(Revenge of the) United Minds

Talkin' 'bout Music, Football(JEF United Chiba) and More.

性懲りもなく新シリーズを? 全作振り返りせにゃ

 外出自粛期間中、偶然見つけたSWブログをよく読んでいた。執筆者は驚くほど若年で、その上恐ろしく博識な事にショックすら受けたが、SW谷間の世代たる私とも作品感は概ね一致していた。
 そこでSW映像作品をランク付けする記事があり、思わずかつての相棒・ジョニー馬論が遥か昔に書いた記事を連想した。

blog.goo.ne.jp

 思えば、私はこのような形で作品を振り返った事がない。良い機会だと思い、2人に倣ってみる事にした。

 

Episode 3: Revenge of the Sith
Episode 4: A New Hope
Episode 5: Empire Strikes Back
Episode 2: Attack of the Clones
Episode 6: Return of the Jedi
Episode 1: The Phantom Menace
Clone Wars (TV Series)
Rogue One
Clone Wars (Movie)
Rebels
Solo

 

 上記リンクの記事を読み返して改めて思ったが、私も馬論もやはりプリクエル世代なのだなと実感した。SWとは単純明快・勧善懲悪のスペースオペラである! という価値観だけに縛られず(シークエルはこれに囚われたままだった)、若きアナキン・スカイウォーカーの転落劇の背景にある政治の腐敗、硬直化した組織、フォースの神秘などをトリロジーと全く同じ目線で楽しむ事が出来た。これは恵まれていたと思う。

 

EP3: 常にこの位置。公開時は批判的な評も散見されたが、シークエルの体たらくで逆に現在では評価が上がっているのは面白い。

filmaga.filmarks.com

 アナキンの喪失への恐怖による転落、ここから続いていくオビワンの後悔と苦悩、そして残された“新たなる希望”…ダークなストーリーが演出する悲劇と、微かに差し込む一筋の光。誰もが結末を知っている中、極上の作品を創り上げたルーカスに改めて感謝。

 

EP4: 1本の映画として完結している強みがある。夢中になってビデオテープが切れるまで繰り返し観たあの少年の日の興奮は、未だ衰える事はない。永遠の冒険活劇。

 

EP5: 最高傑作の呼び声が高いが、当初は自分の中でそこまで楽しい作品ではなかった。だがホス撤退戦の緊迫感、示唆に富んだヨーダとの邂逅(実は再会なのだが)、あえてBGMを無くして重厚さと恐怖感を演出したルークとヴェイダーの対決など、名場面だらけで一切無駄がない。評価を上げざるを得なかった。映画史に残る告白を、一切のネタバレなしで視る事が出来たのは、本当に幸運だったのだろう。

 

EP2: 馬論やかつての友人の評を聞き、近年重要性が増した作品。

micalaud.hatenablog.com

『Clone Wars』によって評価が上がったと言ってもいい。オビワンとアナキンが銀河にその名を轟かせる活躍の数々は、まさにこのエピソードから始まった。

 

EP6: プリクエル公開までは一番好きな作品だった。今でも嫌いというわけではない。他の評価が上がったために下がっただけ。皇帝を前にしたルークが、毅然と自身が何者であるか、そして父が何者であったかを宣言するシーンは、シリーズ中で最高の名場面。

 

EP1: 台詞を覚えるくらい繰り返しDVDを観てしまったので、若干飽きてしまっただけ。全く駄作とは思っていない。後から振り返れば、重要な布石を幾つも打っている事がわかる。私にとって初のリアルタイムSWであり、思い入れは深い。

 

Clone Wars (TV Series): SW作品史上、初めて本格的な長期戦争を描いたスピンオフ・アニメ。スピンオフとはいえルーカスも関わっているので、ジェダイ騎士団の迷走ぶり、クローン達の勇猛さと悲哀、ダース・シディアスの恐るべき政治手腕、アナキンの葛藤と苦悩などプリクエルに深みを加える役割を完璧に果たしている。

 

Rogue One: 映画としては明らかに前半部分が抑えすぎの間があるが、終盤のスカリフ上空での艦隊戦、シタデルタワー周辺でのローグワン部隊の決死のデススター設計図奪取作戦は圧巻の一言。かつてからの疑問点の一つであった「デススターのメインリアクター破壊による連鎖反応」に、最適な答えを用意すると共に重い意味を持たせた作劇は見事。ディズニー制作の実写映画としては最高傑作。

