(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

Some Holocron Vol.4

 現在所有しているSW関連の書籍を、目に付いたものから取り上げて簡単に感想を述べていく企画。

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 今回は、かなり前から読まずに放置していた児童向け小説を紹介。

 

 

 

 

ゾルバの復讐』

 

Contents

 

粗筋

 ジャバ・ザ・ハット亡き後の暗黒社会は揺れていた。彼の財産はどこへ消えたのか、何よりジャバを抹殺したレイア姫とは何者なのか。ジャバの父、ゾルバ・ザ・ハットは復讐に燃え、周到な罠を反乱同盟軍の若きヒーロー・ヒロイン達へと仕掛ける。
 ハンは流浪の人生にピリオドを打ち、親友ランドが治めるガス状巨星・べスピンのクラウド・シティへと居を構えた。勿論、レイアとの来るべき新婚生活の拠点とするつもりなのだ。その新築祝いのパーティーには、自らを追う賞金稼ぎ達を退けたルークも向かっている。
 だが、宴の最中に問題は発生した。ランドが、ゾルバとクラウド・シティの統治権を賭けたサバック勝負を行い、事もあろうに敗北してしまったのである。ミレニアム・ファルコンを賭けて行ったハンとの勝負より、遙かに深刻な事態を招く大失態だ。
 当然、ゾルバのが仕掛けたイカサマが原因である事は明白である。それでも、その事実を証明する手段がない。ハン達も、新居での生活どころではない危機へと陥ってしまう事を意味していた。
 執念深くレイアを追うゾルバの一派、そこに帝国軍も加わり、光弾が飛び交う三つ巴の争いが始まった。ルーク達はこの危機を脱し、劣勢を跳ね返す事が出来るのだろうか。

 

作品概要と購入動機

 Wookiepediaによれば、この作品は小説『ジェダイの王子』シリーズの第3作として、1992(日本では1993)年に発売されたらしい。巻末に示されている一連の小説のラインナップを時系列順に沿って表記していると解釈するならば、以前紹介した『帝国の後継者』より前の話であるらしい。

micalaud.hatenablog.com 『ジェダイの王子』シリーズと銘打たれるくらいなので、当然その「ジェダイの王子」がキーマンとなるのであろう。ジェダイが王制であったとは当時の感覚でも解釈が違うような気もするが、ともかくこのストーリーでは下図のケンなる少年が「王子」であるらしい。

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 これぞスペースオペラ小説、といった感のあるキャラクター紹介。なかなかに期待感を煽る絵柄だ。チップは、ルーカスの宇宙らしくないデザインではあるが…それでも、シークエルのそれよりはレトロSF感があって許せる。

 

 これを購入した詳しい時期は覚えていないが、EP7公開後であった事は確実だ。続編とされた映画の内容に不満を持ち(それでも当時は必死に受け入れようと努力していた。このブログにもその痕跡が窺える)、「今、完全にレジェンズとされてしまったEP6後の話を読んでみるのも面白いかもしれないな」と思った事は覚えているので、その時期であると推定した。
 裏表紙に「全国学校図書館競技会選定図書」と記されている通り、堂々と小中学校の図書館に置く事の出来る作品である。事実、私は中学校時代に(SWなど映画原作ではないが)SF小説を図書館で読んだ事が何度もあり、装丁もそれを思い起こさせるものとなっている。

 大きな文字、振り仮名、平易な表現に加え、日本人イラストレーターによる挿し絵もふんだんに使われており(原書では恐らくここまでイラストは挟まれていないのだろう)、大変読みやすい。小中学生向けなのだから当たり前かもしれないが、以前紹介した『帝国の後継者』のあまりにもソリッド過ぎる内容とは大きく違う。「ガガーン」「ギギギ」など、効果音がそのまま台詞のように記されているのは、むしろ昨今のライトノベル風ですらある(私は読んだ事がないが)。
 SWが、図書館協議会のお墨付きをもらって学校図書館で読まれている…そんな事実が面白く、購入した理由の一つにもなっている。

 

