ向かう道すがら、マップ上には見覚えのある人物の史跡が表示されていました。私が初めて読んだ日本史漫画にも名を連ね、幼き日から記憶に深く刻み込まれている著名な近代政治家です。

f:id:micalaud:20210423223551j:plain

micalaud.hatenablog.com

 何やら断ち難い縁のようなものを感じ、勿論寄り道してみたのですが…表札は別の方の名前が掲げられており、中には人の気配もします。ご迷惑になってはいけないと思い、素早くその場を去る事にしました。

micalaud.hatenablog.com

 ちなみに現在、彦根藩江戸藩邸があった場所には、この人の功績を記念する会館が建っている事は以前このブログ(というよりも今は消えてしまったポッドキャスト番組内)にて取り上げました。何とも奇妙な符合ですが、果たして偶然なのでしょうか。ともかく、何がしかの関係性で両者は結ばれているのかもしれません。

 

 曇りのち雨の予報だったこの日。駅に戻って食事を求め始めた辺りで、ここまで何とか持ち堪えていた雨雲が遂に我慢しきれなくなったようでした。

f:id:micalaud:20210423224104j:plain

 この地で果たすべき目的を、既に終えた後での降雨。何事にも格好の付かない私にしては、決して悪くはないタイミングでした。私はこの地での遅い昼食を諦め、いそいそと電車に飛び乗る事になります。
 駅から寺までの道のりも楽しい土地であり、味のある建物も多く見かけたので、また近隣に用事があった際には再訪したいと思っています。