 

Clone Wars (Movie): 公開当時、評論家から軒並み低い評価を受けていたが、そこまで酷い作品だろうか? 私は劇場で大いに楽しんだし、『Clone Wars』全編が公開された今なら受ける印象も違うのではないだろうか。重要人物、アソーカ初登場はこの作品。

 

Rebels: ディズニーとSW、双方の世界観の見事な折衷。最終シーズンであまりにファンタジックな展開が増えたのは気になるが、プリクエル軽視の実写映画と歩みを揃える事なく、プリクエルにもトリロジーにも深いリスペクトを感じさせる素晴らしい内容だった。

 

Solo: 帝国と反乱軍、フォースやスカイウォーカーの系譜など重い歴史から離れた、痛快なスピンオフらしいスピンオフ。作品としては好きなのだが、SWの歴史という観点から見るとプライオリティを下げざるを得なかった。

 

 いつまで続くかディズニーのSW実写映画、内容は未定ながら次作の監督は決定したとの事。

theriver.jp

 『The Old Republic』の世界観を描くらしい、いやそうではない、などと情報は錯綜している模様。

jp.ign.com

 ともかく以前も書いた通り、ディズニー以後のSWは「いいものもある、悪いものもある」スタンスで対峙していく。

 

 余談として、このようなコミックを遅ればせながら購入。

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 いずれ簡単な感想を記したいと思う。

Gift to Fanks T

 未発表曲「グリニッジの光を離れて」のために購入した『Gift from Fanks T』。特別にリマスターは売り文句にはされていないのですが、間違いなく現代のリスニング環境に合わせてトリートメントされているはず。

Gift from Fanks T(特典なし)

Gift from Fanks T(特典なし)

  • アーティスト:TM NETWORK
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 

 今まで所属レーベルであったエピック(ソニー)との関係から、公認・非公認問わず数多のベスト盤リリースを余儀なくされてきたTM。以前も書いた通り意義があったのは活動中に発表した『Gift for Fanks』のみだと思っています(もう少し基準を甘くすればTKブーム中の『Time Capsule』も加えて良い)。よって私はほとんどこの手のアルバムにはタッチしませんでしたが、今回は以下の理由から購入に踏み切りました。
①30周年活動以後、初のリリース全曲「Get Wild」のコンピレーションを除く)
②幻の楽曲「グリニッジの光を離れて」収録
③リマスター効果への期待
 ②が一番大きな動機ではありますが、③もそれと同じくらい自分の中では高いプライオリティでした。私がTMを再び追い始めたのは①の30周年活動後なので、これだけ機が熟せば買うというのは道理だと認識したのです。

 果たして今回のベスト盤で久々に正面から向き合ったTM第1期(1994年の“終了”までの活動)の楽曲達は、「新たな出逢い」と言っても過言ではないくらいの新鮮な輝きに満ちていたのです。これほどまでに印象が変わるとは、驚きを禁じ得ません。

 

 勿論、私の個人的な事情は大きく影響しています。中学生時代に買ったCDが自分の中での基準であり、恐らく初CD化でリマスターなどとは無縁だった時代の音を聴き続けていたのです。加えて、彼らの活動終了後は新たな音楽との出逢いの連続であり、真面目に聴き直す機会は殆どありませんでした。
 この期間、TMに興味を失ったというわけでは、断じてありません。ただあまりにも一時期の生活と密着していたために、その当時の(良き)記憶と密接にリンクしてしまい、気軽に聴く事が出来なかったのです。そして前述通り、音楽の興味の対象はどんどん広がっていきました。まるで中学時代、TMのリリースを待つあまり他の音楽を殆ど求めなかった日々を取り戻すかのように。

 

 以上のような理由から、音質向上により聴き取りやすくなったというわけではなく、ただ単に私がディテールを忘れていただけの可能性は高いです。だがそれでも今回再発見がいくつかあったので、簡単に書き出してみようと思いました。

 

Rainbow Rainbow
 フレットレス・ベースのソロが聴きやすくなった気がする。そして間奏の後半でもチョッパーが唸りを上げていて、ここもほぼベース・ソロと言っていいと思います。ベースをここまでフィーチャーしているのは、当時のテクノポップの文脈によるものでしょうか。それにしてもイントロのインパクトは凄い。佐野元春も絶賛するわけだ。

 