現在の視点から感じた事

 購入から数年が経ち、今回初めて最後まで読んだわけだが、はっきり言ってルーク達主人公がどのような状況に置かれているのか把握出来ない。ネット上でも殆ど情報がないので、手探りで読み進めるしかなかった。それは、3巻から読み始めてしまったという私の責任も大きいのだが。古本屋に、この本が置いてあったから後先を考えずに飛び付いた結果である。
 『帝国の後継者』とも共通しているが、エンドアの戦い(EP6)に勝利したとはいえ反乱同盟(新共和国)は銀河を安定させる事は出来ていない。むしろ、前述作品より更に劣勢であるようだ。
 ランドは再びクラウド・シティの統治者に返り咲いたようだが、彼の星では帝国が兵器工場を造り、深刻な大気汚染を生んでいるらしい。何故帝国はみすみすランドにこの星を統治させているのか、ランドやハンがこの状況に甘んじている理由は何なのか。反乱同盟軍がこの現状を止めようとしない理由もわからないし、そもそもエンドアの戦いの地上部隊(ハン)と宇宙部隊(ランド)の両将軍を帝国が狙おうともしないのは不可解極まる。少なくとも、この巻を読んだだけではこれらの答えがさっぱりわからない。
 帝国と反乱同盟、ひとまずは停戦協定を結び、奇妙な同居を許している状態なのか? それならば、尚更帝国軍が兵器を増産する事を反乱同盟軍が黙認している理由がわからないのだが…それほどまでに、まだまだ自由の戦士たちは銀河を治めるには力不足だという事か。
 1巻からこのシリーズを読んでいけば、この状況が理解出来るのかもしれない。ひとまず、この作品を読んだだけでは理解出来ない事が多すぎる。

 

 また、多数あるイラストの中に、堂々とアルファベットが登場するのも気になる。SW世界のアルファベットは、「遥か彼方の銀河系」である事を強調するため、オーラベッシュという文字が設定されている。

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 EP4初公開版でもデススター内にアルファベットやアラビア数字が登場していたが、この小説の発表時には訂正されていたはずだ。

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 絵を描いたのは日本人イラストレーターらしいので、その辺りの設定が徹底されていなかったのだろう。だが、これを悪いとは思わない、むしろ、SWスピンオフ草創期らしい味を感じて好きだ。

 

2021年とのリンク

 勿論、読むべきところがないというわけではない。ルーク達vsギャングの争い、というEP6冒頭を彷彿とさせる構図の対決が全編に渡って楽しめる作品となっているのだ。

 パルパティーンの息子を僭称し、新皇帝の座に就いたトライオクユーラスなる人物が登場するものの、それすらギャングとの交渉のために、随分と遜った態度を取っている。
 この巻の実質的な主役は、ゾルバ・ザ・ハット、かの悪名高いジャバの父だ。彼の悪巧みで、あのスカイウォーカーの兄姉や帝国軍が手玉に取られる。先立った息子の威光に頼り切りのように見えるゾルバが、思うがままに事を進めてしまうのは些かご都合主義にも思えてしまうが…それでも、SW世界の暗黒社会を全面に出した内容は『ソロ』同様に新たな魅力がある。
 奇しくも、現在公開を控えているドラマ『ボバ・フェット』は、ジャバが消えたギャングの世界をボバが統治するという内容になるらしい。


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 ポスト・ジャバ時代の暗黒社会を描くという意味で共通している両作品、ただ私が読んだタイミングと偶然重なっただけではあるが、奇妙な符号を感じる。これもフォースの力か。

 

総評、そして正史との共通点

 正史が定まったこの時代に読んでみると、小説オリジナルの設定の座りが悪いところが散見され、読んでいて何とも落ち着かないところがある。だが、その良い意味での歪さが面白く、正史とのギャップを楽しむのがレジェンズ小説の正しい読み方であると思っている。
 ジェダイの解釈への違和感は前述した通りだが、「<失われた都>にあるジェダイ図書館」という単語が登場する事は見逃せない。後にEP2で映像化される、ジェダイアーカイブジェダイ公文書館)を指しているのだろうか。『帝国の後継者』から「コルサント(コルスカント)」の名称が採用されたように、この作品から本編にフィードバックされたとも考えにくいが。
 ちなみに、ジェダイ聖堂の中に同施設は存在する。ここが、ダース・ヴェイダーという新たな名を与えられたばかりのアナキン率いる501大隊に壊滅させられた事を考えれば、「<失われた都>」という表現は間違いでもないのかもしれない。正史では、恐らく公文書館の資料はすべて皇帝が回収したのであろうが(『反乱者たち』にて、熱心にジェダイの歴史を研究している様子が描かれていた)。

 そういえば、この巻のラストではハンがレイアへ正式にプロポーズするという重要な場面があった。正史ではしっかりと描かれていないトピックなので、非常に貴重なシーンである。

 

 ひとまず、このシリーズの1巻は購入済みであり、これを読めば感じ方も変わると思う。このシリーズ、及びスローン3部作は無理のない範囲で集めていきたい。

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 その前に、待望であった『レイア』続刊の感想を書く事になるはずだ。