(Revenge of the) United Minds

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Cosmic Emperor

 ついこの間、発売されないままであった『All Things Must Pass (50th Anniversary)』について記事を書いた気分だったのに、既に1年が終わろうとしています。

micalaud.hatenablog.com

 思えばこの記事が2021年の幕開けとなったわけですが、あまりの時間の流れの速さに呆然としてしまいます。まさに「All Things Must Pass」ですね。個人的にはこれといって進展のない年でしたが、やはり12月(11月)もあればそれなりに周囲に大きな動きもあり、これまた万物流転を意識せざるを得ない年の瀬です。

 

 最後の1ヵ月、ブログ記事にするための話題は意外と困っていないのですが、ちょっとタイミングが合わないのが困る。

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 じっくりと書けそうな話題が多いのに、何とも惜しいすれ違いが発生。よって今回は簡単ではありますが、今年の2大リイシューに対して簡単な感想を述べようと思います。

 

 

"All Things Must Pass (50th Anniversary)"

 

 「ロック界に不滅の金字塔」を打ち立てたジョージの大傑作、待ちに待った50周年記念盤。色々あって暫定的に3CD版を購入しましたが、近日中に5CD版を入手予定です。

 監修はダニー、リミックスはthenewno2での彼の相棒ポール・ヒックスが担当するという盤石の布陣でリリースされた新装版は、ジョージ自身が関わった30周年盤よりも更に新鮮な印象にアップデートされ、サブスク時代に対応可能な最新の音像へと生まれ変わりました。

 ジョージのヴォーカルやギターがくっきりと浮かび上がり、生々しくも迫力ある音に興奮。“音の壁”から抜け出したバンドが、目の前で演奏を繰り広げているようなライヴ感に溢れており、とてもパワフルです。

 

 特に“脱スペクター”を謳っているようでもないのですが、30周年盤よりも更にウォール・オブ・サウンドから解放されたような感覚があります。これは、ダニーが現代的な感性で狙って行ったリミックスなのでしょう。

 勿論、オールドファンには「雪崩のような音にまみれてこそ『All Things Must Pass』なのだ」と仰られる方もいるでしょう。私も別にスペクター否定派ではありません。特に原典が否定されたわけではないのですから、オリジナル盤、30周年記念盤、2014年リマスター盤、そして今回の50周年記念盤と、それぞれをその時の気分に応じて楽しめば良いのです。どれか一つに限定する必要はありません。

 ただし、今回のリミックスは個人的には非常に好みです。この音を新たなスタンダードとして、この先も長く楽しんでいこうと思っています。

 

 

"Let it Be (Special Edition)"

 

 当初は劇場公開の予定だったドキュメンタリー『Get Back』とも連動する形で、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』からスタートした恒例の50周年記念盤も今回がラスト。元々同じ年のリリースだったので仕方ない事なのですが、お陰で世の話題は『All Things Must Pass (50th Anniversary)』からすっかりこちらへと移ってしまいました。

 2枚組を入手しましたが、特に豪華版を手に入れるつもりはありません。ファンになった頃から関連書籍等で繰り返し話題に挙げられていた、グリン・ジョンズがプロデュース(ミックス)したプロトタイプ『Get Back』には非常に興味があるのですが。

 『Let it Be... Naked』(2003年)のように脱スペクター、と言うよりも反スペクターを旗印にしたミックスとは異なり、あくまでスペクター版を準拠としたリミックスになっています。『Naked』な要素は先述「Get Back」に担当させ、あくまでオリジナル・ミックスの更新に留めたように思います。

 『All Things Must Pass (50th Anniversary)』同様、楽器やヴォーカルの粒立ち、分離は良くなっているように思いますが、個人的には『The Beatles (White Album)』のような驚きはありませんでした。これは昨年の『Abbey Road』も同様です。『(White Album)』のリミックスのインパクトがあまりにも大きすぎた、と書いた方が正確かもしれません。

 アウトテイク集で一番印象深かったのは、既にツイートでも述べた通り。

 5枚組の曲目を見た時にも感じましたが、残された音源の膨大さから考えるとアウトテイクの曲数が少なく感じました。それだけ散漫で、公式リリースに耐え得るほどのテイクが少なかったという事なのでしょうが。

 『Anthology』や『Naked』を聴き慣れてしまった今となっては、「The Long and Winding Road」や「For You Blue」のジョージのギターが殆ど聞こえない、もしくはほぼカットされてしまっている事に違和感を覚えます。逆に、「I Me Mine」はストリングスが入ってこその曲だと思いますが。

 

 「All Things Must Pass」(楽曲)や「Let it Down」といった渾身のナンバーが採用されなかった事でもわかる通り、このセッションでのジョージは「For You Blue」のようなシンプルな曲でなければ取り上げてもらえなかったという事実に、今回改めて当時の彼の苦境を実感しました(「I Me Mine」は後に追加された曲)。成長著しく、クリエイティヴィティが日進月歩の勢いで高まっている時期に、これは相当辛い事であったろうなと。勿論、彼の大ファンだからこその贔屓を込めた見方ではありますが。

 今回の発売と動画配信を前にインターネット上でも特集記事が多数組まれ、スマートフォンに勧められるままにいくつかを読んだのですが、一番目に留まったのは「ジョージはルーフトップ・コンサートの際に自作曲の採用を働きかけるような事はせず、円滑に物事が進むように計らった」というような一文でした。

 多くのファンならご存じの通り、ジョージはポールと対立し、その様子は旧映画『Let it Be』でも撮影されていました。その他、ジョンやヨーコにもストレスを溜め、一時的にバンドを離脱します。その後、ビリー・プレストンを招いてメンバー間の緊張をほぐしたのもよく知られている通り。ジョージはこの時、The Beatles内での自分の役割を主張する事を諦め、ソロで創作意欲を満たす事を決意したように思います。

 とはいえ、かつての定説のようにメンバーはこのセッションで解散を決意したのではなく、『Abbey Road』リリース後も何とかバンド存続の道を探っていた事が近年明らかになっています。ジョージもいきなりバンドを終わらせてメンバー間の傷を深くするのではなく、ソロ活動と並行しながらバンドのソフトランディングの道を考えていたのでしょう。ルーフトップ・コンサートのセットリストに粛々と従ったり、バッキングに徹したのも、そういった思考から来ているのかなと今回思いました。

 

 このアルバムはプレイする機会が多くないので、通して聴くのは2000年代初頭以来のように思いますが、アルバム冒頭の「"I Dig A Pygmy" by Charles Hawtrey and the Deaf Aids. Phase one, in which Doris gets her oats.」というジョンの語りを聴くと、あっという間にThe Beatlesを聴き始めた中学生時代に意識が引き戻されてしまいます。これには自分でも驚きました。

 タイトル曲「Let it Be」が荘厳な名曲であったため、当時の私にとってこのアルバムはかなりお気に入りだったのだと思います。当時の北海道旅行(確か小樽来訪時)にて、購入したオルゴールもこの曲のものでした。

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 当時の私よ、何故ジョージの曲ではないのか? そもそも売っていなかったのかもしれませんし、詳しい事は全く覚えていません。

 他にも、「Dig a Pony」は地元のコンビニ(10年以上前に閉店済み)とヤマザキの菓子パンを、「The Long and Winding Road」は友人の父親のカセットテープ棚を、「Across the Universe」は上京後最初に住んだアパートと池袋の練習スタジオ(バンド結成時最初に練習したのがこの曲)を脳裏に蘇らせます。やはり、The Beatlesは自分の思い出とあまりにも密接に結び付いており、切り離して語る事は困難だと今更ながら実感しました。