8月の長い夜
 ギターはソロだけフィンガー・ピッキングだと今更気付く。Cメロのミュートしたアルペジオがポップ。
 この曲、周囲の友人には非常に好評でしたが、当時の私はさして好きなわけではありませんでした。本人達が語る通り、やはりどこか歌謡テイストを感じたせいでしょうか。この時代の、リフが主体となっている小室アレンジを愛していたのだと改めて気付く。

 

Twinkle Night
 この時代のシンセ・ベース音はチョッパーっぽい音ばかりだな。ただ、TMのベース音というとこのイメージが非常に強いです。

 

Electronic Prophet
 TM初期を代表する名曲であり、ここでもフレットレス・ベースが活躍している。ボリューム奏法を駆使して、チェロのような使われ方も。木根氏が「歴代のベーシストはこの曲を演奏したがる」と発言しておられましたが、確かにこのニュアンスを出すのはベース奏者冥利に尽きそう。
 ハーモニーで特徴的な小室ボイスが聴き取りやすい。ソロ・ヴォーカルを執ると「モスキート」と呼ばれる甲高い歌声になる彼の声質ですが、やはりこの3人でのハーモニーなら完璧に溶け込んでいます。これはファンの欲目ではないと思う。

 

Your Song ("D" Mix)
 このベース音もチョッパー系。中学生の初めの頃、カセットテープでこのヴァージョンを聴き、間奏の「歓喜の歌」(ベートーヴェン)の部分で「すげー! このためにオーケストラ呼んだのかな! 小室さん金持ち過ぎる! マジかっけー!!」と「歓喜」した当時の私。だが、今改めて聴いてみればもろにサンプリング丸出しですね。だけど、あの頃の方が今より純粋に音楽を楽しめていたとも思います。これは間違いない。
 クラシック楽曲をアレンジに落とし込む、という試みの萌芽が見られますが、これが後に名曲「Human System」での自然な「トルコ行進曲」との一体化に繋がっていったのでしょう。

 

Girl
 バラード曲でもリフが肝である、と改めて実感する小室楽曲。硬いベース音、シンセリフと絡み合うギターのアルペジオが判別しやすくなった気がする。
 友人達とのカラオケでは、何故か異常に人気の高い曲でした。他のシングル曲ほどはメジャーではない、シンガロングしにくい(皆それぞれが自分の歌に自信を持っていたので)、ファルセットがあってそれなりに難易度が高い、のがその理由でしょうか。

 

Telephone Line
 木根氏のアコギのアタック音が聴きやすくなった。あと、クリーン・トーンのギターも聴こえる。リード・ギターは後のDuran Duranのメンバー、Warren Cuccurulloによるもの。
 言うまでもなくモチーフはELOの同名異曲ですが、自分はそこまでパロディックに思えないのは思い入れ故なのか。パロディという意味では、ライヴでは松本孝弘氏が「Bohemian Rhapsody」のソロをこの曲でそのまま引用しています。

 

Fool on the Planet (Where are You Now)
 原曲は言うまでもなく傑作ですが、埋もれがちなこのリプロダクト・ヴァージョン(シングル「Get Wild '89」収録)が取り上げられたのは嬉しかった。特にギターのアレンジが本当に素晴らしい。

 

Love Train
 売り上げ枚数ではTM最大のヒット曲であるとはいえ、ミリオンには及ばなかった事で小室氏は次の展開を考えるようになったとか。ヒット狙いだというのは何となく当時から感じていて、正直自分は今でもそんなに好きではありません。

 TMNに“リニューアル”してハードな音になったはずなのに、また聴きやすい打ち込みポップスに戻ってしまったのも自分の中での失望が大きかった(シングル両A面の「We Love the Earth」に顕著)。だから、友人達が『Expo』を絶賛する中で自分だけが浮いていた事を覚えています。
 BメロではRがディストーション、Lがクリーントーンなのに、サビではこれが左右入れ替わっている。この微妙なギターのチャンネル変化にようやく気付きましたが、何か意図があるのでしょうか。ともかく、いかにこの曲を私がちゃんと聴いていなかったかがわかろうというもの。

 

