(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

From this day on you are comic artist with an "A"

 自分にとって、小学校2年から6年生の途中までの将来の夢は漫画家だった。
 勿論、漫画家を将来の職業として自分の根幹に定めたところで、これといった専門教育を受けたわけではない。ペンタブレットClip Studio PaintPhotoshopも当然存在せず、現在の子供達のようにTwitterやPixivなどで腕試しが出来たわけでもない。ただ、自分の中に漠然とそういった夢を抱いていただけだ。

 

 私は仲間内では週刊少年ジャンプを読み始めたのは早い方であったが、マンガを愛好したのはその手の少年マンガがきっかけではない。それよりも前に『ドラえもん』を入り口にして、藤子不二雄作品に強い憧れを抱いたからである。
 御大を範とした漫画道を歩むためには、まずは形から。当時もっとも親しく、私以上に藤子不二雄作品に造詣の深かった親友と組み、2人組の漫画家ユニットを結成するところから遙かな道のりをスタートしようと考えた。
 この“藤子不二雄”の活動内容は、残念ながら殆ど創作活動には結び付かなかった。夏休みの午前中に“妖怪退治”と称して愚にも付かない小学生らしい行動をしたり、下校時にドラえもんの秘密道具の使い方を考えて互いにクイズを出し合ったり、田舎ではまだまだ知られていない藤子不二雄作品を紹介し合ったりと、そのような他愛のないものでしかなかった。
 ただし夏休みの工作では学校側のルールを完全に無視し、毎年合同で作品を作り上げた。自慢ではないが、金賞をとらなかった年はなかったと記憶している。一応クリエイティブな共作も行ってはいたのだ。
 他にも、オリジナルの漫画シナリオを互いにドラマ形式で朗読し、カセットテープに録音するという活動も行っていた、らしい。これに関しては、記憶が殆どない。このテープを最後に聴いたのは中学生の頃で、それ以降散逸してしまったせいで詳細を確認出来ないからだ。

 

 彼とはクラスが分かれてからも、私は新聞委員などを率先して引き受け、無理矢理にでも漫画やイラストを描く機会を設けていた。元が雑で自堕落で不器用なので、当然良いものが描けるはずはないのだが、心ない人間からの揶揄を受けながらも創作活動を止めようとはしなかった。
 だが、TM Networkをきっかけにポップ・ミュージックと出逢った事で、全ては変わってしまう事になる。既にこの時点で本家の藤子不二雄先生もコンビを解消して数年が経過しており、それぞれの道を歩み始めた頃。我々も、特に何かを話し合ったわけではないが、互いの道が分かたれる時が来ていた。少しずつではあるが、年齢を重ね現実と向き合い始めていたのだ。

 

 今回の訃報を知った時、すぐにツイートしようかとも思ったが、何となくそれも憚られる気分であり、特に何も触れなかった。

www.excite.co.jp

 安孫子先生も藤本先生も、活動をくまなく追ったわけではない。その後ろめたさもあったのは事実。それでも自分にとってはあまりにも大きな影響を与えてくれた存在で、その重大さをツイートだけで表現する自信がなかった。感傷的なツイートでTLを汚すのも気が引けたので、こうしてブログに想いを記す事が出来て本当に良かったと思う。

 もう数年前の話だが、“トキワ荘通り協働プロジェクト“”(現在稼働中の“トキワ荘プロジェクト”ではない)の現場を前述の友人と何度か訪れた。

www.toshima-mirai.jp

 この時お邪魔したのは“豊島区トキワ荘通りお休み処”という施設で、2020年にオープンして話題になった“豊島区立トキワ荘マンガミュージアム”はまだ存在していなかった事を付記しておく(当時も現地の方から建設計画のお話は伺った)。

 閑話休題。現在でも漫画ファンである元相棒は、館員の方に興奮気味に思いの丈をまくしたてていたが、私も含めて話題に上がったのは「最近A先生がメディアに登場する機会が少なく、体調が心配だ」という事だった。
 ウイルス禍をきっかけに彼ともすっかり疎遠になってしまったが、いつかこの事をじっくり話し合いたい。かつてコンビを組んでいた者同士、1度くらいそういう機会があっても罰は当たるまい。

 

 安孫子素雄先生、素晴らしい作品を残して下さり、本当にありがとうございました。昭和末期の田舎に蔓延る理不尽なマッチョイズムと日々格闘していた私のような小学生にとって、先生の描かれた作品がどれほど救いとなってくれたか。少なからず毒を注入して下さった事も、自分にとって計り知れない程の大きな影響を与えています。改めて、深く深く感謝致します。合掌。