Detour
 活動終了2年後の1996年、TKブームの只中にリリースされたシングル・ベスト『Time Capsule』に収録された新曲(Takashi Utsunomiya/Tetsuya Komuro/Naoto Kine名義)。リード・ヴォーカルと同じくらいの音量でミックスされた小室氏のねちっこいハーモニーが耳についてあまり好きではなかった上、すぐにこのベストを手放してしまったので久し振りに聴きました。今回、こうした形でまた音源を所有出来るのは喜ばしい事。
 特徴的なシンセ音とスネアロールの印象が強いのですが、よく聴くとアコギがうっすらと入っているのがわかる。まさかこれだけのためにゲスト・ミュージシャンを呼んだとは思いたくないので、木根氏が弾いていると信じたい。彼は素晴らしいリズム・ギタリストだと私は評価しているので。

 

君がいる朝
 再結成後のバラード。重厚なアルバム・ヴァージョンしか聴いておらず、この打ち込みゼロのAORバラードのようなアレンジが嬉しい。デモかと思うくらいシンプルではありますが、木根氏のメロディはこういった編成でも映える。
 それまでThe Beatles (というかMcCartney)やELO, Eric Carmen的な素養を見せていた木根氏ですが、再結成後はAOR風味の名曲を続々と生み出しています。

 

グリニッジの光を離れて
 問題の発掘曲。タイトルからして壮大で幻想的なバラードをイメージしていたのですが(「Electronic Prophet」のような)、まさかのあっけらかんとした明るいミディアム・ナンバー。キィが高く、それが理由で没になったのだと聞きます。
 アコギのカッティングからのスタート、スティールパンや木琴をフィーチャーしたカリプソ風味のアレンジ、「アヒルの池」「リトルリーグの少年」という生活感ある歌詞…と異例尽くし。これがリリースされていれば、1stアルバムもエレポップ一辺倒のイメージから変わっていたかもしれません。「元ネタがわかりやすい時代のTM」の楽曲として貴重。
 個人的には、ネオアコというかScritti PolittiPrefab Sproutの香りを感じました。当時のUK New Waveとの地続き感が、何やら嬉しくもあります。勿論好きな曲の一つに加わりました。

平成五年のフットボール

 日本サッカーだけでなく、日本プロスポーツ界においても一大エポックであった1993年のJリーグ開幕。

www.jleague.jp

www.goal.com

 その開幕戦がYouTubeJリーグ公式チャンネルにてライヴ公開されるとの事。広島と市原の試合には、MC役の原博美副理事長の他、リトバルスキー江尻篤彦下川健一高木琢也片野坂知宏といった当時の選手達がリモート出演するという触れ込みであった。負けた試合を視直すのもどうかと思ったが、せっかくの機会なので楽しむ事にしたのである。

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 当時の若きプレーヤー達も、現在では日本サッカー界を導いていく立場へと役割を変えた。下川以外は全員Jクラブの監督経験があり(勿論MCのヒロミも含む)、特に高木と片野坂は目覚ましい結果を残している。更なるステップアップが期待されている、期待の監督達だ。

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 我が市原側のゲストには、この2人ほどのインパクトを残している指導者がいないのは寂しいところではあるが、途中から急遽加わった佐藤勇人含め、今後に期待したい。

 

 先程、「負けた試合」と書いた。当然ながらリアルタイムで勝敗は知っていたが、試合自体は今の今まで一度も視た事がなかったのだ。風間八宏に開始早々に決められたゴール、後半に入ってようやく決まったパベルの同点弾…これらも文面だけで得た知識でしか脳内にはインプットされておらず、今回ようやく映像を伴って認識されるようになった。試合結果自体はどうあれ、得難い経験である事は間違いない。 

 サッカー選手に限らず、過去にこだわらない事=格好良い事、という風潮は今も昔も確実に存在しており、昔の事象を語りたがらなかったり、思い出そうとしない人は少なくない。だがこの試合、リティことリトバルスキーは多くの出来事をしっかりと記憶しており、それがチームメイトだった江尻・下川のみならず、対戦相手である高木・片野坂のトークを引き出すきっかけにもなっていた。

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 彼が一流選手だった理由は、こういったところにもあるのではないかと一人納得してしまった。何しろ、私が初めて好きになったサッカー選手は彼であり、そのマジカルで遊び心溢れたプレーに魅了されたからこそ(観戦スポーツとしての)サッカーの魅力に気付かされたのだ。

 

 試合内容自体は、仕方がない事ではあるが現在のレベルとはかなり開きがあると感じた。日本代表の過去の試合を視る機会が多いが、少なくともドーハでの戦いぶりはそれなりに現代に通ずるものはあり、さほど目くじらを立てる気にはならない。だがこの試合に関しては、やはり日本リーグの延長にあると認識せざるを得ないドタバタした展開が散見され、日本サッカーの進歩を逆説的に実感した。そんな中でも守備やボールの奪い方に明確な意図が感じられ、規律が存在していたように見える(高木・片野坂の発言でもそれは裏付けられた)広島の方は良いサッカーをしていた。

 対する我がジェフユナイテッド市原は…敗戦も納得の無秩序サッカーだった。特に前半は酷いもので、広島の寄せを嫌ってかマイボールにすると単純に前に蹴ってしまい、前線でパベルも新村もボールに触れずにみすみす相手に主導権を渡す展開が延々続いていた。中盤でパスもドリブルも出来るリティがいるのに、彼の頭上をボールが飛び越えていってしまっては何の意味もない。折角の世界的名手(Jリーグ開幕時、ワールドカップ優勝経験があった選手は彼一人だけ)も、これではカイバー・クリスタルの入っていないライトセイバーのようなものだ。

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 だが、これもリティ・江尻・下川の当時の述懐によって理由は明かされた。永井監督は基本的に放任サッカーで、良く言えば選手の自主性に任せたプレーをさせていたらしい。ジーコ時代の日本代表のようなものだろう。特にリティは数日前に合流したばかりで、選手間で互いのプレー特性も把握しておらず、それがあのロングボール攻勢(と言えるほど意図を感じるものでもなかったが)に繋がったのだという。

 1993年の2ndステージ開始直前、学研の月刊誌・ストライカーが予想したのは、ディフェンシブハーフ(まだボランチという役割は存在しなかった)を置かず、サイドの江尻と越後が交互に中盤の底に入るというギャンブルそのもののシステムだった。最近その事を思い出し、「まさかそんなハイリスク・ローリターンなフォーメーションは組まないだろう」と思っていたが、今回の永井監督に関する証言を聞いていると実際に行っていたのではないかとも思えてしまう…事実として残されているのは、このステージのジェフは深刻な守備崩壊に見舞われ、一つ下に(当時最弱だった)浦和しかいない9位という悪夢のような最終順位だ。

 

 閑話休題。開幕戦ハーフタイムのロッカールームにて、リティがチームメイトを一喝。それによってジェフは持ち直し、負けはしたものの同点ゴールを生む事が出来たらしい。実際、後半はボールも良く回り、悪くない内容になっていた。相変わらずパスの精度はかなり危なっかしかったが、リティが前線からプレスをかけて一人でパスカットを繰り返す場面があり、改めて彼の能力に驚かされた。華麗な攻撃的プレーにばかり目が行きがちだが、いわゆる”サッカー脳“が段違いだったのだろう。選手としてのスケールの大きさを、27年経って再び思い知らされた。

「この試合は新村とか(中西)永輔とか木澤みたいな若い選手が突然抜擢されて、連携が取れなかった。リティも合流したばかりだったし、よくわからないままサッカーしていた」

「ベテランの後藤さんや越後さんがベンチスタートだったのは大きかった。佐々木さんも次の試合は出場して凄いゴールを決めた」

「前の年にフジタ(現・湘南ベルマーレ)から来た(宮澤)ミシェルさんはDFリーダーだったけど、怪我で離脱している時間がとても長かった」

「高木さん嫌いなんですよ、僕いつもやられるし(下川は高木によく点を取られていたようだ)

「国士館で大学得点王を獲って入ってきた新村は凄いゴールを決めるんだけど (1995年2ndステージにてヴェルディの連勝を止めた背面ヒールループシュートなどその典型だろう) 、簡単なチャンスを外してしまう」

 など、何気なく挟み込まれる選手達の証言も貴重。既に客観的な事実として認識しているものもあるが、当事者が語る事によって大きな重みを持つ。こういった企画は今回だけで終わるのではなく、願わくば別の機会にも行われてほしいと思った。

 

 選手たちのやりたい事がバラバラなまま落としてしまった初戦。この反省は、第2戦のヴェルディ川崎戦にて活かされる事となる。ホーム国立(市原臨海競技場は工事中)で絶対的本命と前評判の高かったスター軍団相手に、リティのロングFKや佐々木のスーパーゴールなどで見事な勝利を収めるのだ。


【ジェフ公式】1993 Jリーグサントリーシリーズ 第2節 vs ヴェルディ川崎

(何故、佐々木のゴールは収録されていないのだろうか…)

 私が本当の意味でジェフを愛し始めたのは、この試合をTVで観戦してからだ。その後連勝街道を進んだジェフは横浜マリノスを5-0で下すなどの快進撃で首位に立ち、魅了された私がサッカー無しの生活に戻る事は最早不可能となった。

 本来なら、サッカーと私の出逢いを改めて振り返る予定だったが、思った以上に配信内容が濃いものであったため、今回はここで留める。

 

 こういった状況だからこそ設けられた機会であり、それを考えると複雑な気分にはなるが、それでも出場していた選手達のコメントを聴きながら試合を視られた事に非常に感謝している。 

 プロスポーツに限らず、エンターテイメント界全てが存亡の危機に瀕している昨今。勿論、私個人としても無縁とはいかない厳しい状況だが、今は耐えるしかない。一日でも早く、フクアリで試合が観られる事を願いながら。

Just to listen, Just to listen

  最近聴いたものの中から、気になったものをピックアップ。

 

Twist Pop Sin

Twist Pop Sin

  • アーティスト:Rubinoos
  • 発売日: 2006/12/18
  • メディア: CD
 

"Twist Pop Sin"  Rubinoos

 日本盤はライブ録音が付いての2枚組という事で、喜び勇んで買ったのですが…ライブはライン録音ですらないオーディエンス録音並の音質で、これはブートなのかと本当に驚きました。結局こっちは全然聴いておりません。多少音が悪い程度なら気にならない程度の私の耳ですが、さすがにこれは一体どんな機材で録音したのか気になる… まだギリギリRoland R-09も発売されていない頃かな? 当時、そっちの制作業者の方から内緒の話を聞いた事を思い出しました。

 アルバム自体はいつものRubinoosといった感じ。最後の「Go Go Go Tokyo」のコーラス構築が良かった。

 

Western Skies

Western Skies

  • アーティスト:Frame, Roddy
  • 発売日: 2006/05/01
  • メディア: CD
 

"Western Skies"  Roddy Frame

 ソロ名義の2nd作。かなりシンプルな編成でじっくり歌とアコースティックギターを聴かせる構成。勿論悪くないのですが、当然ながらバンド・サウンドではないのでパンチもなし。曲は渋くて良いし、Roddy節をピュアに楽しむという意味では悪くないアルバムですが。 

 ただ、Roddy本人のものと思しきサインがジャケットに入っていて、あまりレアぶりに内容の事をどうこう言う気もなくなります。

 前の持ち主は、こんなに気軽に手放してしまって大丈夫なのだろうか…。

 Amazonのレビューによれば、ソロ3rdは更に一歩先に進み、完全に弾き語りアルバムになったようです。 

Surf

Surf

  • アーティスト:Frame, Roddy
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: CD
 

(2017年発売と表記されているので新作かと勘違いした) 

 Aztec Cameraの名声から離れ、どんどん内省的にレイドバックしていったようなRoddyの作品。なるほど、最新オリジナル作『Seven Dials』が往年のファンから熱狂的に迎えられたのも理解出来ようというもの。 

Seven Dials

Seven Dials

  • アーティスト:Frame, Roddy
  • 発売日: 2014/05/06
  • メディア: CD
 

この作品は私も大のお気に入り作品で、勿論今でも聴き続けています。

micalaud.hatenablog.com

 Aztec Cameraも坂本教授プロデュースの『Dreamland』辺りはもう完全にソロ寄り路線なので、この作品がいかにフレッシュで若々しい魅力に溢れていたか、少しは理解出来ているつもりです。渋いRoddyも良いけど、やはり私はこっちの方向が好きですね。

 

Gift from Fanks T(特典なし)

Gift from Fanks T(特典なし)

  • アーティスト:TM NETWORK
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 
Gift from Fanks M(CD3枚組)

Gift from Fanks M(CD3枚組)

  • アーティスト:TM NETWORK
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 

"Gift from Fanks T" "Gift from Fanks M"  TM Network   

 幻の未発表曲が収録された『T』の方だけ買うつもりでしたが、結局両方購入してしまいました。まんまと乗せられたなぁ…いずれ改めて記事にします。

 

"Happy Ending"  大滝詠一

 "最後のソロアルバム”と銘打たれた作品。毎年リリースされる怒涛のナイアガラ商法、一応買いましたが今までのリリースの中では一番内容が薄かった…晩年のリリース曲に、明らかに作りかけのデモと井上鑑ストリングスで何とかアルバムにまとめた感じ。あんまり苦言めいた事を言うつもりはないのですが、さすがに水増し感が強いです。

 シングルヒット「幸せな結末」はヴォーカルとストリングス(新録?)だけのドラマティックなアレンジで「(Album ver.)」とヴァージョン違いをアピールしたかったのでしょうが、悲しいかなヴォーカルの後ろの原曲のバックトラックが全然消えてない…さすがに大滝氏もこれは怒るんじゃないでしょうか。

 レベルが全く違う私事で非常に恐縮ですが、ここ数年で過去の自分達の作品のリマスター&リミックスを行った際、ヴォーカルやコーラスの後ろに余計な音がかなり入っている事に気付き、何とか除去しようと試みましたがどうにもなりませんでした。当時、いかに歌録り環境に無頓着だったか今更ながらに猛省したものです(正確には、自分達のリードヴォーカルだけは気を付けていたのでちゃんと録音出来ているが、コーラスやゲスト・ヴォーカルにしっかり雑音が乗っていた)。

 話を戻して『Happy Ending』の「幸せな結末 (Album .ver)」、完全にそんな感じの音の残り方なんですよね…思わず自分が作業していた時の事を思い出してしまいました。自分の低レベルな録音と重ねる事自体、あまりに失礼な事だというのは重ね重ね承知していますが。

 さすがに、もう蔵の中にも何も残っていないんでしょうね。来年は『A Long Vacation』の40周年記念エディションを発売するようですが、未発表曲をリリースするのもこれが最後かもしれません。

 

ロング・ディスタンス

ロング・ディスタンス

  • アーティスト:アイヴィー
  • 発売日: 2000/11/08
  • メディア: CD
 

"Long Distance"  Ivy 

 本当に久し振りに彼らの作品を購入。調べてみたら2007年にアルバムを一気に3枚入手して以降、それっきりだったらしい。ついこないだみたいな感覚なのに、もう13年前ですか…本当に嫌になりますね。

 取り立てて音楽的にどうのというのはありませんが、とても良い作品でした。やはりこのバンドの作品は安定した心地良さがありますね。正直言って、今まで聴いたIvyの作品の中で一番好きです。日本盤ボーナストラックでThe Blow Monkeys「Digging Your Scene」のウェルメイドなカヴァーを収録しているのも嬉しい。バンドのカラーに非常に合っています。Paris Matchも同曲を取り上げていましたが、やはりお洒落系の女性ヴォーカリストには波長が合うのでしょうか。

 今自分がどの作品を持っているかすらちゃんと把握していませんが、コンプリートしようかなぁ。やっぱり良いものは良いです。

 

Forth

Forth

  • アーティスト:The Verve
  • 発売日: 2008/08/26
  • メディア: CD
 

"Forth"  The Verve  

 (まだ広かった頃の)秋葉原タワレコ、もしくは(今はなき)錦糸町タワレコで試聴したのを覚えています。この時期、ブリットポップ期のバンドがいくつか再結成しており、どれも良作揃いでした。そのタイミングでThe Verveも復活と聞き、当然買うつもりで聴いてみたのですが…率直な感想としては「うーん、どうだろうこの路線は?」というものでした。

 時は経ち、あれから12年。試聴機ではなく自室でしっかり聴けば印象は変わるのではないか? と思い入手したのですが、感じたのはあの時と全く同じ「うーん、どうだろうこの路線は?」というもので、自分の受け取り方には特に変化なし。

 ただし、Amazonレビューを見て合点がいきました。元々彼らはサイケデリックなバンドで、この復活作は原点回帰と言える内容になっているとの事。『A Northern Soul』『Urban Hymns』の2枚で全てをわかった気になっていた私など、ニワカ中のニワカだったという事でしょうね。この方向性はフロントマンRichard Ashcroftというより(彼のソロはメロディ路線だった)、もう一人の中心人物であるギタリストのNick McCabeの意向が強いんだとか。

 尺が長い曲が多くて、自分にはちょっとヘヴィです。聴きこんでいくうちに受け取り方も変わっていくのかもしれませんが、もうしばらく対峙する予定。ちなみに彼らの話題がこの作品以降入ってこないのが気になっていましたが、やはりと言うべきか3回目の解散をしていたようです。Kula ShakerSuedeのように継続しての活動が出来なかったのは残念。

 関係ないですが、Kula Shakerも最新作で遂にラーガ・ロックに原点回帰しましたね。『K 2.0』素晴らしい作品です。

ルール・ザ・ワールド

 1月末にとある方とお会いする際、すでに武漢でのウイルスのニュースを耳にしていた私は現地のキオスクでマスクを購入した。思えば、それが最後に私がマスクを買った日である。その2日後には、既にどの店の棚からもむしり取られたかのようにマスクは姿を消していた。
 事態は日を追うごとに深刻化し、世界は変わってしまった。この後の成り行きを予測出来るような知識を私は持ち合わせていないが、少しでも良い方向に動いていくように祈り、行動するだけである。

 

 勿論、私の生活にも深刻な影響が出ている。不安や不満、日々感じる事はあるが、あまりそれを素直にTwitter等に記すと9年前や昨年のような事が繰り返されると思われるので、極力控えるようにした。私はSNSを揶揄を飛ばし合ったり、論争の場にしようとは思っていない。とはいえ、それでも心情を完全に隠す事は難しいだろう。
 友人から「世界は変わるのかな」とメッセージが来たが、「これを機にポジティブな方向性を見出だせるのか」という意図を言外に読み取った私は「9年前と比べて何も変わっていない」と返した。むしろ、SNSだけ切り取ってみれば更に退化しているように思う。スマートフォンの普及で、更にインターネットが身近になった分、分母が増えているというだけの事なのかもしれないが。

 

 ひとまず、ここまで更新を怠った事でも推測して頂けるかもしれないが、ブログの記事にするような話題がない。9年前は更新するような気分にならず、ほぼ完全に放置してしまったが(その打開のためにPodcast企画を始めた)、今回はそれ以前にネタが見つからないのだ。
 大手を振って外出も出来ないので、史跡を巡って記事にするのも難しい。加えて自室に閉じ籠っているのでひたすら怠惰になり、記事を考えるほどの思考力すら低下している。この騒動、本当に早く収まってくれないと不味い事になりそうだ。

 

 しばらくは聴いた音楽や、思い出話くらいしか出来ないと思われる。外出という当たり前の行為が出来ない日々がやって来るとは、年明けには考えもしなかった事だ。ひとまず、しっかり生きたいと思っている。今出来るのはそれくらいなのだから。

Only a Harrisong

 当ブログ開設(移転)当初に「廉価版CD」という私のオリジナル・ネーミングで紹介した、EMI・キャピトル・アップル以外のレーベルから発売されているアンオフィシャルなThe BeatlesのCDの数々。

micalaud.hatenablog.com

 この危うい立ち位置にあるディスクに関する思い出についてはリンクを参照して頂くとして、似たような商品がリマスター盤やデラック・エディションが発表されてる現在でも流通している事、そしてその中にジョージのヴォーカル曲だけをコンパイルした盤があるらしい事は、Twitterで何度か目にしていました。
 The Beatles時代のジョージの曲だけを集めたアルバム。着眼点は良いですし、意外にありそうでなかった企画です。当然ながら既に音源は全て持っているわけですが、ファンとしては心を大いにくすぐられたのは事実。

 

 目撃談の多くは大型ホームセンターか、大型量販店のどちらか。勿論、タワーレコードHMVでは取り扱わないでしょう。値段を見る限り、高くても500円という投げ売り価格なので。
 残念ながら、現住所近辺にそのような商業施設はありません。実家の周辺地域でも、自動車での移動が必須の場所のみ。なかなかそういった店に縁がなく、たまに訪れてもそれらしいものは一切見つかりませんでした。

 しかし今回思うところあり、通販にて件のCDを入手しました。ブログの記事にも使えるし、一石二鳥なのではないかと思ったのです。

 

 以下、続きから。

 

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Dang Ling

 大河ドラマのみならず、さまざまな歴史作品のロケ地として使用されている匝瑳市飯高寺。名前だけは幼少時から繰り返し聞かされていて身近に感じていたが、タイミングが合わずなかなか訪れる機会はなかった。
 だが先日、現在放映中の『麒麟がくる』にてフィーチャーされている事もあり、ようやく訪れる事が出来た。

 

 以下、続きから。

 

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